バブル崩壊の責任者は誰だ

あちこちで銀行が不良債権を抱え経営が行き詰まっている話が取り沙汰された。

　その時に決まって、経営が行き詰まった理由は「バブル崩壊」であるという。さも「バブル崩壊」が誰かが仕掛けた罠による人災か突然発生した自然災害であるかのような言い方であるが、よく考えると、バブルを創出したのはこれに貢献した程度の差こそあれ日本国民全体である。国も地方自治体も企業も国民も国全体がバブルに酔ったのである。そしてこの酔いが醒め正気に戻った時点が「バブル崩壊」の始まりである。国民全体が引き続きバブルに酔っていれば現在でも右肩上がりの経済が続いているのである。（いずれかは醒めざるを得ないが・・・）

倒産した原因を「バブル崩壊」と言うけれども、

　その倒産自体が「バブル崩壊」そのものであり、バブルを崩壊させている原因のひとつはその倒産である。みんなで頑張って倒産を阻止できれば「バブル崩壊」はないのである。倒産した本当の原因は「バブル崩壊」ではない。見通しの甘い「放漫経営」であり、終末段階ではなりふり構わない「不正経営」である。これでは倒産しないわけがない。倒産して当然である。そしてその倒産が周囲に害悪を及ぼしている。このような企業は早い時期に淘汰させた方が長い目で見れば世の中のためになると思う。

可哀想なのは、健全な経営を続けていて、

　周囲の倒産のとばっちりで倒産せざるを得なくなった企業である。この企業こそ「保護」されるべきである。「保護」する企業と「保護しない」企業を区別するのは何であるかは、以上の話から一目瞭然である。これまでの経営内容である。これがしっかりしている企業は一時の困難を乗り切れば正常な経営状態に戻ることができる。どちらか解らない企業は、経営内容の健全性を説明できない企業であり、こんな企業は将来性があるとは言い難い。いい加減な経営内容の企業は「保護」する必要性なんかさらさらない。害を及ぼす前に早い時期に淘汰されるべきである。これを変な風に「保護」するために被害は拡大するばかりである。

倒産前の終末の負債は自暴自棄も加わって、

　指数関数的に増大し、千億、兆の単位の借金が踊っている。兆と言えば国の財政で使う単位であり、１２桁の電卓（通常市民の使う電卓は８桁）でやっと表示できる金額である。この借金は周囲がかぶるか、影響が大きい場合は国が面倒を見るしかない。国といってもその財源は「国民」である。我々の税金が使われているのである。コツコツと集めた税金がごっそりと無責任な経営の後始末のために使われている。「税金」というのはおかしいかも知れない。「公的資金」と言われる性質のもので、これは巡り巡って国民の「貯金」である。

日本国民は貯金大好きな国民でせっせと貯金に励んでいる。

　この貯金を政府が前借りして大盤振る舞いしているのが実体であろう。本来はこの貯金は国民が投資に使うべき資金である。日本国民に「投資」という概念が育っていないために、国が代わりに勝ち目のない大博打を打って均衡が保たれているということであろうか。しかし、国民それぞれが投資に心がける場合は、損得勘定から優良な企業と不良な企業は明確に区分され自然に淘汰されるが、国が大博打を打つ場合は、危険性が大きすぎるし、実利とは無関係の変な思惑が働いていい結果が出るとは思われない。第一、国はこの博打で儲かっても儲からなくてもあまり関係ないのである。まるで慈善事業の体をなしている。

資本主義を標榜する日本国であれば、

　資本主義を貫き通さなければならない。そう考えると、資本主義の大本である市場原理が有効に働いていないように思える。国そのものが市場原理の中でのたうち回っているのでなく、市場原理が有効に働く場を提供するのが国の仕事である。どうすれば国民が貯蓄でなく投資に向かってくれるのか、どうすれば健全な資金が一般企業に流通するか、どうすれば新規事業を掘り起こし市場を活性化できるか、どうすれば国際化に耐えうる日本経済を構築できるかなどなど、その方策を模索しその環境を整えるのが国のやる仕事ではなかろうか。それは決してその場しのぎの一方的な保護対策ではないと思う。