奥日光の光徳牧場の近くに光徳沼という小さな沼がある。戦場ヶ原を過ぎて光徳牧場へ向かって右折すると、間もなく左側に見えてくる。
白い砂地の中央にある小さな沼でだが、非常に水がきれいだ。沼底の砂が見える。その砂もやはり白いが水草だろうか、やや黒っぽくて揺れているものがある。
以前は毎年のように行ったが、病気をしてからはとんと御無沙汰している。短歌を詠んだのは最後の訪問の直後だった。
雨の多い年にはここから少し南へ下ったところが川になっていたから、もともとは川底だったのかも。
ある年、沼の中央付近でアメンボらしき虫が、やたら騒いでいるところがあった。近寄って目をこらすと、それはアメンボではなくて沼底の砂が湧き上がるように動いているところだった。その真上の水面も揺れている。少年時代に通った銭湯の湯の沸きだし口を思わせたが、そこは沼の湧水地点だった。この沼より北には沼も池もない。ひょっとするとここは、水無し川が地中から顔を出しているところなのかも知れない。
そうそう。「運河」誌上でのはじめての作品批評は「水の輝きを、青き水藻の揺らぎと捉えたことで、清新な叙景歌となった」というようなものだった。
その沼ではもう一首できたので、ここに書いておく。
・沼底の砂の動きをわが見れば湧水地点の位置確かなり・