■ 先日「歴史の重層性にある街並みの魅力」などと大層なタイトルを付けてしまった。「歴史の重層性」って何?、一体どういう意味? 当然の疑問だ。
秩序のヨーロッパ、混沌のアジア・日本。
ヨーロッパと日本の都市の構造、街並みの特徴の違いは一般的にはこのように対比的に捉えられる。ヨーロッパの街並みは限定されたデザインコードに拠ってのみデザインされた建築のファサードの連なりによって成り立っている。そこにはゆるやかに秩序づけられた美しさが在る。繰り返しの美学の街並み。
一方、この国の街並みは実に混沌としている。隣りあう建築の間にデザインの関連性など全くない場合が多い。この国の街並みで「秩序づけられた美しさ・繰り返しの美学」は歴史的街並み保存地区、そう昔の宿場のような街並みにのみ例外的に存在する。
東京の表参道は有名建築家によってデザインされた建築が街並みを形成しているが、そこには街並みとしての秩序は存在していない。いかに独自性を出すかにデザインの主眼が置かれ、統一感が全くないバラバラな街並みが形成されている。唯一の救いは大きなケヤキの並木だ。
この国の街並みの魅力を考える時はこの混沌とした状態を前提とせざるを得ない。ならば、せめて大正から昭和初期、戦前、そして戦後まもなく建てられた古い建築も共存する、つまり何層かの歴史の重なりが見られるような街並みに、魅力を見出そうという考え方があるのではないか。
このことを「歴史の重層性にある街並みの魅力」と表現した、という次第。
以上、先日のブログのタイトルの説明。
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英語でthe cumulative effectという表現があります。歴史や異なるものが層のように累積されることによって生じる効果を説明するときに使われることがあります。「混沌」や「融合」した文化を紐解くことに興味がある私にとって、この英語表現を日本語でどうやって表現するのかなと常に思っていました。「歴史の重層性」という表現、実に素晴らしいと思います。