このタイトルだったら舞台はアメリカ。
禁酒法時代とジャズの黎明期とをからめて(これが同時代なのかは知らない)、
退廃的でノワールな世界をかっちり書くのだろう。
――と思ったら舞台はドイツ。しかも第二次世界戦争中、ナチ政権下のドイツ。
ジャズ好きの富裕層の不良少年のシニカルな視点で周囲を描く。
そう、こういうものを読みたかった。
人生を通じて、ナチの悪行はずいぶん見聞きする機会はあったけれども、
その向こうにいたはずのその頃のドイツの普通の人の話はなかなか出て来ない。
その部分に本なりなんなりで接触するのは、そもそも嫌いなジャンルの話なので
気が向かない。
この話も上手かったですね。佐藤亜紀。さすがだと思うわー。
バランスがね。絶妙でね。
戦時中の国内向けのナチの姿。同年代から見たユーゲントのメンバーの言動。
BBCのラジオをほとんど公然の秘密として聞いている人々。
ジャズに熱狂する若者たち。
軍需産業で富を築きつつ、ナチには内心で反発している父親。
そのおかげで裕福な生活をしつつ、乱痴気パーティを開き、闇でレコードを売り、
捕まって拷問を受け、表面は官憲に従ったふりをしつつ、徹頭徹尾
シニカルな視点で物事を見ているハンブルクの少年。
ハンブルクが爆撃を受けた時でさえも――
多くの人がぐちゃぐちゃになって死んでいき、
両親がそれほどぐちゃぐちゃではなく死んでしまい、
それでもナチには従順を装い、工場をじわりじわりと再建する。
その全く変わらない姿勢が逆に登場人物としては不自然ではあるんだけど。
何があってもあまり動揺しないからね。ただ一人称でナレーターだから、
その冷静な語り口が最後まで続くのが好ましい。
チャラついた口調で書かれてはいるけれど、父や母へのどうしようもない愛憎とか、友人たちへの情とか、若者らしい傲慢さとか、ジャズとそれに付随する享楽とか、
――戦争と感情生活と行動のミルフィーユが見事。
上手く書く。ほんとに。
それに加えて文章も上手いよね。
上手いと感じる文章なんて希少なのでありがたいなあ。
もう少し書いて欲しいものだが。
ただ残念なことに、何度も読むにはこの人の作品はドライなんだよなー。
もう少しわたし向きに甘さがあってくれれば再読するかもしれないのだが。
しかし甘い佐藤亜紀なんて佐藤亜紀じゃなかろう。ジレンマ。
禁酒法時代とジャズの黎明期とをからめて(これが同時代なのかは知らない)、
退廃的でノワールな世界をかっちり書くのだろう。
――と思ったら舞台はドイツ。しかも第二次世界戦争中、ナチ政権下のドイツ。
ジャズ好きの富裕層の不良少年のシニカルな視点で周囲を描く。
そう、こういうものを読みたかった。
人生を通じて、ナチの悪行はずいぶん見聞きする機会はあったけれども、
その向こうにいたはずのその頃のドイツの普通の人の話はなかなか出て来ない。
その部分に本なりなんなりで接触するのは、そもそも嫌いなジャンルの話なので
気が向かない。
この話も上手かったですね。佐藤亜紀。さすがだと思うわー。
バランスがね。絶妙でね。
戦時中の国内向けのナチの姿。同年代から見たユーゲントのメンバーの言動。
BBCのラジオをほとんど公然の秘密として聞いている人々。
ジャズに熱狂する若者たち。
軍需産業で富を築きつつ、ナチには内心で反発している父親。
そのおかげで裕福な生活をしつつ、乱痴気パーティを開き、闇でレコードを売り、
捕まって拷問を受け、表面は官憲に従ったふりをしつつ、徹頭徹尾
シニカルな視点で物事を見ているハンブルクの少年。
ハンブルクが爆撃を受けた時でさえも――
多くの人がぐちゃぐちゃになって死んでいき、
両親がそれほどぐちゃぐちゃではなく死んでしまい、
それでもナチには従順を装い、工場をじわりじわりと再建する。
その全く変わらない姿勢が逆に登場人物としては不自然ではあるんだけど。
何があってもあまり動揺しないからね。ただ一人称でナレーターだから、
その冷静な語り口が最後まで続くのが好ましい。
チャラついた口調で書かれてはいるけれど、父や母へのどうしようもない愛憎とか、友人たちへの情とか、若者らしい傲慢さとか、ジャズとそれに付随する享楽とか、
――戦争と感情生活と行動のミルフィーユが見事。
上手く書く。ほんとに。
それに加えて文章も上手いよね。
上手いと感じる文章なんて希少なのでありがたいなあ。
もう少し書いて欲しいものだが。
ただ残念なことに、何度も読むにはこの人の作品はドライなんだよなー。
もう少しわたし向きに甘さがあってくれれば再読するかもしれないのだが。
しかし甘い佐藤亜紀なんて佐藤亜紀じゃなかろう。ジレンマ。
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