プラムフィールズ27番地。

本・映画・美術・仙台89ers・フィギュアスケートについての四方山話。

◇ 万城目学「ヒトコブラクダ層ゼット」

2024年10月26日 | ◇読んだ本の感想。
万城目学は8年前にそれまでの出版はたしか全部読んで、ひとまず終了。
課題図書リストの順番が回ってきたらまた読もう。

で、今回課題図書リストの順番がきた。
「バベル九朔」「パーマネント神喜劇」「べらぼうくん」と読んで来て、
本作が(わたしが再会した後の)4冊目。

相変わらず訳の分からない話を書きますね。←褒めてる。
初期の数作――「鴨川ホルモー」「鹿男あをによし」「偉大なるしゅららぼん」の系譜。
ドタバタ幻想というか、シュールファンタジーというか。
ここら辺を読んでいた頃は、ずっとこの方向で行くんだろうなあと思っていたが、
久々に読んだ「バベル九朔」は、万城目学らしからぬ若干重苦しさのある長編。
おや?芸風変わった?と思っていた。


本作は久々にザ・万城目学というドタバタ幻想。
しかし前は舞台が京都・奈良・滋賀という近所(?)だったのに対して、
今回はなんと古代メソポタミアですからね!時間的にも空間的にも遠距離。
いや、古代メソポタミアを舞台にした小説なんてめったにないからありがたい。

まあ、古代都市をまるで見てきたかのように書けたかというと、
そこまでではなかったが……。もう少し描写力が欲しいと思わないではなかった。
とはいえ、それは相当に求めすぎだと思うから、最初に古代メソポタミアの町の想像図
なんかを一枚ぺらっと入れていただけるとありがたかった。

なんだったら装丁に組み入れてくれても良かった。
かろうじて復元ジグラットは何かで写真を見たことがあるけど、街並みなんかは全然。
――でもこのタイトルから突然古代メソポタミアへ話が飛ぶ意外性も魅力の一つかと
思うから、ネタバレになる装丁はダメかなあ。


長い話。単行本上下巻合計900ページ超。
これ10時間じゃきかないか。12時間くらいかかっただろうか。
苦労して描写をがんばっているのはわかったが、もう少し短くても良かった。
その解決としてやはり図版を……あ、見返しに印刷というのが一番オシャレだったかもね?

展開が全然読めなくて、まったく脈絡なくコロコロと話が展開していくので、
「え、そっち?そっち?」と10回くらい意外な方向に引っ張られた。
ここの部分は面白かった。

そして最後はまあまあめでたしめでたし。
爽快感は別にないけど、ほのぼのとした終わり方。
こういう話がいいよね。遠くまでひっぱっていって、楽しませてくれて、軟着陸してくれる。
ただ大団円は、複雑化した話をひたすら解説していく部分ではあるので、
楽しく読めはしたけど小説としての旨味は減じる。とはキビシすぎか。


万城目学にはこれからもこういうフィクションの愉しみを味わわせて欲しいと思うよ。
広げるだけ広げた風呂敷を苦労して畳む。
面白く膨らますのも才能だから、ここで勝負してほしい。
凡百が真似してもほとんどが失敗するだろう。



ところで、昔からの疑問なんですが。
双子の人や三つ子の人って、兄弟順にかなりこだわりますか?
わたし自身は双子ではない。昔、知りあいに双子が2組いて、
片方はお姉ちゃんと妹が厳然と決まっていて、妹は「お姉ちゃん」と呼んでいた。
もう一組の方は長幼の意識はあまりなかったように見えた。

youtubeで見る、体操やってる三つ子の人たちは長男次男三男といつも言ってるんだよね。
そして本作の主人公たちは長幼の順を峻別している。
一緒に生まれたのに、兄、弟って意識になるのかなあといつも不思議なのよね。

まあこの小説の場合は長男、次男、三男っていうのが必須だと思うが。
というより、別に年子の三兄弟でも良かったくらいだよね。
これだけ長幼の順にこだわるんだからさ。

ただ、三つ子じゃないと、梵天・梵地・梵人というネーミングにはならないでしょうね。
しかも梵天・梵人はまあなんとかだが、梵地という名前は無理を感じるが……
まあヨイ。



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