プラムフィールズ27番地。

本・映画・美術・仙台89ers・フィギュアスケートについての四方山話。

◇ 西加奈子「サラバ!」

2023年02月19日 | ◇読んだ本の感想。
コロナワクチンの副反応で寝ていた時に上下巻ほぼ一気読みした。
面白く読んだし、ページターナーではあるんだけれど、
西加奈子の作品は、読後何か残るかというと残らないんだよなあ。
まあ残ることが唯一の価値ではないという考え方もあるけれども。

自伝として読んで面白かった。
西加奈子は姉のなのか?弟なのか?どちらもあり得る。
どちらでもない、のが正解ももちろんあり得る。

だがイランで生まれ、エジプトで育ち、というのは作者と重なる。
海外での生活部分は自分の体験そのものだろう。そこらへんは面白いね。

姉と母という台風の目。出来るだけ気配を殺して暮らす父と弟。
母の姉妹。近所に住む、新興宗教の教祖的な小母ちゃん。その他いろいろ。

家族の話ではある。……が、終盤の話の収束がなあ。

まず、姉の急速な「マトモ化」と、語り手(弟)の急速な没落がどうも……。
わたしは弟が没落するとは思わなかったから意表を突かれたし、
はー、そういうこともあるかも……とは思ったけれども、
だからといって、姉が急に普通になってもと思うし。

たしかに姉の奇行は渇愛の結果なんだろうけど、だからといって愛してくれる人が
見つかったから奇行は止みましたと言われてもな。
現実にはあり得ることだろうけど。

弟の生き方にもそういう落とし穴はあり得るかもしれないが、
あれほど周りを観察する人生なら、もう少し自分のことがわかってる気がするし。
姉弟のあの急激な逆転は無理があったように思う。

教祖の小母ちゃんもまったく現実的じゃないからね。
建物なんてそう勝手に建ちませんよ。果てしない決断を繰り返して建っていくので、
小母ちゃんの「我関せず」感に無理がありすぎる。
税務処理も大変ですよ。それを最古参が全て代行していたにせよ、
出来て、無くなったものを、最初から無いものと同じには出来ない。

ところで、なんで「コザン」「サイコザン」?
読み方は「コサン」「サイコサン」ですよね。コザンとは読まないと思うんだけどな。
たしかに「サイコサン」だと人名みたいだけど。

まあ面白かったんだけどね。
でもなんか素直に「面白かった!」で終わらせる気になれない。
ヤコブとの再会も感動的で、エピソードとしては好きだけれども
一連の流れのなかでは安易な終わらせ方だというか。

でも後味が悪い小説よりはずっといいよね。うん。
……だが西加奈子の小説はそろそろいいかなと思うので、
あとはエッセイを一冊読んで終わりにする。
小説よりもエッセイが抜群に面白い人もいるので、終わりになるかどうかは不明だが。



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