胃のない生活
1、人間の臓器というものは、それぞれ何らかの役割を持っているので胃を全摘すれば体のあちらこちらに支障が出る。
(1)胆嚢に負担がかかる:
胃は主にタンパク質を消化するが、胃が無いと消化の機能が弱くなりその分だけ胆嚢 に負担がかかる。胆石のもできやすくなる。
(2)腸閉塞になり易くなる:
胃は重要な消化器だが、胃が無いと食べたものが十分に消化されない。それが腸閉塞 や腸捻転の原因となる。或る患者は、胃の全摘のあとの3年間に5回の腸閉塞を 起こした。特にソバ、ハムなどの加工品、脂分の多いマヨネーズ、刺激の多いコ ーヒーなどは要注意である。
(3)肝臓に負担がかかる:
胆嚢から分泌される胆汁(胆液)は肝臓で作られる。胆汁は脂分の消化を助ける働き があるので、脂分の多い飲食物は要注意だ。
2、対策
(1)食べ物をよく噛む:
これらに対する対策は、先ずよく噛むことだ。胃は消化だけでなく、熱いものや刺激 物などを腸に入る前に、和らげる働きがある。胃が無いという事は和らげる働き が弱くなっているということだ。だからよく噛むとは、即ち腸の状態を刺激物や 熱いものから守りにくくなっているということ。よく噛むことによってこの様な 機能を保てるのだ。
(2)腹を冷やさない:
胃が無いと刺激物や熱いものに対して、体を充分に守れないことになる。刺激物、熱 いものを食べたり飲んだりすると、腹が痛くなる。そういう時は、腹が冷えてい る場合が多い。だから腹を温めると症状が改善する場合が多い。
(3)食べ物に注意する:
胃のない者は消化力が弱くなっているので、脂の多いもの、刺激の強いもの、熱いも のは要注意だ。コーヒー、揚げ物、唐辛子、マヨネーズ、炒めももの炭酸飲料を 避ける必要がある。
(4)患者会は?
胃のない人は大勢いる。正確な数は僕は知らないが、かなりいることは良く知られて いる。王貞治もその一人だ。王も内視鏡手術で胃を全摘した後食べ物を食道に詰ま らせたことがある。おそらくこういう人が多いだろう。同じ胃のない者同士が経験を交流できるような場はないものだろうか。
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