10月1日、2日で開催された「第13回地方自治研究全国集会in茨城つくば」で、分科会23「住民の主体性を育む取り組みと住民の声が生きる自治体づくり」へ参加し全国の取り組みから学ぶ機会を得ました。ブログでも、その内容と学んだ中身について報告したいと思います。
基調報告では、あらためて地方自治体とは何かという点について再確認するところから入りました。そこでは次のように記されています。
憲法第92条は「地方公共団体の組織及び運営に関する事項は、地方自治の本旨に基づいて、これを定める」と規定しています。また、地方自治法第1条の2第1項は、「地方公共団体は、住民の福祉の増進を図ることを基本として、地域における行政を自主的かつ総合的に実施する役割を担う」と規定しています。
「地方自治の本旨」とは、そもそも自治体が持っている役割、存在意義というべきもので、住民が主体の行政であって「住民自治」と「団体自治」からなります。「住民自治」とは、地域住民がその福祉の増進のためにその地域を治めていくことで、「団体自治」とは、国とは独立した市区町村や都道府県という期間を作り、住民の福祉の増進のための役割を果たすとされています。
地方自治体の目的は基本的人権を住民の日常生活に実現することであり、住民の福祉の増進を図るために、政府が悪政を推進するときには防波堤となることが期待されています。(「集会冊子」121ページ)
さらに、議会と議員の役割については「地方議会は、首長その他の執行機関に対する監視機能を果たすことはもちろんのこと、住民の多様かつ広範な意見を把握し、議員立法も活用して行政の政策に反映させていくことが求められています。また、議員には住民や住民団体と共同して行動することも求められています」(「集会冊子」122ページ)と記されています。
この分科会には、長野県阿智村の岡庭一雄前村長が助言者として参加されていましたが、実際に自治体の長として取り組んできた経験からは多くを学ぶことができました。岡庭氏が強調されていた一つに、現行の選挙制度では多く見積もって80%の課題について付託されたものとして考える必要があるということがあります。すなわち、残りの20%の問題というのは選挙の際に想定しなかった課題であり、この20%の部分の割合が以前と比較して増えていっているという指摘です。
さらに、神戸大学の二宮厚美教授の「住民相互の利害関係を克服して、共同性を開くためには、口論空間におけるコミュニケーションによる了解、合意の獲得に向かうほかない。住民自治とは、住民相互の口論空間における共同性の確立、合意のことである。…これが自治体等の公共性を導く、ということになるわけである」(『福祉国家型地方自治と公務労働』252ページ)という言葉を引用し、「日常の暮らしの中で漫然と抱いている不満や要望を、基本的人権との関係で住民が運動化し、制度として高めていく取り組みが求められているのである」としています。
さらに、次のように述べている。
人間の本質は、社会的なかかわりなくては生きていけないのであり、社会的なかかわりの中で人間発達が促され、社会的なかかわりによって成長し、主体者としての自信や誇りが醸成されるのであり、客体化する自分を克服していく中で真の幸せ感を獲得できるのである。
そのために必要なことは、住民の学習である。それぞれの過程において現実を分析し、解決の糸口を見つけ、解決の方法を探し、連携する住民と意識を共有化することは学習によって可能になる。自ら学習を組織すること、公的な学習の場を保障すること(学習権)によって学習の機会を作り出すことが欠かせない。
このような考えに立って住民自治を考えた場合、住民自身が主体的に担う自治には、二つの側面がある。住民意思にもとづく民主的な自治体をつくる手段としての自治と、主体的に自治に加わることで、満足感や幸せ感を得ることのできる目的としての自治がある。(「集会冊子」124ページ)
手段としての自治という側面と目的としての自治という側面は、新しい切り口の提起であると感じました。特に、目的としての自治は憲法第13条「幸福追求権」と連なる「権利としての自治の保障」という視点から接近していることは地方自治、地方政治に携わる一人として肝に命じたいと思います。
この分科会を通してテーマとなった言葉が「多様性」です。多様の反対語は画一や単一であり、違いということがキーワードです。多様性を認め合いつつ、合意形成を進めていくことは、多くの困難があります。住民の声が上がるというのは、それだけ多様性があるということに他なりません。「自治」は、自らを治めると書きますが、それは地域の課題を自らが解決していくことに通じます。
分科会では、愛知県小牧市の「ツタヤ図書館」をめぐる住民投票、茨城県つくば市総合運動場の住民投票などの経験について、現地から報告がありました。共通していたのは、直面する課題について住民が声をあげて自治体を動かしてきたという確信とともに、住民の側にも「では、どうすればいいのか」という問いが投げかけられるという点です。そのことを考える上でも、ポイントとなるのは学習であることも共通して語られたと思います。
市民と議会の関係、議会と首長の関係、首長と住民の関係、住民同士の関係──これらについて、現実から出発して問題解決のために、時には対決したり、歩み寄ったりしながら相反する利害を乗り越えることが痛切に求められています。今回の分科会で学んだことを力にして、地方自治法にある「住民の福祉の増進」という仕事に、一意奮闘していく決意です。
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