プロ野球開幕で求めるもの

2020年05月29日 | 井戸端会議
政府は5/25、東京など首都圏の1都3県と北海道で継続している緊急事態宣言の全面解除を発表した。
それにより、プロ野球は6/19に開幕を決定する運びとなった様だ。
このまますんなりと開幕までこじつけることが出来るのか?

【6月19日 プロ野球公式戦開幕決定】
この一報が報じられ、ふたつの感情が芽生えた。
ひとつは期待と喜び、楽しみといったポジティブな感情。
もうひとつはコロナウイルス感染による不安や恐怖など手放しで喜べないネガティブな感情。
現在の私の偽ざる気持ちです…。

今シーズン、さかのぼること3/20開幕でした。
約2ヶ月以上が過ぎ、本来ならこの日交流戦がスタートし、我がドラゴンズはナゴヤドームで昨年の日本一チャンピオンのソフトバンクを迎え撃っての戦いであったはず。
しかし新型コロナウイルス感染拡大により日本の社会や経済、もちろんプロ野球も止まってしまった。
緊急事態宣言が4/7に発令され企業や店舗など活動や営業が自粛休止に追い込まれ、国民は外出自粛を求められた。社会経済活動が行き詰まる事態となった。
現在は国民の一人一人の行動自粛、政府各自治体の取り組みによる感染拡大対策効果により、明らかにピークアウトに転じ感染者を抑えることが出来てきました。
だが言うまでもなくコロナウイルスの蔓延が収束した訳ではありません。
今後、第ニ波第三波の懸念があるのも事実拭い去ることは出来ません。
そんな中、NPBはプロ野球の開幕を決めた。NPBの斉藤コミッショナーは、
「野球文化を何とか守っていきたいし、暗いときに自宅にいらっしゃる皆さまに、元気なスポーツを何とか届けられないかなという気持ちはあります。せっかく日本に育っている野球文化を皆さんの元気がでる素にならないかと考えながら、選手も難しいなかで体、コンディションを一生懸命に保っている。みんなで一致してなんとか社会を明るくしたい」とコメントを残した。

『一日も早く開幕を!』と願う気持ちは球団もファンも同じだ。コロナ禍の前と後では、多くの人たちが世の中が色々と変わるだろうと感じているはず。今までの常識や価値観も、生活スタイルも、経済システムも、いや応なしに変化するに違いない。社会において新しい生活様式を見つけ順応しなければならない。ところがプロ野球を統括するNPBと12球団代表者からは一切、そのような発想も覚悟も伝わってこなかった。昨年までと同じプロ野球を再開することを決めたようだ。

「年間120試合はやらないとペナントが成立しない」(野球規約上シーズン成立の最低試合数)などという固定概念に縛られる必要があるのか。今、プロ野球ファンが求めているものは何だろうか。コロナ禍の中、規制された毎日。プロ野球が見れない日々が悶々と2ヶ月以上が続き、5/21から緊急事態宣言が段階的に解除され、世の中が少しずつ解放される中、一足飛びに例年通りの毎週2カード6試合を当たり前の様に開催するプロ野球観戦を…。そんな日々をファン求めているだろうか。

せめて“生きたプレー”を見たい。まずはそれが切実な願いではないか。ユニフォームに身を包む選手がグランドで躍動する姿、投げて、打って、捕って、走って“白球の響き”、「球春」まずはそこから。今年は一試合でもニ試合でもチャリティー試合でも見せてくれれば十分力になるし励みになるのではないか。

プロ野球関係者は一刻も早く開幕し、すでに許容範囲ギリギリの段階となっているシーズン成立の最低試合数120試合。これ以上遅れると野球規約を変更する作業が必要となる。無理やり既定路線を進もうとしている。こうした強行日程を貫いてでも開幕を目指したい背景には、プロ野球興行の損失を少しでも食い止めたいNPB側と一部強行派の球団ではないか。

球団においては、開幕当初は無観客試合でのシーズン開幕が内定済み。ただでさえ入場料等の収入が見込めず大減収を強いられる中で主催試合数まで減ってしまうことになれば、やり繰りの大変な球団にとっては“死活問題”だ。

チームにおいては、難題となるのは“移動”。一軍の出場選手登録枠が29人、ベンチ入り人数が25人。監督、コーチやチームスタッフ、球団関係者、裏方さんなどで移動人数の合計が総勢50人を超えることも珍しくはない。また、それに伴うマスコミにも感染源となるハイリスクがある。開幕すれば各試合の球場に大挙して新聞、テレビ、雑誌、Webなどに属する記者やカメラマン、テレビクルーらが押し寄せるのは必至だ。選手らと同じように感染リスクが非常に高くなる。

選手において、“怪我”。本来開幕前2ヶ月に渡るスプリングキャンプで体を徐々に作り開幕に合わせてくるはず。5/25に開幕発表があり6/19開幕、1ヶ月弱でプロのパフォーマンスを果たして魅せることが出来るのか。間違いなく全力プレーすれば怪我の危険とは隣り合わせとなる。また、もし一軍チーム内に感染者が出れば2週間の自粛を求められる。濃厚接触者として一軍メンバー皆が感染者と同じ様に自粛を求められれば一軍と二軍の総入れ替えも考えられる。チーム間の戦力均衡は保たれなくなる。

ファンにおいて、NPBは聞くところによると80ページに渡る開催や観戦の為のガイドラインを作成した様だが、実際7/1よりどういう形の観戦が出来るのか想像すら出来ない。どんな対策を取ろうが感染リスクは非常に大きい。また、試合後の帰宅は最寄り駅の交通機関は大混雑が予想される。ソーシャルディスタンスを確保出来るのか。

野球人気においては、無観客試合やむ無し。はたしてテレビ放映でどれだけの野球ファンが視聴するのだろうか。今や地上波放送はほぼなくなった。デーゲームならともかくナイター中継時はテレビ視聴のゴールデンタイムに手を挙げるスポンサーがどれほどあるのだろうか。有料放送やインターネットでの中継は一部の視聴者のみ。またPCやスマホで3時間を越える視聴をこれだけ多様化した現代、忙しい生活の中毎日3時間以上もかかるプロ野球観戦に時間を割いてくれるだろうか。

等々、開幕するにあたりツッコミどころ満載だ。楽しみと怖さが背中合わせ。コロナ禍の感染リスクと各球団のひっ迫した経営状況を天秤にかけ、とりあえず6/19の開幕は決まったが果たして本当に今秋の日本シリーズまでフィニッシュすることが今のプロ野球の最善策であったのか?