ひろひろの生活日記(LIFE Of HIROHIRO)

パソコン講習とソフト開発をしています。自作小説も掲載しています。ネット情報発信基地(上野博隆)Hirotaka Ueno

第Ⅱ章。「現れし古に伝わりし指輪」6話、デミュクの住んでいた町。どう答えるの?。「~失望と愛~導かれし悪魔の未都市。」0009

2021年11月09日 20時37分19秒 | 「~失望と愛~導かれし悪魔の未都市。」【R15】(自作小説)

第Ⅱ章。「現れし古に伝わりし指輪」6話、デミュクの住んでいた町。どう答えるの?。「~失望と愛~導かれし悪魔の未都市。」0009


0009_デミュクの住んでいた町。どう答えるの?

デミュクの住んでいた世界は、王政(おうせい)であった。
文明と言っても魔法が支配する世界である。
この時代は現代ではない、電化製品があるわけでもない。
自然に支配されていて木々が生き生きと栄(さか)えている。
地球であって地球でない次元を異にする世界である。

闇(やみ)に輝(かがや)く街がある。
本当は、天空の浮遊都市(ふゆうとし)である。
夜空に光を放ち輝き浮いている。

何故に輝いているか、誰が住んでいるのか?
デミュクも知らない。
王家である王にしか明(あ)かされない秘密がある。
王でなかったデミュクには、明かされていない。
デミュクは、ゆっくり思い浮かべた。

デミュクが住んでいた悪魔の未都市。ミュウデラ。
それは、まだ、街とは呼べない。
深い森の中、山の中腹に城があるだけである。
森の木々の葉は、深い緑に満ちている。
一枚、葉を手に取ってみる。
ひんやりとしたツルツルした感触(かんしょく)が手に伝わり脈(みゃく)を打つように感じる。
瑞々(みずみず)しく命が溢(あふ)れ流れている。
葉には脈が透(す)けて見える。
人のように管(くだ)が通っている。
人間界と同じ植物のようである。
血が通っているのか?
根元から葉先まで毛細(もうさい)に張られた葉脈(はみゃく)。
葉は、栄養を土からもらい養分をつくる。
木々は、育つ。
年老いた葉は落ち、枯れ、また、土にかえり栄養となる。
森は、光が入らないほど木々は、太い幹(みき)に枝を伸(の)ばし葉に覆(おお)われ、枝は、重なり合う。
人が住む世界とは、個別な世界を創(つく)っている。
森に住む動物はと言うと。
僕(しもべ)、眷属(けんぞく)、妖精(ようせい)。
僕(しもべ)は、悪魔のペット、家畜、いや動物と言えるかもしれない。
犬、猫、魔獣(まじゅう)…。
それとは別に屋敷(やしき)に住む者に使魔(しま)がいる。
使魔は、動物と言うより人の形をしている。
魔法も使え主(あるじ)を持つもの。
動物とも妖精とも言えない特別な存在なのである。

森を抜けると、平地が広がる。
耕す畑ではなく木が植えられている。
悪魔は食物を摂(と)らない。
キャベツやレタスなどの野菜、
人の主食となる小麦などを育てることはない。
畑には、味を楽しむ果物(くだもの)、肉の木の果実があるだけである。
作物の養分は、生命のエネルギーである。

悪魔のエネルギーの源は、野菜や小麦を食べることでは補(おぎな)えない。
ただし、畑の果実は例外である。
非契約の人の欲望のエネルギーから果実は実(みの)る。

それと辺境の地に神の実がある。
燃えるように赤い実。炎に形どられている。
それは、世の果て東の裂(さ)けめに実っている。
特別な果実である。
王や貴族の生命のエネルギーは、悪魔との契約者のエネルギーから与えられる。
人間界に欲望を生み出すのが悪魔の役目である。

悪魔の国の中央の城には、王と貴族と騎士が住んでいた。
その辺境の街ミュウデラには、デミュクの住む小さな王族の城(住居)がある。
領地内に他に住居を所有している貴族はいない。
自然に囲まれている長閑(のどか)な地域である。
貴族以上の階級だけが人間の世界に入れる。
人間界に通じる隠された場所があるである。

その他の平民は、貴族によって養われていて、
通常、領地には食堂が設けられていて食堂で飲食をする。

デミュクの領地も食堂があり平民が飲食する。
平民は、通常、貴族の手伝いをする。

悪魔と言っても自然から生み出されたものである。
自然の摂理(せつり)がある。
それからは逃(のが)れられない。
たまに摂理から外れた者があらわれる。
その者は、神に罰せられ暗黒の牢獄(ろうごく)に幽閉(ゆうへい)される。
悪魔には寿命があるのか?
一つの役割を果たした者は昇冠(しょうかん)され、
天空に浮かぶ光の都市に生まれ変わると言う。
そんな噂(うわさ)を聞いたことがある。
空には、光輝く天空の街が浮かんでいた。

デミュクの脳にいろんな懐(なつ)かしい思いが浮かんだ。
デミュクは、出来るだけ本当のことを言うことにした。
嘘(うそ)がばれないようにする秘策(ひさく)である。
本当に近いほど嘘はばれない。

そして、やっと口をついて言葉が出た。
言葉は、この国の言葉と同じと言う訳(わけ)ではない。
悪魔の話す言語は、自然に通訳されて相手に伝わる。
心の言葉の通訳と言うべきか。
デミュクは、話す。

「私の育った土地は、ここから海を渡り北に位置します。
 ミュウデラと言います。
 異国の地です。
 自然に恵まれていて、
 森の木々がが生き生きと覆(おお)い。
 いろいろな作物を作っています。
 気候は、ここと同じ感じです」
(『いろいろ』は言い過ぎだよね)
「いろんなものが、ほぉー」
お爺さんは、興味津々(きょうみしんしん)である。
「私は、貴族として生まれました。
 私の育った地には王の城が一つあります。
 そして、遠く離れた地に光輝く街があります。
 夜でも光輝いています。
 ここには、農産物を売るべく、
 商談をするために来ました。
 皆さんが今夜、お食べになった肉に掛(か)かっている香辛料(こうしんりょう)を売るためです」
(胡椒(こしょう)をとっさに出したが、香辛料なら運んでこれるかな?
 もっと、自然のこと、森林を説明した方がよいか?)
「あれかい。ウサギの肉にかけた」
お爺さんは、身を乗り出した。
デミュクは、少し考えたが話を続ける。
「商談しに海を渡り来たのですが、
 農地を視察(しさつ)する途中で山賊(さんぞく)に襲(おそ)われてしまいました」
(もう、本題に入ってしまった)
「明日、街に行きたいのですが」
(細かいことは話せない)
デミュクは、話を終えてしまった。
「街に何かの用ですか?」
イリスは、不安げに尋ねた。
イリスは、デミュクがもうどこかに行ってしまうように感じた。
(話をするしかないな)デミュクは観念(かんねん)した。
「少し連絡をとりに、
 それと街の商いの様子と、
 領主に会いに行ってきます。
 用事(ようじ)が済(す)み次第(しだい)帰ってきます」
いろいろと故郷のことを思い浮かべたが話は数行で終わる。
(お爺さんの意図(いと)したことに答えられたのだろうか)
「イリスさん。お爺さん。
 明日は、街に行ってきます。
 農作業は、手伝えません。
 どうかお許しください」
デミュクの話は、本当に終わった。

「いいですのよ。
 今日は、手伝っていただき大変助かりました」
イリスは、返事した。
(デミュクさんが、お戻(もど)りに成られるのならそれで良いの)
「また、明日、話しておくれ」
お爺さんは、デミュクの話がもっと聞きたくなった。
デミュクは、嘘をつくのが少し辛(つら)くなった。


つづく。 次回(街、領主、商談?領主は、偉い人なの?)

#自作小説 #失望 #愛 #導かれし悪魔の未都市 #デミュク #導かれし未都市 #イリス

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第Ⅱ章。「現れし古に伝わりし指輪」5話、悪魔が農園の手伝い。土作業?。「~失望と愛~導かれし悪魔の未都市。」0008

2021年06月22日 14時28分47秒 | 「~失望と愛~導かれし悪魔の未都市。」【R15】(自作小説)

第Ⅱ章。「現れし古に伝わりし指輪」5話、悪魔が農園の手伝い。土作業?。「~失望と愛~導かれし悪魔の未都市。」0008


0008_悪魔が農園の手伝い。土作業?

翌朝になる。
イリスは、早く起きて朝食のポテト、スープを作った。
昼の弁当に蒸芋(むしいも)を作る。
お爺さんは、イリスが朝食を作る間に起きだし、
朝ご飯が出来ると、ポテトとスープを食べ、
何かを気にしてバツが悪いのか、
蒸芋を持って直ぐに農作業に出かけた。

イリスは、お爺さんを送り出すと、
前に傷負い天使が食べた赤い皮の果物(くだもの)を森に取りに行った。
そして、森から帰って来て恐る恐る納屋を覗(のぞ)き込む。

デミュクが起きて座っている。こっちを見ている。
傷は、癒(い)えたのだろうか?
傷に当てた布をほどいてたたんで傍(かたわ)らに置いている。
完全に治癒(ちゆ)したのだろう。

イリスは、神妙(しんみょう)な気持ちで納屋に入りデミュクの向かいに座った。
「天使さん。
 私は、この畑で農作業をしているイリスです。
 お爺様(おじいさま)と2人で暮らしています。
 傷は、もう治りましたか?」
イリスは、初めて名前を名乗った。
「イリス。あなたが、ずっと、
 世話をしてくれたのですね。
 ありがとう。
 お礼を言います。
 私は、デミュクと言います」
デミュクも、初めて正式に挨拶した。
もう2人は、結ばれていたのに順番としては逆である。
「デミュクさん。果物(くだもの)を食べますか?」
イリスは、名前を教えてもらって嬉しかった。
一夜の夢で終わるのではないかと思っていたからである。

「いただきます。
 あ!くどいようでなんですが、
 私は、天使ではありません」
デミュクは、一応、否定したが、納得するとは、思ってもいない。
イリスは、もう誰が何を言おうがデミュクは天使なのである。
「いいの。いいの」
イリスは、果物を差し出した。
デミュクは、嬉(うれ)しそうに食べる。
そして、一息つくと話し始める。
「世話になりました。
 迷惑を掛けられません。
 体が回復した以上、
 ここに置いていただくわけにはいきません。
 何も出来ませんでしたが、
 ここを出ていきます。
 お爺様に、私のことを話しましたか?
 私のことを内緒のままには出来ないでしょう」
デミュクは、悪魔の追手も来るかもしれないし、
長くは、お世話になることは出来ないと思っていた。
「だめ。だめ。だめ。
 当てもないのに、どこに行こうと言うのです。
 絶対。だめです。
 私にいい考えが有ります。
 お爺様を納得させて見せます」
イリスは、どうしてもお世話をする気でいるし、
助けてほしいこともあるのである。
(一夜限りの契(ちぎ)りですか?)
イリスは、喉(のど)をついて言葉が出かけたがそれを飲み込んだ。
「それは、どう言う考えですか?」
デミュクは、その考えを聞くことにした。
「あなたを遠くの国から来た旅人という事にします。
 夜盗(やとう)に襲われ身ぐるみをはがされ、
 やっとのことに難をのがれ、
 偶然この村にたどり着いた。
 そこを私と出会い、
 一夜の宿を求めて来た。
 こんなストーリーは、だめですか?」
イリスは、説明する。
「その話でうまくいきますか?」
デミュクは、それだけでは到底(とうてい)上手くいくとは思えなかった。
「既成(きせい)事実を作るのです」
(え!昨日のことは、それですか?)読者の声です。
(違いますよ。そのことは、2人とも何も気にしていない。
 それで束縛(そくばく)しようという考えは有りませんよ。
 束縛する為ならそう言うことはやめた方が良い)筆者の声です。
イリスは、デミュクに農作業をさせることにした。
鍬(くわ)を持たせ畑を耕(たがや)してもらう。
デミュクは、上着を脱(ぬ)ぎ、ランニングシャツにズボン、革(かわ)の靴(くつ)。
一見してわかる農作業するための有り合わせの姿である。
デミュクは、不慣れであるが農作業を手伝うことを了承(りょうしょう)した。
はじめは、不器用そうにみえたが、意外と様になっている。
(悪魔か?普通に暮らすのもいいかっもな)
デミュクは、鍬で土を耕し続けた。
でも、明日のことが脳裏に浮かぶ。
(このまま、農作業してイリスと暮らすわけにはいかない。
 それは、余りにも幸せな夢である)

そして、日が暮れ始めた。
夕方になる。

お爺さんが帰ってきた。
イリスは、家から飛び出してくる。

デミュクは、鍬を持ったまま、
イリスと一緒にお爺さんを迎(むか)える。
「お帰りなさい。
 お爺様(じいさま)」
デミュクもお辞儀(おじぎ)をする。
お爺さんは、デミュクに気づいた。
(この男なのか?隠していたものは)
お爺さんは、娘を守らないといけないとか、
彼が何者か知りたいとか、
いろいろな感情が湧くが、
とにかく、まず尋(たず)ねることにした。
「イリス。そのお方は、誰ですか?」

「デミュクさんと言います」
イリスは、答えた。
そして、予定通りの説明をした。
お爺さんは、穏やかにその説明を聞いていた。
身なりから見てデミュクが、悪い人でないようなので安心したようである。
「町で仕事が見つかるまで、
 数日、ここに置いてもらえませんか?」
 納屋で良いので、おいていただけると幸いです」
デミュクは、丁寧にお願いした。
「そうですか。何もお構いできませんが、
 ここで良ければ、お泊りください」
お爺さんは、拒否(きょひ)しても、イリスが聴くわけもないので、許すしかないという結論に至(いた)った。
そう、こうと思えば引かない子である。
デミュクは、農民と言うより貴族に見えた。
お爺さんは、何かの縁(えん)を感じた。
(本当に、この娘を守ってくれるかもしれない)
そう感じたのである。
「イリスは、それで良いのか?」
お爺さんは、イリスにも再度確認した。
「はい。お爺様」
イリスは、嬉(うれ)しそうである。
「少しお待ちください。
 お礼と言っては何ですが、
 犬をお借りできますか?
 2人は家でお待ちください」
デミュクは、何か考えがあるようである。
「どうぞ。ブロクです」
イリスは、犬を連れて来た。
少し何をするのか不思議がった。
お爺さんは、家に入っていく。
イリスは、興味深くデミュクを見ている。
デミュクは、犬を連れて森に入っていった。
そして、暫(しばら)くして、
デミュクが帰ってくる。
右手に何かを持っている。
後ろをブロクが吠(ほ)えながらついてくる。
「ウサギ!」
イリスは、喜んだ。
デミュクがどうやって捕(つか)まえたのか?
魔力か?半分はそうだろう。
実際は、そんな大したものではないが、
犬にウサギを探させ、草むらから追い出させた。
デミュクと目が合えば、ウサギはもう動けなくなった。
後は、捕(つか)まえ、首に噛(か)みつき血を抜いた。
血を吸い当分の間の栄養を補給したのである。
肉はと言うとデミュクは、食べない。
「私が、調理します」
デミュクは、農家では肉など食べていないだろうと思い自ら料理してあげようとした。
「ほんとうでございますか?」
イリスは、急に前よりまして言葉使いが丁寧(ていねい)になる。
「負(ま)かしてください」
デミュクは、難なく皮を剥(は)ぎ内臓を取り出し調理して見せた。
竃(かまど)で焼く。
焼き上がると切り分けた。
残りの食事の支度(したく)は、既(すで)に出来ていた。
出来ていたと言ってもポテトと人参(にんじん)のスープである。
イリスは、楽しそうに食卓に運んだ。
お爺さんは、食卓に見慣れないものがあるので大喜びである。
「それは、ウサギの肉ですか?」
「そうです」
デミュクも喜びが伝わっったのか嬉しそうである。
「デミュクさんが、調理したのかい?」
お爺さんは、念を押して尋(たず)ねる。
「はい」
3人は、食卓に着く。
デミュクは、他人とは一緒に食事しない風習であると断(ことわ)る。
無理には言えずにお爺さんは、その風習を受け入れた。
2人は礼拝する。
デミュクは、食べないので食事の用意はない。
そして、お爺さんは、ウサギの肉を一口食べて、また感激した。
「本当に美味しい。
 何か味に刺激がある。
 何か入ってるのですか?」
「胡椒(こしょう)の実です」
デミュクは、スパイスを入れたのである。
貴族ならではなのかもしれない。
(どうやって、胡椒の実を取ってきたの?)読者の声です。
(想像にお任(おまか)せします。今は、内緒に)筆者の声です。

お爺さんとデミュクは、すっかり仲良くなっていく。
そして、お爺さんは、デミュクに尋ねる。
「デミュクさんの住んでいた町はどこですか?」
イリスの顔が一瞬、曇(くもる)が直ぐ目が輝きだす。
(そんなことを突然(とつぜん)尋ねるのですか?
 でも、私も興味ある)

つづく。 次回(デミュクの住んでいた町。どう答えるの?)


#自作小説 #失望 #愛 #導かれし悪魔の未都市 #デミュク #導かれし未都市 #イリス

 

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イラスト(イリスとデミュク)

2021年06月14日 09時00分37秒 | 「~失望と愛~導かれし悪魔の未都市。」【R15】(自作小説)

農作業するイリス

イリスの胸の中心に唇を寄せるデミュク

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第Ⅱ章。「現れし古に伝わりし指輪」4話、愛とは誘惑か?。「~失望と愛~導かれし悪魔の未都市。」0007

2021年06月13日 13時58分52秒 | 「~失望と愛~導かれし悪魔の未都市。」【R15】(自作小説)

第Ⅱ章。「現れし古に伝わりし指輪」4話、愛とは誘惑か?。「~失望と愛~導かれし悪魔の未都市。」0007

0007_愛とは誘惑か?

指先に硬い石らしきものを感じる。
(うぅ。これは、どういうことだ?)
イリスは、その手を掴(つか)んだ。
「これを感じるのか?」
デミュクは、イリスの胸の宝石を押える。
(なにも感じないわ)
イリスは、思ったが、言うのをためらった。
「脱いでくれないか?」
デミュクは、無心に頼んだ。
「え。脱ぐのですか?」
イリスは、男性の前で脱ぐのは、初めてのことである。
躊躇(ためら)いがある。
「確かめたい」
デミュクは、もう一度、丁寧(ていねい)に言った。
イリスは、膝をたてて上のシャツの裾(すそ)をもって肩まで上げ、
そして、頭を通して両手を伸ばしてシャツを脱いだ。
シャツをたたみ横に置き、デミュクの前に座った。
褐色(かっしょく)の胸が露(あら)わに現れている。
しかし、デミュクの目は、胸の中心に注がれている。
デミュクは、顔をイリスの胸に近づけた。
目の前に確かに白黄色(はくこうしょく)の小指の頭くらいの宝石が輝いている。
デミュクは、そっと宝石に口づける。
(うぅ)
イリスになにかが働(はたら)く。
(それは、誘惑か?ただの欲望か?)
(それとも、服従か?)
心に声が聞こえる。
デミュクは、声をかき消すように答える。
(誘惑だ!)
(誘惑も罪と知れ)
声は、かき消された。
それは、イリスにも聞こえていたかは、分からない。

デミュクは、イリスの唇(くちびる)に軽くキスをする。
触れる程度である。
そして、喉(のど)。もう一度胸の宝石。
お臍(へそ)の上。下。
そっとズボンを脱がそうとする。
なかなかうまくいかない。
イリスは、どうしようか迷ったが、
自分で手助けして、ズボンを脱いだ。
「下も脱ぐのですか?」
デミュクは、頷(うなず)く。
イリスは、下の白の厚手のパンツも脱いだ。
デミュクは、既に怪我の治療で上のシャツを脱いでいる。
下の灰色のズボンも脱ぐ。
そのまた下の縞柄(しまがら)のパンツも脱いだ。

お臍(へそ)の下にもう一度キスする。
イリスは、下の毛髪(アンダーヘヤー)を整えていた。
それは『やりまん』と言うわけではない。
(それで、嫌いになるわけではないが、整えてほしい)筆者の声です。

下の毛髪(もうはつ)へキス。
そして、股の付け根。
太腿(ふともも)。
膝(ひざ)の横。
右。左。
脛(すね)。
足の指。
小指。
中指。

そして、親指。

それは、彼女に何かを教えているのか?
デミュクの愛し方である。
(私もお返ししたい)
イリスにそう言う衝動(しょうどう)が湧(わ)く。
(それは、足の指?
 きゃ)
イリスは、目を瞑(つぶ)った。
指で触(ふれ)る。
細(ほそ)い、か細(ぼそ)い指、だが土の肌触りがする。
強い気高さを感じる。
デミュクに迷いが浮かぶ。
逆にイリスには、迷いはない。

いつしか、二人は、向かい合い横になっていた。

男性にも心がある。
デミュクの心とイリスの心が繋(つな)がる。

悪魔も所詮(しょせん)、自然の摂理(せつり)の一部である。
天に帰依(きえ)していると言える。
少なくともデミュクは、帰依していた。
自然を犯すことは出来ない。
逆らえないのである。
つまり、無理やりする行為は、出来ないのである。

愛し方は、思春期に養母に教わったのだ。
正しい知識を得ることは、何においても大切である。
摂理(せつり)を知ることも大切である。
デミュクに子供を産むための精子はない。
悪魔にも子供を産むには、産むための儀式がった。
それほど、大切な行為である。

デミュクは、愛し合い確かめ合いたいだけであった。


デミュクは、イリスに無理をさせずに、態度で表した。
そして、交わったのである。

いつしか2人は、終えたのである。
イリスも満足した。

2人は、抱合い眠りにつく、2人とも責任のとれる大人である。
それは、忘れてはいけない。
その後は何もしないが一緒に眠る。
肌と心の温かさが伝わる。
イリスもデミュクも安堵(あんど)の気持ちで一杯になった。

つづく。 次回(悪魔が農園の手伝い。土作業?)

#自作小説 #失望 #愛 #導かれし悪魔の未都市 #デミュク #導かれし未都市 #イリス

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抱合うデミュクとイリス(イラスト)

2021年05月29日 07時09分18秒 | 「~失望と愛~導かれし悪魔の未都市。」【R15】(自作小説)

また、色を塗ります。

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第Ⅱ章。「現れし古に伝わりし指輪」3話、快復の証。「~失望と愛~導かれし悪魔の未都市。」0006

2021年05月28日 20時00分55秒 | 「~失望と愛~導かれし悪魔の未都市。」【R15】(自作小説)

第Ⅱ章。「現れし古に伝わりし指輪」3話、快復の証。「~失望と愛~導かれし悪魔の未都市。」0006

0006_快復(かいふく)の証(あかし)

イリスとデミュクに朝が来る。
(はっとした)
傷負(きずお)い天使は、安らかに寝ていた。
(お爺様(じいさま)が起きる前に)
イリスは、手入れした農具を家の出入り口に置きに行った。
お爺さんは、既に起きていた。
(こんな早く?いや、ずっと納屋に居たのか?)
お爺さんは、心で思ったが顔に出さない。
「おはよう。イリス」
「お爺様。おはようございます」
お爺さんは、起きて昨夜の残りのポテトを食べた。
そして、農具を取って出かけた。
「イリス。行ってくる」
1日目。2人には、何も起こらなかった。
イリスも朝食を取り、農作業をしに畑に出る。
(待った。畑に出る前に一目)
イリスは、納屋を訪(たず)ねる。
「顔色が良いわ」
(お腹(なか)は、空かないの?)
気にはなったが農作業をすることにした。
畑は、近い。直ぐ傍(そば)の場所である。
イリスは、『昼に何(なに)かを食べさせてあげなければ』、
そればっかりが頭に浮かんでは消えていく。
それでも農作業を熱心にした。
(お日様が眩(まぶ)しい)
(お腹が空いたわ)
手をかざし太陽の位置を見る。
(お昼ぅ(ひるぅ)。お昼ぅ)
「天使さんの顔を見る前に」と一こと言うと森に消えた。
イリスが森から出てきた。
擦(す)り傷だらけである。
手に赤い何かを持っている。
果物(くだもの)の実(み)らしい。
キュウイか?むしろアケビに似ている。
納屋に向かう。そっと覗(のぞ)く。
「寝ている」
(水分の多い果物なら食べれるかも?)
納屋に入り傷負い人の横に座る。
森で採ってきた果物を目が覚めたら見える傍(かたわ)らに置く。
一つを自分で食べてみた。
(苦くはないわね。甘い。
 血の味には遠いように思える。
 でも、水分の補給にはなるわね。
 きっと)
デミュクのお腹に巻いているエプロンを取った。
傷跡を見る。
「あら。塞(ふさ)がってきてる。
 さすが神様ね。
 え!天使?
 呼び方は、どうでもいい」
包帯(ほうたい)を白い布切(ぬのき)れに替える。
布を見つけ出したのである。
と言うより、本当は、自分のシーツ端を見えないように切った。
「起きなさい。でもこのまま見ていたい」
イリスは、名残惜(なごりお)しいが農作業に戻ることにした。
暫(しばら)くして、
(何か甘い香りがする)
デミュクは、薄く目を開けた。
赤い皮の果物(くだもの)が見える。
3房(ふさ)ある。
手を伸ばしとる。
2つに割る。
赤と白の果肉と黒い種がある。
汁(しる)が溢(あふ)れ滴(したた)る。
口を近づけ啜(すす)った。
赤い色がデミュクの食欲を妙(みょう)にそそる。
皮を押さえて皮に沿(そ)い口を這(は)わせ実だけを吸い取る。
種がプチプチとした触感(しょっかん)を生む。
デミュクは、果実の甘味(かんみ)と感触(かんしょく)を楽しんだ。
そして、皮を元の果物のあった場所に置き、再び眠りについた。

日が暮れかけてきた。
「あ!もうこんな時間。
 夕食の支度(したく)をしなくてはいけない」
イリスは、家に急いで戻った。
そして、家事用の水を汲(く)みに行く。
今度は、家に戻ると汲んだ水を瓶(かめ)にいれ夕食を準備する。
昨日、用意したものの残りである。
棚にしまったポテトを出す。
蒸しなおす。
(これをまず始末しなきゃ)
スープを温めなおし付け足す。
そうこうしてるとお爺さんが帰ってくる。
「お爺様。お帰りなさい」
急いで出迎(でむか)えに出る。
「今、帰った」
お爺さんは、イリスの顔を見て安心した。
(何も起こらなかったようだ)
「農作業は、どうでした?」
イリスもお爺さんがいつも通りなので安心した。
「雑草が凄(すご)く生えている」
お爺さんの顔は曇(くも)る。
「家の畑もです」
イリスは、手を出して農具を受け取った。
(ひとまず安心)
「手入れもしときます」
「また、お祈りかい?」
お爺さんは、敢(あ)えて聞いてみた。
「ええ、この土地にもお爺様にも神様の加護がありますように祈っています」
(まあ。何も言うまい。
 そのうち。話してくれるだろう)
お爺さんは、今日もイリスへの信頼を優先することにしていた。
夕食をテーブルに並べた。
いつもの様に感謝の祈りを捧(ささ)げた後、食べた。
「奇麗(きれい)に全部食べてくださいよ」
「分かってるよ。
 元気を出さないとな」
お爺さんとイリスは、残さずに食べた。
(明日は、今日の昼に食べた果物をスープに入れてみよう)
食器をたんたんと片づけた。
お爺さんは、ベットに座りカードの書物を読んでいる。
イリスは、食器を洗い終わるといそいそと納屋に出かけた。
「あら、果物を食べたのね。
 顔色もいいですね。
 いつになると起きるのですか?」
イリスは、また森へ果物を取りに行った。
暫(しばら)くして果物を持って帰ってくる。
傍(かとわ)らに果物をそっと置いた。
イリスは、また祈る。
(昼の果実の匂いがする)
匂(にお)いに目が覚める。
デミュクは、薄目を開け、イリスが祈っているのを見て安心した。
しかし、目を閉じ寝ているふりをした。
(何を話して良いか分からない)
イリスは、一生懸命祈っている。
耳を澄(す)まして聞くと今日あったことを報告しているようである。
デミュクもいつしか寝ていた。
イリスも傍(かたわ)らに寝ている。
疲れていたかもしれない。
真夜中である。
デミュクは、目を覚ました。
耳を澄ませる。
熟睡(じゅくすい)しているか確認する。
デミュクは、目を開け起きだした。
(可愛らしい寝顔)
(本当に夢で見た妖精のようだ)
見ているだけでデミュクの心は暖かくなった。
(人の禁(きん)を破るのだ)
(誰だ?)
自分の心の声とは別に心に声がする。
(我々は、排泄(はいせつ)しない。
 神(悪魔)だからな。
 人か神か確かめるのだ)
悪魔の主(しゅ)の要求である。
デミュクは、誰の声か理解した。
(何を疑うことが有る?
 確かめるまでもない人間だ)
自分の意志を強く気を入れ、こころに念じる。
(普通の人間だ)
(じゃあ。夢は?幻想か?
 予知ではないのか?)

主(しゅ)のイメージに飲み込まれていく。
デミュクは、確かめた。

人の味だ。
(やっぱり、只(ただ)の人間なのだ)
デミュクの悪魔の力か?イメージで空間を超えれる。
(夢での妖精には、胸に石があった)
胸を探(さぐ)った。
今度は、実際に手で触(さわ)った。
服の上からである。
「硬い」
硬い感触が指に伝わる。

つづく。 次回(愛とは誘惑か?)

#自作小説 #失望 #愛 #導かれし悪魔の未都市 #デミュク #導かれし未都市 #イリス

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デミュクの顔のアップを書いてみました。

2021年05月19日 22時29分52秒 | 「~失望と愛~導かれし悪魔の未都市。」【R15】(自作小説)

ちょっと場所が違うので、接写で失礼します。

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月の妖精イリス(イラスト)

2021年05月19日 09時05分34秒 | 「~失望と愛~導かれし悪魔の未都市。」【R15】(自作小説)

これでどうでしょうか?

完成ですかね?これで終わりにします。

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第Ⅱ章。「現れし古に伝わりし指輪」2話、願い、言い訳。「~失望と愛~導かれし悪魔の未都市。」0005

2021年05月17日 12時21分40秒 | 「~失望と愛~導かれし悪魔の未都市。」【R15】(自作小説)

第Ⅱ章。「現れし古に伝わりし指輪」2話、願い、言い訳。「~失望と愛~導かれし悪魔の未都市。」0005

0005_願い、言い訳

イリスは、お叔(じい)さんから受け取った鍬(くわ)を納屋の手前にしまった。
食事の用意をしなければならない。
傷負(きずお)い人の様子が気に成る。

イリスは、まだデミュクの名前を知らない。
「青い血。人ではない。きっと天使よ。
 私たちを救いに天から降りて来たのだわ。
 その途中に、魔物か、何かに襲(おそ)われたのよ。
 傷負いの天使だわ」

「天使さんにもお食事をお持ちしますわ。
 早く元気になってくださいね」
イリスは、一人告(つ)げると食事の用意をしに家に戻った。

炊事場(すいじば)には、水がめと土と石で作った竃(かまど)がある。
森が近いので竃(かまど)にくべる薪(まき)は、欠(か)くことがない。
イリスは、薪(まき)もたまに街へ売りに行き生活費の足しにする。
火をつけ、水を入れた鍋に、竹の網の籠(かご)を置き、
その中にジャガイモを入れて、蓋(ふた)をし竃(かまど)にかける。
ジャガイモの蒸(ふ)かしいもである。
暫(しばら)くして、
「出来上がった」
籠からジャガイモを取り出す。
「あちちっち」
手で、弄(もてあそ)ぶ、右左(みぎひだり)、
ジャガイモを手の上で移動させる。
熱さを我慢して、親指で押し当て擦(す)り、
皮をむき、棒(ぼう)で潰(つぶ)し粉(こ)ねてサラダ状にする。
サラダとってもポテト以外は何も入っていない。
味も、ポテトの味のみである。
味気(あじけ)ない。

次にキャロットとジャガイモの皮をむきを刻(きざ)んだ。
鍋(なべ)に水を入れ、刻んだものをぶち入れる。
そして、怪(あや)しげなすりつぶした木の実と木の皮。
刻んだ葉を入れる。
調味料らしい。
塩味(しおみ)と苦(みが)みと酸味(さんみ)が生まれる。

これでも、イリスの家庭は、まだ、贅沢(ぜいたく)な方である。

出来上がった。

主食は、ポテトサラダである。
小麦がないわけではないが、小麦は売り物である。
そして、三分の一は、税に収める。
食べるわけには、いかないのである。

ポテトを大皿に盛る。
唯一(ゆいつ)、お代(か)わりが出来る主食である。
木のスプーンで小皿に取って食べる。
キャロットとジャガイモのスープも中深皿(ちゅうふかざら)に盛った。
そして、食卓に持っていく。
それとは別に傷負いの天使さん用にポテトとスープを中皿に取り鍋の陰に隠(かく)した。
自分とお爺さんの食事をテーブルに並べる。
お叔さんは、奥のベッドに座って、何かのカードの書物を読んでいる。
「望(のぞ)みを神に素直に頼(たの)みなさい。代償(だいしょう)を支払いなさい…」
教会への寄付(きふ)の代わりに紙のカードに数行の教訓めいたものを神父(しんぷ)が書かいたものを貰(もら)ったのである。

「お爺様。お食事ができました」
イリスは、こちを注意深く見ている。
お爺さんは、目を合わさずに書物を読むふりをして熟慮(じゅくりょ)した。
イリスの様子が少しおかしいのに気付いていたからだ。
(エプロンを着けていない。どうしたのだろう?)
やっぱり、気に成る。
結局、差し障(さわ)りのないように尋(たず)ねることにした。

食卓テーブルに着く。
椅子(いす)は、テーブルを囲(かこ)って4つ在る。
古びた背もたれのある木の椅子。
お爺さんの手作りである。
イリスは、台所が見える方に座る。
お爺さんは、イリスの向かいの椅子に座った。
そこが、定位置である。
台所に背を向けている。
お爺さんは、イリスに話かけてみた。
「エプロンは、どうしたの。
 汚れたのかい。
 新しいのを作るか?」
何か良いことでも起きたように笑顔で尋ねてみた。
「そうそう。汚しやちゃって。
 でも、お爺さま。私は大丈夫です。
 心配しないで」
(言えなかった。
 何か良い理由がないか考えかけたが、
 思い浮かばなかった)
イリスは、少し戸惑(とまど)った。
(お爺様は、何かを気づいてるわ)
お爺さんは、イリスの目をじっと見つめている。

「食事が終われば、納屋の農具の手入れでもしようか」
お爺さんは、納屋に何かあるかと探った。
「あ!私がやっときます。
 ちょうどいい季節だからら一人で礼拝し、ついでにやっときます」
「そうか、じゃあ。負かすとするか」
(確かに何かを隠(かく)している。
 納屋になにかある)
だが、お爺さんは、無理に尋ねることはしない。
干渉せずに何が有ろうと暖かく見守る。
そう言う家のルールだから。
お爺さんは、イリスを尊重して、納屋には、近づかないことにした。
話は、それで終わった。
イリスの家では、食べる前に礼拝をする。
「天に地に恵(めぐ)みを感謝します」
お爺さんが唱えた。
2人は、目を閉じ神に感謝した。
そして、キャロットとジャガイモのスープを口に運ぶ、
それをおかずにポテトを食べた。
「料理がうまくなった」
お爺さんは、イリスにも感謝した。
納屋の事、エプロンの事は、それ以降尋ねなかった。
そして、食事は、終わった。

お爺さんは、直ぐベッドに横になった。
「納屋で祈ってきます」
イリスの心は、納屋に向かっていた。
「そうか」
お爺さんは、そっけなく言った。
「一人で祈りたいから、
 そうします」
イリスは、念を押した。
こっそり鍋の後ろに隠していた食事を持って納屋に行った。
納屋の戸を開ける。
傷負い人は、寝ている。
顔が目に入った。
少し苦しいるように見える。
無理に起こすわけにはいかない。

イリスは、公言した通り、傍(かたわ)らで農具の手入れをしだした。
手入れが終わると祈る。
イリスは、何を祈っているのだろうか。
じっと夜空を見ている。
星が輝(かがや)いていた。
(天使さんがの傷が無事に回復しますように。
 食事を食べてくれますように。
 お願い。
 生きて、元気になってください)
イリスは、知らないうちに傍(かたわ)らで寝ていた。
「うぅぅ」
デミュクの目が少し開(ひら)く。
空腹からだろうか。
イリスは、気付き、すかさず声をかける。
「大したものではないですが、お食事を用意しました」
(やっぱり、女(おんな)がいる)
デミュクは、動こうとしたが体が動かせない。
観念して、その女性に縋(すが)ることにした。
イリスは、ポテトを傷負い人の口に運ぶ。
だが、デミュクは、口を噤(つぐ)む。
「わるい。俺は、普通の食物(たべもの)を食べないのだよ」
振り絞(しぼ)るような声。
「じゃ。何なら食べれるの?」
イリスは、問い尋(たず)ねる。
「ち。血。動物の血。を飲む。
 だが、無理だろ」
「あなたは、神の使いでしょうか?
 天使は、食物を取らないのですね」
イリスは、解釈(かいしゃく)した。
それが誤りであろうと関係ない。
「俺は、不浄(ふじょう)のものだ」
「なぜ?そんなことを言うです?
 流れる血の色が人間のものとは違うからですか。
 それこそ、天使の証(あかし)でしょ」
デミュクは、その言葉に躊躇(ちゅうちょ)するが正直に話す。
それで、見捨てられれば、それも運命とあきらめがつく。
「俺は、悪魔だ」
「え!でも、神様の使いでしょ」
イリスは、食い下がる。
「やさしい目、顔だもの。
 そうでしょ。
 じゃ。違うなら、なぜここに来たのですか?
 私の祈りが通じたのでしょ」
デミュクには。本当のことは言えない。
(悪魔司祭(しさい)に追い出された?
 悪魔に殺されかけて、
 追手に追われている?
 今度は、神の使いをする?
 俺が?)
デミュクは、自信の陥(おちい)った立場が可笑(おか)しくなった。
少し笑顔(えがお)になる。
今は止血されているが、多くの血を流した。
体力が限界に近い。
(何か栄養を取らなければ、
 他に何で栄養をとれるのか?
 肉の果実(かじつ)があればなぁ)
デミュクは、意識がまた薄れかける。
目を閉じて集中して意識が留(とど)まるように耐えていた。
(顔色が悪い?)
(血は、青色)
(だから、顔が青いの?)
(違う、これは、栄養が不足している)
(このままでは、衰弱(すいじゃく)して死をむかえる)
(私は、そう感じるの)
イリスは、意を決した。
「血なら飲めるのね」
そう言うと、家に行き、木のカップと包丁を台所から持ってきた。

包丁を左手でぎゅっと握る。

血が滴る。
カップで受け止めた。
カップ一杯の血。
少しクラっとした。
左手の切った後の血を右の人差し指に付けてデミュクの口を触(ふれ)る。

デミュクは、目を開(あ)けた。
(うぅぅぅ)
カップを口に持っていく、頭を少し手で抱(かか)えあげ、口に当てる。
そして、口へ注ぐ。
血がデミュクの喉(のど)をごくごくと通っていく。

(なざ、血が青いのに顔色は赤いの?)

「『血の契り』である」
天から胸に声が響いた。
(俺は、契約を受け入れたのか?)
デミュクの魂(たましい)の影の躯(むくろ)は、宝石となりイリスの胸についた。
「ガカチ」
デミュクには、少しイリスの胸が光るのを覚えた。
そして、再び眠りにつく。
(俺は、彼女と契約したのか?…)

イリスは、何も気づいていない。
神に感謝した。
(私とお爺様を助けるために、
 これは、
 神様が遣(つか)わしたものよ)
デミュクの顔に力が蘇(よみがえ)った。
イリスは、安心した。
左手の止血をし、また、祈りを続け、
いつしか、また、傍(かたわ)らで寝ていた。

家では、お爺さんも寝ていた。
(何かをほっとけないのだろう。
 イリスは、神の巫女(みこ)、救いの巫女なのだから)
お爺さんは、自身に言い聞かせて眠りについた。

つづく。 次回(回復の証)次こそ、デミュクは、回復し、イリスと交わるのか…。愛の始まりか…、契約の始まりか…。


#自作小説 #失望 #愛 #導かれし悪魔の未都市 #デミュク #導かれし未都市

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イラスト(イリス)

2021年05月16日 14時18分42秒 | 「~失望と愛~導かれし悪魔の未都市。」【R15】(自作小説)

今は、こんな感じです。

羽は、コピーです。

透明度61なのですが不透明にできます。

不透明にして見ました。

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