https://www.yomiuri.co.jp/national/20211126-OYT1T50074/
生活に困窮して家を失い、車上生活を余儀なくされる人がいる。道の駅や量販店の駐車場などを車で転々とするため、行政による把
握が困難で、支援の手が届きづらい。新型コロナウイルスの影響で仕事や収入を失う人が相次いでおり、新規感染者数は落ち着いてい
るものの、本格的な経済の回復は遠い。今後、追い込まれる人が増える恐れがある。(藤岡一樹、北島美穂)
仕事激減
「そのまま死んでいたかもしれない」。高松市の男性(49)は今年8月、市内の路上で車から降りた際に意識を失い、病院に運ば
れた。39度の高熱で、検査の結果、新型コロナウイルスの感染が判明した。
男性は昨年9月から、軽乗用車で寝泊まりする生活を送っていた。もともと運転代行の仕事をしていたが、昨春以降、飲食店の営業
自粛で仕事が激減。17万円あった月収が7万円に減った。さらに、昨年5月に同居していた母親が亡くなり、母親名義の借家を退去
させられた。新居を借りる貯金はなく、車上生活をしながら仕事をするようになったという。
未明に仕事を終えると、道の駅の駐車場に車を止め、運転席のシートを倒し、仕事着のジャンパーを毛布代わりに眠った。客商売で
清潔にする必要があり、銭湯に通い、ガソリン代もかさんで貯金はできなかった。ハローワークで寮付きの仕事を探したが、何度も不
採用になった。
男性は20日間ほど入院した後、支援団体の助けで生活保護の受給が決まった。車は処分することにし、市内のアパートで暮らしな
がら運送関係の仕事を目指している。男性は「家がある当たり前の暮らしを取り戻せた。仕事を探し、生活を立て直したい」と話し
た。
目撃相次ぐ
厚生労働省の調査によると、全国のホームレスの数は今年3824人で、5年前から4割近く減った。しかし、調査は自治体の職員
らによる目視のため、移動する車上生活者は数字に含まれていない可能性が高い。
広い駐車場やトイレがある道の駅では、車上生活者とみられる人の目撃が相次いでいる。愛媛県内の道の駅の担当者は「後部座席に
大量の荷物を積み、夕方から朝まで滞在し、日中はどこかにいなくなる。滞在しないよう指導するが、しばらくすると別の人が寝泊ま
りしている」と話す。
高知県内のある道の駅では今年7月、従業員が車上生活をする50歳代の男性を発見し、地元の社会福祉協議会(社協)に連絡。社
協の職員がおにぎりを持って男性に会いに行き、住む場所を用意した。この男性も1年前に仕事を失い、車上生活をしていたという。
社協の担当者は「男性は何度も『恥ずかしい』と繰り返していた。もっと早く相談に来てくれれば……」と話す。
孤立
コロナで減収した人については、家賃の一部を支給する制度がある。家を失い、新たに家を借りる場合も利用できるが、敷金や駐車
場代は対象外だ。利用期限があり、長引くコロナ禍で、受給できなくなっている人が相次いでいる。
困窮者が無料や低額で身を寄せられる施設も各地にあるが、車を保有したまま受け入れるところは少ない。
静岡市のNPO法人「POPOLO」は、夜間に道の駅やパチンコ店の駐車場を巡回し、2018年度以降に約40人の車上生活者
を支援した。駐車場を併設した宿泊施設も運営している。
法人によると、車上生活者は閉じられた空間で孤立を深め、自ら行政などに助けを求められないことが多いという。鈴木和樹事務局
長は「行政が積極的に把握し、プッシュ型の支援が必要だ」と話した。
「生活保護なら車処分」誤解
車上生活者が生活を立て直すため、「最後の手段」になるのが生活保護だ。しかし、「車を必ず処分しなければいけない」という誤
解も根強い。
生活保護法は、受給要件として資産の処分を求め、資産にあたる車の保有は原則認められない。一方、厚労省は通知で、公共交通機
関の利用が困難な場合や障害者は、通勤や通院などに必要であれば認めている。
各自治体の資料を読売新聞が分析したところ、全生活保護受給世帯に対する車の保有割合(2018年度)は、新潟県(3・6%)
や秋田県(3・2%)など地方で高く、大阪府や愛知県(ともに0・1%)など都市部で低い傾向にあった。しかし、青森県(0・
4%)や和歌山県(0・3%)など地方でも低い県があった。
生活保護制度に詳しい大阪弁護士会の小久保哲郎弁護士は「生活再建のために車が必要な人はいるが、誤解から申請をあきらめてし
まう人もいる。行政は車を持ちながらでも受給できるケースがあることを周知するべきだ」と指摘する。
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生活に困窮して家を失い、車上生活を余儀なくされる人がいる。道の駅や量販店の駐車場などを車で転々とするため、行政による把
握が困難で、支援の手が届きづらい。新型コロナウイルスの影響で仕事や収入を失う人が相次いでおり、新規感染者数は落ち着いてい
るものの、本格的な経済の回復は遠い。今後、追い込まれる人が増える恐れがある。(藤岡一樹、北島美穂)
仕事激減
「そのまま死んでいたかもしれない」。高松市の男性(49)は今年8月、市内の路上で車から降りた際に意識を失い、病院に運ば
れた。39度の高熱で、検査の結果、新型コロナウイルスの感染が判明した。
男性は昨年9月から、軽乗用車で寝泊まりする生活を送っていた。もともと運転代行の仕事をしていたが、昨春以降、飲食店の営業
自粛で仕事が激減。17万円あった月収が7万円に減った。さらに、昨年5月に同居していた母親が亡くなり、母親名義の借家を退去
させられた。新居を借りる貯金はなく、車上生活をしながら仕事をするようになったという。
未明に仕事を終えると、道の駅の駐車場に車を止め、運転席のシートを倒し、仕事着のジャンパーを毛布代わりに眠った。客商売で
清潔にする必要があり、銭湯に通い、ガソリン代もかさんで貯金はできなかった。ハローワークで寮付きの仕事を探したが、何度も不
採用になった。
男性は20日間ほど入院した後、支援団体の助けで生活保護の受給が決まった。車は処分することにし、市内のアパートで暮らしな
がら運送関係の仕事を目指している。男性は「家がある当たり前の暮らしを取り戻せた。仕事を探し、生活を立て直したい」と話し
た。
目撃相次ぐ
厚生労働省の調査によると、全国のホームレスの数は今年3824人で、5年前から4割近く減った。しかし、調査は自治体の職員
らによる目視のため、移動する車上生活者は数字に含まれていない可能性が高い。
広い駐車場やトイレがある道の駅では、車上生活者とみられる人の目撃が相次いでいる。愛媛県内の道の駅の担当者は「後部座席に
大量の荷物を積み、夕方から朝まで滞在し、日中はどこかにいなくなる。滞在しないよう指導するが、しばらくすると別の人が寝泊ま
りしている」と話す。
高知県内のある道の駅では今年7月、従業員が車上生活をする50歳代の男性を発見し、地元の社会福祉協議会(社協)に連絡。社
協の職員がおにぎりを持って男性に会いに行き、住む場所を用意した。この男性も1年前に仕事を失い、車上生活をしていたという。
社協の担当者は「男性は何度も『恥ずかしい』と繰り返していた。もっと早く相談に来てくれれば……」と話す。
孤立
コロナで減収した人については、家賃の一部を支給する制度がある。家を失い、新たに家を借りる場合も利用できるが、敷金や駐車
場代は対象外だ。利用期限があり、長引くコロナ禍で、受給できなくなっている人が相次いでいる。
困窮者が無料や低額で身を寄せられる施設も各地にあるが、車を保有したまま受け入れるところは少ない。
静岡市のNPO法人「POPOLO」は、夜間に道の駅やパチンコ店の駐車場を巡回し、2018年度以降に約40人の車上生活者
を支援した。駐車場を併設した宿泊施設も運営している。
法人によると、車上生活者は閉じられた空間で孤立を深め、自ら行政などに助けを求められないことが多いという。鈴木和樹事務局
長は「行政が積極的に把握し、プッシュ型の支援が必要だ」と話した。
「生活保護なら車処分」誤解
車上生活者が生活を立て直すため、「最後の手段」になるのが生活保護だ。しかし、「車を必ず処分しなければいけない」という誤
解も根強い。
生活保護法は、受給要件として資産の処分を求め、資産にあたる車の保有は原則認められない。一方、厚労省は通知で、公共交通機
関の利用が困難な場合や障害者は、通勤や通院などに必要であれば認めている。
各自治体の資料を読売新聞が分析したところ、全生活保護受給世帯に対する車の保有割合(2018年度)は、新潟県(3・6%)
や秋田県(3・2%)など地方で高く、大阪府や愛知県(ともに0・1%)など都市部で低い傾向にあった。しかし、青森県(0・
4%)や和歌山県(0・3%)など地方でも低い県があった。
生活保護制度に詳しい大阪弁護士会の小久保哲郎弁護士は「生活再建のために車が必要な人はいるが、誤解から申請をあきらめてし
まう人もいる。行政は車を持ちながらでも受給できるケースがあることを周知するべきだ」と指摘する。
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