草むしりの「ジャングル=ブック」1
ジャングルの合言葉
「獲物がどっさり」
祖母ちゃんが僕と弟の雄二に言った。
「獲物がどっさり」
僕たちは祖母ちゃんに答えた。
「獲物がどっさり」はジャングルの合言葉だ。
昨日「ジャングル=ブック」どうだった。僕は夜寝る前に祖母ちゃんに読んでもらったんだ。もちろんあらすじじゃないよ。カアとサルたち、あの後どうなったのかな。
祖母ちゃん聞いたら「さあねぇ」って首をかしげていたよ。僕は仕方が無いから、自分でお話の続きを考えていたんだ。
「ああ、僕もモーグリは見たいに動物と話が出来るようになりたいなぁ」
僕の頭の中はもうモーグリのことでいっぱいだった。
「お兄ちゃん。見て、見て」
空想の世界を彷徨っていた僕は、雄二の声で現実に引き戻された。
雄二が小太郎を抱いて、こっちにやってきた。小太郎とは祖母ちゃんの飼っている猫の名前で、普段は祖父ちゃんと祖母ちゃんと一緒に、この家に住んでいる。僕は金曜の夜から雄二と一緒に泊まりに来ているだけなんだ。
小太郎は雄の白猫で、顔なんかソフトボールの球くらいあるし、体も大きければ尻尾だって長い。五歳にしては小柄な雄二が抱えていると言うより、小太郎が雄二にしがみついているって感じだ。
まったくあいつらは仲がいい。雄二が赤ん坊の頃、祖父ちゃんがまだ眼の開かない小太郎を拾って来てからの付き合いだ。赤ちゃん用のミルクと子猫用のミルクを一緒に飲んだ仲で、雄二に何をされても決して小太郎は怒らない。僕が尻尾を間違えてちょっと踏んだら、怒って噛みついたくせに。
「ああ、重かった」
雄二は小太郎を降ろすと、大げさな顔をして言った。それから人指し指をピンと立てて小太郎の鼻先に持って行った。そして真面目くさった顔をして「ニャー」と鳴いた。
するとどうだ、小太郎が雄二の指先に鼻をコッツンさせ「ニャー」と鳴いた。
「獲物がどっさり」雄二はどや顔で呟いた。するとまた小太郎が「ニャー」と鳴いた。
「お前たち話せるのか……」
嘘だろう。よし僕もやってみよう。しかし小太郎じゃなぁ。僕にも兄としてのプライドがある。そこで僕は防火水槽の中にいる、ウシガエルのオタマジャクシで試してみた。
雄二の真似をして、人指し指を立てて頭の中で何度も念じた。
「獲物がどっさり」「獲物がどっさり」
僕は大きく深呼吸するとウシガエルの鳴き声をまねして鳴いてみた。
「モー、モー」
水面に浮かんでいたオタマジャクシは、驚いて水の中にもぐってしまった。
やっぱりダメか。僕は力を落として家に戻って行った。
「なんだこれ」
玄関の前の敷石の上に、何かがピクピクと跳ねている。トカゲの尻尾のようだ。
「尻尾って切れても動くんだ」尻尾の生命力、そんなものに感心してしまった。
「こんなことをするのは……」
やっぱり小太郎だ。どうやらトカゲに逃げられたようだ。ドジな奴だ。
名前を呼ぶとすぐにやって来た。
僕は小太郎の目を見ながら、頭の中で念じた。「獲物がどっさり」「獲物がどっさり」と
そして人差し指を立て、小太郎の鼻先に持って行き「ニャー」と鳴いた。
すると小太郎は僕の人差し指に鼻先をコッツンコして鳴いた。
「カンヅメー」
確かに小太郎が鳴いた。
「分かったよ、祖母ちゃんには内緒だからな」
僕は缶詰の蓋をパカッと開けた。小太郎は美味しろうに缶詰を食べながら、長い尻尾をクネクネと振った。
あっ、お父さんが迎えに来た。祖母ちゃん今度は連休に来るからね。また続き読んでね。
それでは皆さん「獲物がどっさり」
ジャングルの合言葉
「獲物がどっさり」
祖母ちゃんが僕と弟の雄二に言った。
「獲物がどっさり」
僕たちは祖母ちゃんに答えた。
「獲物がどっさり」はジャングルの合言葉だ。
昨日「ジャングル=ブック」どうだった。僕は夜寝る前に祖母ちゃんに読んでもらったんだ。もちろんあらすじじゃないよ。カアとサルたち、あの後どうなったのかな。
祖母ちゃん聞いたら「さあねぇ」って首をかしげていたよ。僕は仕方が無いから、自分でお話の続きを考えていたんだ。
「ああ、僕もモーグリは見たいに動物と話が出来るようになりたいなぁ」
僕の頭の中はもうモーグリのことでいっぱいだった。
「お兄ちゃん。見て、見て」
空想の世界を彷徨っていた僕は、雄二の声で現実に引き戻された。
雄二が小太郎を抱いて、こっちにやってきた。小太郎とは祖母ちゃんの飼っている猫の名前で、普段は祖父ちゃんと祖母ちゃんと一緒に、この家に住んでいる。僕は金曜の夜から雄二と一緒に泊まりに来ているだけなんだ。
小太郎は雄の白猫で、顔なんかソフトボールの球くらいあるし、体も大きければ尻尾だって長い。五歳にしては小柄な雄二が抱えていると言うより、小太郎が雄二にしがみついているって感じだ。
まったくあいつらは仲がいい。雄二が赤ん坊の頃、祖父ちゃんがまだ眼の開かない小太郎を拾って来てからの付き合いだ。赤ちゃん用のミルクと子猫用のミルクを一緒に飲んだ仲で、雄二に何をされても決して小太郎は怒らない。僕が尻尾を間違えてちょっと踏んだら、怒って噛みついたくせに。
「ああ、重かった」
雄二は小太郎を降ろすと、大げさな顔をして言った。それから人指し指をピンと立てて小太郎の鼻先に持って行った。そして真面目くさった顔をして「ニャー」と鳴いた。
するとどうだ、小太郎が雄二の指先に鼻をコッツンさせ「ニャー」と鳴いた。
「獲物がどっさり」雄二はどや顔で呟いた。するとまた小太郎が「ニャー」と鳴いた。
「お前たち話せるのか……」
嘘だろう。よし僕もやってみよう。しかし小太郎じゃなぁ。僕にも兄としてのプライドがある。そこで僕は防火水槽の中にいる、ウシガエルのオタマジャクシで試してみた。
雄二の真似をして、人指し指を立てて頭の中で何度も念じた。
「獲物がどっさり」「獲物がどっさり」
僕は大きく深呼吸するとウシガエルの鳴き声をまねして鳴いてみた。
「モー、モー」
水面に浮かんでいたオタマジャクシは、驚いて水の中にもぐってしまった。
やっぱりダメか。僕は力を落として家に戻って行った。
「なんだこれ」
玄関の前の敷石の上に、何かがピクピクと跳ねている。トカゲの尻尾のようだ。
「尻尾って切れても動くんだ」尻尾の生命力、そんなものに感心してしまった。
「こんなことをするのは……」
やっぱり小太郎だ。どうやらトカゲに逃げられたようだ。ドジな奴だ。
名前を呼ぶとすぐにやって来た。
僕は小太郎の目を見ながら、頭の中で念じた。「獲物がどっさり」「獲物がどっさり」と
そして人差し指を立て、小太郎の鼻先に持って行き「ニャー」と鳴いた。
すると小太郎は僕の人差し指に鼻先をコッツンコして鳴いた。
「カンヅメー」
確かに小太郎が鳴いた。
「分かったよ、祖母ちゃんには内緒だからな」
僕は缶詰の蓋をパカッと開けた。小太郎は美味しろうに缶詰を食べながら、長い尻尾をクネクネと振った。
あっ、お父さんが迎えに来た。祖母ちゃん今度は連休に来るからね。また続き読んでね。
それでは皆さん「獲物がどっさり」
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