内田英雄文 古事記あらすじ12
第五章大国主命
㈤赤いいのしし
稲羽の白うさぎを助けた大穴牟遅命はたいそうお優しい方で、出雲の国の人々や動物までもが、命をお慕いしていました。
これを妬んだ兄さんたちは命をやっつける相談を始めました。ある日のこと命を呼びつけ、手間(てま)の山の「赤いのしし」を退治に行こうと誘いました。命はおかしいと思いましたが、兄さんたちの誘いは断れません。
すると兄さんたちは「赤いいのしし」を生け捕りするように命令しました。もし赤いいのししを逃がすようなことがあれば、ただでは置かないと言いました。そして山のふもとまで来ると、兄さんたちが「赤いいのしし」を追い出すので、出て来たら抱きとめて捕まえるようにいいました。
しばらくして山の上から、「いのししだぁ」という叫び声がして大きな赤いものが激しい勢いで降りてきて、命の方に向かってきます。
命は両手を広げて抱きつきました。ところがそれは、いのししの形をした岩を火で真っ赤に焼いた物でした。命は体中に大やけどを負って倒れておしまいになりました。
㈥大木に挟まれる
大穴牟遅命のお母様は命が帰って来ないのでたいそう心配になりました。先に帰った兄さんたちに聞いても知らないと言います。その様子がおかしいので、手間の山まで行くとの、命が息もたええになって倒れています。
お母様は急いで高天原にのぼって、神産巣日之神(かみむすびのかみ)に赤貝とはまぐりをいただいて帰り、細かく砕いた赤貝の貝殻とはまぐりの出す水を混ぜ合わせ、命の体中に塗りました。すると命はもとのように元気になりました。
命が元気になって帰って来たので、兄さんたちは命に大木の中に入っている「夜行のたま」を取るように言いました。命はなんだか変だともいましたが、断れませんでした。
兄さんたちは割れた大木の両端に縄をかけ、両方から引いて広げた木の裂けめの中に命を入らせ、綱を離しました。命は大木に足を挟まれ気を失ってしまいました。
お母様は帰って来ない命を探し出し、いろいろと手当てして、もとの元気な体にしておやりになりました。
このままではお前は殺されてしまう。もっと強くなるために、須佐乃男命様の所に行って、生太刀(いくたち)と生弓矢(いくゆみや)をいただいて来なければなりませんと仰せられました。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます