内田英雄文 古事記あらすじ21
第七章天孫降臨
㈣なまこの口
邇邇藝命のおくだりという大きなしごとも一応終わりました。そこで道案内務めた猿田毘古命を伊勢の国に返すことになりました。
邇邇藝命は宇受売命をお呼びになり、猿田毘古の名を最初に聞き出したので、これからはそなたを猿女(さるめ)と呼ぶことにしようと仰せになり、猿女に猿田毘古命を本国まで送って行くようにと命じられました。
今では猿女君(さるめのきみ)と呼ばれるようになった宇受売命が、猿田毘古命をお送りする途中、阿邪訶(あざか)というところに来た時です。海に入った猿田毘古が大きな貝に手を挟まれ、危うく死にそうになりました。
猿女君は海の中の動物に、邇邇藝命にお仕えする気はあるのかと聞きました。魚たちはみんなお仕えしますと答えたのですが、なまこだけが返事をしません。猿女君はなまこをとらえて、この口があまりに小さので、返事が出来ないのであろうと、小刀でなまこ口を切り開いてやりました。
それで今でもなまこの口は、切り裂いたようになっているといいます。
㈥邇邇藝命の結婚
それから数年たち邇邇藝命は立派な青年に成長されました。ある日笠沙の御崎を歩いておいでになると、美しい姫君にお会いになられました。姫はこの国の神で大山積見神(おおやまつみのかみ)の娘で木花佐久夜毘売(このはなさくやびめ)と申しました。
命は早速父親の大山津見神の所に結婚の申し込みのお使いを出しました。大山津見神は喜んでたくさんの贈り物をととのえて、姉君の石長比売(いわながびめ)も一緒に命の元に差し上げました。
ところがこの石長比売は背は低く、色は黒で二目とは見られないような顔をしておいででした。そこで命は姉の方を返しておしまいになりました。
姉の石長比売を差し上げたのは、天の神のみ子が岩のように丈夫で長生きするように。妹の木花佐久夜毘売を差し上げたのは、桜の花が咲き誇るようにお栄になるようにと思って差し上げたのです。 佐久夜毘女だけをおとどめなされたのだから、み子こお命は桜のようにはかなくなるに違いないと、大山津見神は嘆きました。
それから後は神の御子孫である天皇のお命も、普通の人間と同じになってしまわれました。
㈦皇子誕生
数か月後のある日、木花佐久夜毘女は邇邇藝命に「私は子どもを産む時がまいりました。この子は神の子でございますから、皆の者にはっきりと知らせたい」と仰いました。
「確かにあまりに早く生まれるので、変に思う者があるかもしれぬ。天の神の子であることを知らせてやるがよい」と邇邇藝命は仰せられました。
早速窓もない産屋が建てられました。木花佐久夜毘女は自分がこの中に入ったら、戸を閉め切って外から火をつけるように。わたくしの生む子が天の神の子ならば、火の中でも平気です」と言って産屋に入りました。
仰せに従って人々は火をつけました。火の燃え盛るときにお生まれになったのが、
火照命(ほでりのみこと)。火が少し弱くなった時にお生まれになったのが、火遠理命(ひおりのみこと)です。
笠沙の宮はきさきやみ子を加え、次第に賑やかになって行きました。
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