古事記 あらすじ7
第4章 八俣(やまた)のおろち
㈠ふしぎな食べ物
下界に追放された須佐乃男命は、折からの長雨に芯まで濡れて、食物をつかさどる大気津比売神(おおげつみめみのかみ)の御殿にたどり着きました。
神は喜んで命(みこと)を迎え入れ、美味しい馳走を次々に運んできました。命は夢中でおあがりになりましたが、神が口から食べ物を出しているのを見て、怒って切ってしまいました。
命は親切してくれた神を、一時の腹立ちまぎれに切ってしまったことを深く反省なさいました。ところが倒れている神の目の所から、稲が生えて米が実りました。不思議に思って見ていると耳からは粟が、鼻からは小豆が、お腹には麦、足には大豆、頭には蚕が生まれました。驚かれた命の後ろで、神が笑いながら立っておいでです。
自分は食べ物の神なので、何度死んでも蘇って食べ物を生むのだと神は仰せになりました。命は試に稲の穂を食べてみると、元の通りの強い体になりました。命は穀物の種をいただいて、旅をお続けになることになりました。
㈡泣いている人々
命が出雲の国の肥川という川の川上に御着きになると、川上から一本の細い枝きれが流れてきました。命は大気津比売神の稲穂を召し上がってからは、もとの姿と力の他に優しい心と知恵を備えるようになっていました。
足元に流れて来た枝きれを見て、命はそれが箸だとすぐに気づきました。こんな寂しい所に人間が住んでいるなんて、命は肥川の川上目指して進んでおいでになりました。
やがて草葺き屋根の家がみえました。しかしようすがなんだか変です。耳を澄ますと女の人の泣き声が聞こえてきました。
家の中ではお爺さんとお婆さんと姫君が、抱き合って泣いています。あまりにも悲しそうなので、命は声をかけられました。
私どもには八人の娘がありましたが、「八俣のおろち」という大蛇に毎年一人ずつ食べられてきました。最後に残ったこの櫛名田比売(くしなだひめ)も、近いうちに食べられてしまうと、お爺さんは涙ながらに言いました。
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