岩田亨の短歌工房 -斎藤茂吉・佐藤佐太郎・尾崎左永子・短歌・日本語-

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「臓器がふたつ欠けた生活」

2014年05月01日 23時59分59秒 | 紀行文・エッセイ
僕に欠けた臓器は、胃と胆嚢だ。

 最初は胃を全摘した。胃がんだったのだ。胃と一緒に、周囲のリンパも取ってしまった。人間の臓器に不必要なものはない。この頃とみにそう思う。

 胃を全摘する前の僕は、麺類が好物だった。ウドン、ソバ、パスタ、ラーメン。だが胃がないと、麺類を食べるのは何とも味気ない。よく噛まねばならないからだ。よく噛まないと、腸閉塞や腸捻転になる。一度だけ経験したが、あれは痛い。尋常の痛さではない。

 それ以来、僕は食事の時に、噛む回数を数えるようになった。目安は50回。これだけ噛んで、未だ腸がつまったことはない。コンニャクやコンブ、貝類は100回噛む。おでんのネタのコンニャクやコンブはこれで食べられる。

 脂もの、炒め物、揚げ物は、厳禁に近い。食べればたいていは下痢をする。だから肉はもっぱら鶏のむね肉を食べる。

 この結果、僕の食生活はまるっきり様変わりした。よく噛むせいで、すぐに満腹となる。以前はよく食べていた、ドンブリモノなど、とても食べられない。ご飯が多すぎる。カレーもやはりご飯が多い。出先でやむをえず、カレーを食べたことが一度だけあったが、腸がつまりかけた。

 外食はもっぱら、サンドイッチか、和風定食。安心して食べられる。おかげで100キロ以上あった、体重は、高校時代の体重も下まわっている。体重が減ったので、腰痛もなくなった。

 胃を全摘した人は、腸閉塞になり易い。以前の入院で同室だった人は、3年間で5回の腸閉塞を経験した。しかし食生活のおかげで、腸閉塞はこの8年でただの1回。


 胃がないと「電解質不足」になり、手足の筋肉が引き攣る。そういうときはジンジャーエールや、炭酸水を少量飲む。

 不自由だが、工夫次第で乗り切っている。


 胃がないと、胆嚢に負担がかかる。胃がないぶん、他の消化管に負担がかかるのだろう。胆管炎を患い、去年胆嚢を摘出した。胆嚢がないと胆汁の量がへる。脂は消化できないことが多い。

 胃がなくて、ただでさえ下痢を起こし易いのに、ちょっとしたはずみで下痢を起こす。色々と工夫して、下痢には、黒糖、抹茶、チーズが好いことがわかった。

 胆嚢がなくなって、困ったことになったのは、排便のあとに下腹部に激痛がはしるようになったことだ。外科で始めは痛み止めを、処方してもらっていた。神経痛の診断だった。だが神経科の医師に聞くと、神経痛ではなく、食べたものがスムーズに消化管を流れないための痛みだそうだ。

 困ったことになったと思ったが、痛みのあと何かを食べれば、痛みが消えるのが分かった。それを外科の医師にはなしたら、「薬ではなく食物で対処したらよい」ということになって、外出の時は、ウエハースを持ち歩いている。下痢には黒糖が効くので、カバンのなかには、カリントウも入っている。喫茶店では「抹茶ラテ」を飲む。

 煩雑だがこの工夫で、手術前より健康な生活が出来ている。有難い話だ。





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