・出窓より街を見ながら微笑める美緒を見たりき路上のわれは
・アラブ馬に頭(ず)を垂れ居たる汝(なれ)のことわれは見守る厩舎にありて
・冬空を見あぐる美緒の横に立ち心あたたかしこの夜もまた
・ゆらめきて色ゆたかなる羽根のごとフラメンコダンサーのドレスの裾は
・冬となり毛皮の帽子を手放さずロシア生まれの若き女(おみな)は
難解歌はないと思う。読んだまま受け取っていただければよい。「アラブ馬」に関して「何でアラブ馬でなければならないのか」という問いが歌会であった。アラブ馬は美しい。それが美緒の面差しとかさなるのだ。
これは親しい人への「愛おしみの歌」だ。
ところで、これを出詠したあとウクライナ戦争が始まった。それ以来「相聞歌」が一首も詠めない。戦争は心を枯らし、とげとげしくするということだろう。