愛媛の伝承文化

大本敬久。民俗学・日本文化論。災害史・災害伝承。地域と文化、人間と社会。愛媛、四国を出発点に考えています。

四国霊場43番札所明石寺の梛(なぎ)の木

2011年10月25日 | 自然と文化
今年の夏に和歌山県田辺市に盆行事の調査に行く機会があった。せっかく和歌山に来たのでいろいろと町歩きしてみたいと思ったが、スケジュールの都合で昼間は時間が割けない。というわけで早朝に市内の寺社を歩きまわってみた。

そのお散歩で行ってみたのが闘けい(鶏のつくりが隹)神社。熊野三山(熊野本宮大社、熊野那智大社、熊野速玉大社)が勧請されていて、熊野権現の三山参詣に代替できるという三山の別宮的存在でもある神社。その境内に梛(なぎ)の木があって、案内標識もあった。

「梛は凪(風が止み波が穏やかになること)に通じる事や、なぎ払うと言う意から罪穢、災厄、病魔を祓い、平和と幸運を招来する熊野の御神木として尊ばれてきた。又、葉は容易に切れ難い為、縁結びの信仰や、実は二つ並んで実るので夫婦円満の目出度い樹とされ、他に海上安全など海の信仰もあった。古くは梛の葉を鏡の裏や御守に入れ災難除けにしたが、特に熊野詣の人々は梛の葉を懐に入れ道中安全を祈った。」

以上のように書かれていて、熊野信仰と梛の関連がわかる。

実は、愛媛県西予市宇和町にある四国霊場43番札所明石寺(めいせきじ)に梛の巨木があり、寺の言い伝えでは熊野修験が持ってきて植えたものという話がある。

この明石寺には熊野曼荼羅図が寺宝の中にあったり、寺の隣接地には熊野十二社が祀られた神社があるように、熊野信仰とゆかりの深いところであり、この境内の地蔵堂の前に、樹齢250年とも300年ともいわれる梛の巨木がある。近隣ではこれほどの梛の巨木は珍しいということで、お先達さんに以前、この木について説明したもらったことがあった。

和歌山県田辺市の熊野信仰の拠点である闘けい(鶏のつくりが隹)神社で梛の木があるのを見て、すぐに明石寺の梛を思い浮かべた。熊野からの修験が伝えたという伝承は本当かもしれない。そんなリアリティを感じた夏の朝のお散歩でした。


写真は闘けい(鶏のつくりが隹)神社の梛の木。



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