愛媛の伝承文化

大本敬久。民俗学・日本文化論。災害史・災害伝承。地域と文化、人間と社会。愛媛、四国を出発点に考えています。

はげちゃびん

2009年10月21日 | 口頭伝承
秋は抜け毛の季節。かく言う私も、長年連れ添った頭髪たちが、徐々に別れを告げて去っていく。抜け毛を実感する今日このごろ。嗚呼、20年前が懐かしい。

そんな話を家族としていたら「まだ、はげちゃびんやないけん大丈夫!」と、なぐさめにもならない一言。「まだ」ということは、いずれ私は「はげちゃびん」ということではないか!

そもそも「はげ(禿)」は、「剥げる」が名詞化したもの。調べてみたら中世の辞書である文明本「節用集」に「ハゲ 無髪也」と、バッチリ、簡潔な説明がある。

じゃあ「はげちゃびん」は?というと、漢字で書くと「禿茶瓶」。頭が茶瓶のような形だからという理由だろう。この言葉は、私が幼き頃にやっていたアニメ「ハクション大魔王」の台詞から流行したものだと思っていたら、そうではないようだ。

江戸時代後期に喜田川守貞が著した大百科事典「守貞漫稿」にしっかりと紹介されている。「老父の頭の赤く禿たるを、江戸にてやかんあたま、京坂にては、はげちゃびんなど云り」

つまり「はげちゃびん」は、京都や大阪方面の言い方で、江戸では「やかんあたま」と言っていたようだ。

「やかん」よりは「ちゃびん」と呼ばれる方がまだましなような気はするが、今まだ生きながらえている私の頭髪たちが抜け去っていかないように祈るのみ。ハクション大魔王が実在するならば、この願いをかなえてほしいと思うばかり。

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