愛媛の伝承文化

大本敬久。民俗学・日本文化論。災害史・災害伝承。地域と文化、人間と社会。愛媛、四国を出発点に考えています。

国立歴史民俗博物館特集展示「四国遍路・文化遺産へのみちゆき」

2023年12月02日 | 信仰・宗教

千葉県佐倉市にある国立歴史民俗博物館では現在、特集展示「四国遍路・文化遺産へのみちゆき」が開催されています。会期は2月25日まで。愛媛県歴史文化博物館も共催し、四国遍路関係の所蔵資料を出品しています。

四国遍路は、四国4県を周回するルートの中に88ヶ所の霊場が設置された回遊型の巡礼路のことです。その起源は真言宗の宗祖、弘法大師空海に措定され、1200年に渡り人々に信仰され、継承されてきました。もっとも四国遍路の長い歴史のなかでは、その位置づけや人々の関わり方も大きく変化してきました。現代では、世界的に知られるようになった四国遍路を、世界遺産に登録しようとする運動が活発化しています。この展示では、四国遍路の歴史的文化的背景を概観しつつ、近現代における文化資源化の内実に迫っていくものです。

【展示の構成】
この展示では、四国遍路の歴史と現在について、次の構成で紹介しています。

1 四国遍路と弘法大師空海
四国遍路は真言宗の宗祖、弘法大師空海が霊場を定めたと伝えられています。遍路の白衣にも「南無大師遍照金剛」と背中に記され、金剛杖は大師の化身であるとされています。そこで本展示では、まず弘法大師と四国とのつながりを示し、古代から続く大師信仰の系譜をみていきます。

2 遍路絵図と描かれた札所
江戸時代に確立し、庶民の旅の目的として普及していった88ヶ所霊場の特徴を概観します。四国遍路の長い歴史のなかでは、その位置づけや人々の関わり方も大きく変化しています。例えば、88ヶ所を巡るお遍路ですが、これらの札所が定まったのは近世、17世紀に入ってからでした。札所をめぐる巡礼路が絞られていくのも、それ以後のことになります。四国遍路の普及に大きな役割を果たした媒体に注目し、描かれた遍路の姿についても紹介していきます。

3 近代化とツーリズム
近代化のなかで四国遍路は、全国からの集客を見込めるツーリズムへと展開していきます。遍路の代名詞でもある「南無大師遍照金剛」と背中に記された白装束についても、戦後になって普及した姿であることがわかってきました。明治・大正時代に奉納された絵馬や戦前の絵葉書の遍路の一行には、白装束は数えるほどしかみられません。鉄道やバス、自家用車の利用なども盛んになることで、遍路の意味づけや参加者、規模や期間も変化していきました。

4 世界遺産登録に向けて
21世紀になると、四国遍路を世界遺産に登録しようとする運動が活発化します。四国4県は登録に向けて様々な活動を行うとともに、その文化的歴史的な特質を炙り出し、遍路文化を物語化していきました。また、今回の展示共催となる愛媛大学四国遍路・世界の巡礼研究センターと愛媛県歴史文化博物館による最新の研究成果の紹介も行います。

【展示のみどころ】
四国88ヶ所霊場を開いたとされる弘法大師空海とはどんな人物だったのか、弘法大師と四国とのつながりから紐解く
四国遍路の札所はなぜ88ヶ所なのか?-遍路絵図に描かれた、札所や遍路道の姿について紹介する
四国遍路はなぜ白装束?いつから?-近代化による遍路の変化をみる
世界遺産とは?-四国遍路が持つ世界遺産に登録される価値を考える

開催期間 2023年9月26日(火)~ 2024年2月25日(日)
会場 国立歴史民俗博物館 第4展示室 特集展示室
料金 一般600円/大学生250円 高校生以下無料
開館時間 9:30~16:30(最終入館は16:00まで)
休館日 毎週月曜日(月曜日が休日の場合は開館し、翌日休館 )
年末年始(12月27日~1月4日)、2024年2月14日(水)
主催 大学共同利用機関法人 人間文化研究機構 国立歴史民俗博物館
共催 愛媛県歴史文化博物館、愛媛大学 四国遍路・世界の巡礼研究センター

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