こないだ初門前典之作品として「屍の命題」を読んだ。
バカミスと聞きつつ読んでみたけどなかなか面白くて、
2冊目の本作も期待していたのだが、……これはあかんなあ。いけません。
「屍の命題」は自費出版したものが後に通常出版されたようなんだよね。
そして本作は鮎川哲也賞受賞作品。一応こちらがデビュー作であるのだと思う。
そしたらねー、前作の欠点が拡大していた。
前作も物々しさ、大げさぶり、書きすぎ、やりすぎが欠点だったんだけど、
それでもかろうじて面白さが上回っていたんだよ。
だんだん書き慣れて欠点は修正されるだろうし、あとは上がり目だと思ってたのだが……
とにかくやりすぎなのよ。
蘊蓄を書きこむタイプのミステリは多いし、それで面白くなってる作品も
(わずかながら)あるけど、この作品の蘊蓄は建築――というよりも建設業、
建築資材についての細部なので、さすがにそのジャンルに興味が持てる層は
かなり限られると思う。
建築に興味がある人は多いからまあ10人に1人は面白く読むとしても、
これは「建築」の話ではなくて、現場の話、材料の話。
100人に1人も面白くは読めないんではないか。
それをずらずらと羅列しているだけなので、序盤の蘊蓄で読むのが嫌になるもんね。
でもこのあたりのことがトリックに大事になってくるんだろうね?と思って
なるべく読んだが、……最終的にトリックは割とヒドイというか、無理というか、
ええ~って感じなんだもの。
延々と読まされた蘊蓄部分はものすごく深く関わってはいるが、
トリックがあれだともうそこまで読んできたことがまったくの徒労に感じてなあ。
あかんよ。このありえなさは。
ストーリーが無理くりなのよね。
とにかくメインキャストが4人いるうち、主役は従兄弟の家に泊まりに来ている30近い
男の人、という設定なんだけど、ここの設定がまずいー。
なんでこうしたか、しみじみ疑問。
遠い別な県に住んでいて、お盆休みを2週間とって名古屋の親戚の家に居候して、
殺人事件に巻き込まれ、未解決のまま帰らざるをえず、
解決篇はまた名古屋まで来て参加する。
一つ一つは「ちょっと無理がある」程度でもそれが10も20も重なると
それは「絶対無理」「あり得ない」に移行するわけで。
何でもう少しなだらかな設定にしないのか疑問。
別に名古屋在住ののらくら大学生でいいわけじゃん?うどん屋の。
つまり高校生の裕一をもう少しだけ年上にして主人公にすれば
キャラクターは一人要らないんだよね。
それだけで不自然さは20%くらい減ると思う。
うどん屋さんが、ハワイ?に2週間旅行に行くために店を締めるのも
けっこうだと思うが、それに夏休み中の高校生の息子を連れてかないのも謎。
監督として呼ばれたわけでもないような主人公も、有給を取りながら
2週間のらくらして謎。「他の社員はお盆4日間を休むのがやっとなのに、
お情けで父の会社に入れてもらったダメ社員の自分は2週間の有給をあっさり
許可された」……ダメな身内だからこそ、そんなところを締めなきゃ
他の社員の不満が爆発する気がするけど。
会社員が2週間休むのは相当なことですよ。それなのに親戚の家で、
暑い暑い言いながら本を読んだり昼寝したりしているだけなんて……
蘊蓄部分を高校生の裕一にぺらぺら喋らせたりするくらいなら、
主人公を建築科の学生にしてバイトをしてたって設定にすればいいのに。
その方が受験生にバイトさせるよりだいぶ自然。
そんな不自然さがいろいろいろいろある。ありすぎる。
この状態で鮎川哲也賞を取らせるのはいいけど、刊行する際には
もっともっともっと手を入れて仕上げて来て欲しいですよ。
蘊蓄部分はもっと削った方が絶対いいし、キャラクターの整理とか、
クライマックスの書き方とか、ほぼ9割、書き直した方がいい。
解決編もつっまんないんですよね~!
はっきりいって犯人があの人ってのはまったくもってつまんないし、
クライマックスも書き方が味も素っ気もないしせいで全然盛り上がらないし、
実行部分には絶対無理があるし、
動機部分も全然納得出来ないし。
ほんとに欠点ばかりの小説です。
だがそれを補って余りある……いや、余りはないわけだが、
数々の欠点を若干救うかもしれない点は、その本格っぽさ。
これだけ物々しい話なら、小説としてはイマイチでも、ミステリとして
最後にウルトラCを決めてくれるのではないか?と期待してしまう。
しかし本作においてはトリックはバカミスでしたな。絶対無理がある。
というより、――見 て 気 づ く だ ろ う 。
というわけで最後まで読み終わっても全然満足感はない。
特に最後一行で明かされるダイイングメッセージの謎解きは、
ほんとバカバカしいからね。バカバカしいというより率直にバカです。
ここまで口をきわめて罵って、ではもう読まないかというと、実は読みます。
この人はねー、編集がしっかり仕事をしてくれて、書き方を覚えれば
面白くなりそうな気がするのよー。あと一息……いいや、三息くらいはかかるだろうが。
現状をたとえていえば、新鮮で美味しそうな野菜や肉、魚の材料を山ほど用意して、
どれだけ美味しいものを食べさせてくれるんだろうと期待させといて、
料理と盛り付けが壊滅的に下手、という残念なレストランみたい。
野菜は茹ですぎ、肉は焦げ付かせてしかもそれをゴロンと皿に転がしただけで提供する。
そんな料理を出しちゃダメだろう!といいたいが、だからこそ、
普通の料理の仕方、普通の盛り付け方を覚えればそこそこイケるものになる
可能性があると思うんだよね。
元が元だから星付きレストランには絶対にならないだろうが、いい材料を使ってる分、
普通のレストランになるハードルは低いのではないかと。
というわけで次も読んでみますよ。
次がこのレベルならさすがに見放す。まあこれは20年前の作品だし、
時代的なギャップもあるだろうしね。
三度目の正直!頼むぞ!
バカミスと聞きつつ読んでみたけどなかなか面白くて、
2冊目の本作も期待していたのだが、……これはあかんなあ。いけません。
「屍の命題」は自費出版したものが後に通常出版されたようなんだよね。
そして本作は鮎川哲也賞受賞作品。一応こちらがデビュー作であるのだと思う。
そしたらねー、前作の欠点が拡大していた。
前作も物々しさ、大げさぶり、書きすぎ、やりすぎが欠点だったんだけど、
それでもかろうじて面白さが上回っていたんだよ。
だんだん書き慣れて欠点は修正されるだろうし、あとは上がり目だと思ってたのだが……
とにかくやりすぎなのよ。
蘊蓄を書きこむタイプのミステリは多いし、それで面白くなってる作品も
(わずかながら)あるけど、この作品の蘊蓄は建築――というよりも建設業、
建築資材についての細部なので、さすがにそのジャンルに興味が持てる層は
かなり限られると思う。
建築に興味がある人は多いからまあ10人に1人は面白く読むとしても、
これは「建築」の話ではなくて、現場の話、材料の話。
100人に1人も面白くは読めないんではないか。
それをずらずらと羅列しているだけなので、序盤の蘊蓄で読むのが嫌になるもんね。
でもこのあたりのことがトリックに大事になってくるんだろうね?と思って
なるべく読んだが、……最終的にトリックは割とヒドイというか、無理というか、
ええ~って感じなんだもの。
延々と読まされた蘊蓄部分はものすごく深く関わってはいるが、
トリックがあれだともうそこまで読んできたことがまったくの徒労に感じてなあ。
あかんよ。このありえなさは。
ストーリーが無理くりなのよね。
とにかくメインキャストが4人いるうち、主役は従兄弟の家に泊まりに来ている30近い
男の人、という設定なんだけど、ここの設定がまずいー。
なんでこうしたか、しみじみ疑問。
遠い別な県に住んでいて、お盆休みを2週間とって名古屋の親戚の家に居候して、
殺人事件に巻き込まれ、未解決のまま帰らざるをえず、
解決篇はまた名古屋まで来て参加する。
一つ一つは「ちょっと無理がある」程度でもそれが10も20も重なると
それは「絶対無理」「あり得ない」に移行するわけで。
何でもう少しなだらかな設定にしないのか疑問。
別に名古屋在住ののらくら大学生でいいわけじゃん?うどん屋の。
つまり高校生の裕一をもう少しだけ年上にして主人公にすれば
キャラクターは一人要らないんだよね。
それだけで不自然さは20%くらい減ると思う。
うどん屋さんが、ハワイ?に2週間旅行に行くために店を締めるのも
けっこうだと思うが、それに夏休み中の高校生の息子を連れてかないのも謎。
監督として呼ばれたわけでもないような主人公も、有給を取りながら
2週間のらくらして謎。「他の社員はお盆4日間を休むのがやっとなのに、
お情けで父の会社に入れてもらったダメ社員の自分は2週間の有給をあっさり
許可された」……ダメな身内だからこそ、そんなところを締めなきゃ
他の社員の不満が爆発する気がするけど。
会社員が2週間休むのは相当なことですよ。それなのに親戚の家で、
暑い暑い言いながら本を読んだり昼寝したりしているだけなんて……
蘊蓄部分を高校生の裕一にぺらぺら喋らせたりするくらいなら、
主人公を建築科の学生にしてバイトをしてたって設定にすればいいのに。
その方が受験生にバイトさせるよりだいぶ自然。
そんな不自然さがいろいろいろいろある。ありすぎる。
この状態で鮎川哲也賞を取らせるのはいいけど、刊行する際には
もっともっともっと手を入れて仕上げて来て欲しいですよ。
蘊蓄部分はもっと削った方が絶対いいし、キャラクターの整理とか、
クライマックスの書き方とか、ほぼ9割、書き直した方がいい。
解決編もつっまんないんですよね~!
はっきりいって犯人があの人ってのはまったくもってつまんないし、
クライマックスも書き方が味も素っ気もないしせいで全然盛り上がらないし、
実行部分には絶対無理があるし、
動機部分も全然納得出来ないし。
ほんとに欠点ばかりの小説です。
だがそれを補って余りある……いや、余りはないわけだが、
数々の欠点を若干救うかもしれない点は、その本格っぽさ。
これだけ物々しい話なら、小説としてはイマイチでも、ミステリとして
最後にウルトラCを決めてくれるのではないか?と期待してしまう。
しかし本作においてはトリックはバカミスでしたな。絶対無理がある。
というより、――見 て 気 づ く だ ろ う 。
というわけで最後まで読み終わっても全然満足感はない。
特に最後一行で明かされるダイイングメッセージの謎解きは、
ほんとバカバカしいからね。バカバカしいというより率直にバカです。
ここまで口をきわめて罵って、ではもう読まないかというと、実は読みます。
この人はねー、編集がしっかり仕事をしてくれて、書き方を覚えれば
面白くなりそうな気がするのよー。あと一息……いいや、三息くらいはかかるだろうが。
現状をたとえていえば、新鮮で美味しそうな野菜や肉、魚の材料を山ほど用意して、
どれだけ美味しいものを食べさせてくれるんだろうと期待させといて、
料理と盛り付けが壊滅的に下手、という残念なレストランみたい。
野菜は茹ですぎ、肉は焦げ付かせてしかもそれをゴロンと皿に転がしただけで提供する。
そんな料理を出しちゃダメだろう!といいたいが、だからこそ、
普通の料理の仕方、普通の盛り付け方を覚えればそこそこイケるものになる
可能性があると思うんだよね。
元が元だから星付きレストランには絶対にならないだろうが、いい材料を使ってる分、
普通のレストランになるハードルは低いのではないかと。
というわけで次も読んでみますよ。
次がこのレベルならさすがに見放す。まあこれは20年前の作品だし、
時代的なギャップもあるだろうしね。
三度目の正直!頼むぞ!
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