いつも必ず「そばめし」を食べる。
しかも大盛りで。
「ボクが来たら、すぐに作っていいからね」
と、しばらく前から言いつけられていて、店へ入ってくるとすぐ、焼いているところをカウンターから覗き込むようにして監視する。
仕上げにタレをジュッとかけると、満足そうに笑って自分の席へ戻って待つ。
オヤジはいつも思うのだが、小学1年生の小さなお腹の中に、よくまあ大盛りの「そばめし」が入っていくものだと
「リキくん、そんなにそばめしを気に入ってくれてうれしいよ。だからさ、いっそのこと子供店長になって宣伝してくれないかなぁ ? 」
すると「リキくん」は小首をかしげて、もっと大きくなってからやってもいいと言う。
「う~ん、大人になってからじゃあ子供店長はできないんだよなぁ。どう、今なら時給300円でオヤツもつけちゃうから」
「時給って、なに ? 」
「1時間働くと、300円もらえるってこと」
「じゃあ、2度間だったら ? 」
「600円。ね、悪くないでしょ」
「うーん、かんがえとく。ボクもいそがしいから」
多少脈ありだが、子供の心は気まぐれだ。
次に来店した時にはころっと忘れているだろう。
次の日に、「ヨシくん」がお父ちゃんとお母ちゃんと一緒に来てくれた。
「ヨシくん」も「そばめし」が大好きで、必ずオーダーしてくれる。
出来上がるのを待ちながら、お母ちゃんと話している「ヨシくん」を見ていて、ちょっと前から思っていたことを打ち明けた。
「おぢさんさ、前からヨシくんが子供店長に似ているなぁと思ってたんだけど、自分でもそう思わない ? 」
すると「ヨシくん」満更でもなさそうに小首をかしげて考えている。
そしてお母ちゃんが言った。
「やっぱりそう思いますか ? 最近よく人から言われるんですよ」
「うん。顔だけでなくて、声も似てるよね」
「CM流れると、思わず見比べちゃうんですよね」
「ほら、ヨシくん。お父ちゃんもお母ちゃんも似てるって言うし、おぢさんとこで、子供店長やってよ。時給300円とオヤツもつけちゃうから」
「ヨシくん」、おやつにちょっと心が動いた。
「小学校2年生になってからじゃ、ダメ ? 」
「だめだよ、今が旬なんだから。2時間モグランポで遊んでいるだけで、なんと600円おこづかいがもらえるんだよ。しかもおやつ付き。赤いブレザーも用意しちゃうから」
「ヨシくん」小さい頭で一生懸命考えた。
「じゃあさ、火曜日と木曜日はだめだけど、月曜日と金曜日なら大丈夫かもしれない」
たまたまカウンターでそのやりとりを聞いていた、「ツッキー」がすかさず言った。
「じゃあ、オジサンはヨシくんがいるときに来よう」
もはや「ヨシくん」、妄想が頭の中を駆け巡り、ニコニコしながら「ボクが子供店長になったら」プランを話し始めてしまう。
「ヨシくん」上機嫌であります。
しかし、子供の心は気まぐれだ。
次に来店した時には、ころっと忘れているだろうなあ
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