たしかネット記事で川端康成の「雪国」のオマージュ作品だと言われていたから
気が向いて読んでみたんだよなあ……。
よく覚えてないけど、一個人のブログとかではなくて、書評家のブログか、
インタビュー記事だったような記憶がある。
そして読んでみたらナンデスカ?どこが「雪国」のオマージュ?
わざわざこの本の前に川端康成の「雪国」を(初めて)読むという
手間をかけたんだから、全然オマージュではない時点で印象が悪くなることは
避けられないのだが。
まあその点はこっちの都合ということでしょうがない。
それは置いておいても、かなりパチモンな臭いのする作品だった。
ちょっと変わった構成の小説。
まず短編が3つ。雪国という民宿を舞台にした連作短編。
これが……ネタバレは気の毒なのでだいぶぼかして言うが、
1話目はどんでんメインのストーリーで。
どんでん返しは、そのどんでんが鮮やかに決まらなければ魅力は半減以下になる。
そしてわたしは、どんでん部分でたしかに驚かされたけど、
その一時の驚きが醒めたら「……無理なくない?」と思った。
そう思ってしまえばどんでんは機能しない。白ける一方。
1冊読み終わってから、この作者がバイオレンス売りの作家だと知ったのだが、
1話目のあの展開は無理があるよなあ。まあ詳しくはいうまい。
いうとほんとに読むとこなくなる。
2話目と3話目は伏線。2話目は浅いとは思うけどLGBTQの話、これはまあいい。
面白くはないけど、一応短編。
3話目は独立した短編としては読めない話で、何を思ったか松本智津夫まで
引っ張り出して来る。
そこまでが本作の前半部。
後半部は、2話に出て来たルポライターが突き止めた
民宿雪国の主人・丹生雄武郎の真実の姿、という体裁になっている。
丹生雄武郎は覆面画家として何百億円という価格の絵を描きつつ、
そのことを誰にも知らせずにぼろぼろの古びた民宿、雪国の主人として
世を過ごして来たんだって。しかしさらに実は真実の姿は……
まあ真実の姿については前半部に書いてあるわけですが。
だから後半部は読者がみんな知っていることを、改めて解説していく形。
後半部で驚かすならいいけど、驚きは前半部で全部終わってるんだよなあ。
――この後半のノンフィクション体裁の部分が読んでいて苦労した。
あまりにも陳腐すぎて。
ノンフィクションの中で丹生雄武郎の絵の凄さを書こうとしているんだけど、
薄っぺらくて全然納得出来ない。
識者に愛好され、老若男女に熱狂され、価格は何百億円もして。国民的画家。
それほど天井知らずに賛美するのなら、そのはるか手前に雄武郎の人格が
なければならないのだけど、そこまで雄武郎が深く描かれてるとは思えない。
まさかこれはノンフィクションの戯画化か?とまで思ったけど、
このノンフィクションを描いたライターが2話目の視点人物なんだよね。
そこから考えると、戯画化するとは考えにくい。
つまりこのノンフィクション部分は大真面目なんだろう。疑問すぎる。
またこの他に、実在の人物の存在を多用するのが大変不快だった。
全体の10分の1くらいが実在の有名人の叙述(本筋には関係ない)に
占められているのではないかと思った。ちょっと大げさだが。
田中角栄の名前を出したり、新潟3区から出馬した作家N(推定・野坂昭如)を
喋らせたり、ユーミンの名前をちらっと出したり、
当時日本でノーベル賞にいちばん近い作家と言われたK・A(誰?)と
日本人音楽家のR・S(推定・坂本龍一)とで
丹生雄武郎の絵の素晴らしさについての架空の対談を書いたり。
いや、反応しているわたし自身が作者に一番踊らされている気はするが、
わたし、こういうのヤなんだよねえ。有名人のことをちらっと書いて、
お手軽にアクセントをつけようというのは。
時代物にちょっとだけ登場する歴史的人物にしても、
こういう小説で意味なく出される有名人にしても、
単にアクセサリー的に使っているだけで、とても浅薄だと感じる。
ノンフィクションの陳腐さと有名人を多用する浅薄さで、
最終的には全く感銘を受けずに読み終わった。
この作品はこの作者の中では穏やかな方で、真髄はバイオレンスにあるようだが、
わたしはそっちの方向には全く興味がないし、2冊目は不要である。
気が向いて読んでみたんだよなあ……。
よく覚えてないけど、一個人のブログとかではなくて、書評家のブログか、
インタビュー記事だったような記憶がある。
そして読んでみたらナンデスカ?どこが「雪国」のオマージュ?
わざわざこの本の前に川端康成の「雪国」を(初めて)読むという
手間をかけたんだから、全然オマージュではない時点で印象が悪くなることは
避けられないのだが。
まあその点はこっちの都合ということでしょうがない。
それは置いておいても、かなりパチモンな臭いのする作品だった。
ちょっと変わった構成の小説。
まず短編が3つ。雪国という民宿を舞台にした連作短編。
これが……ネタバレは気の毒なのでだいぶぼかして言うが、
1話目はどんでんメインのストーリーで。
どんでん返しは、そのどんでんが鮮やかに決まらなければ魅力は半減以下になる。
そしてわたしは、どんでん部分でたしかに驚かされたけど、
その一時の驚きが醒めたら「……無理なくない?」と思った。
そう思ってしまえばどんでんは機能しない。白ける一方。
1冊読み終わってから、この作者がバイオレンス売りの作家だと知ったのだが、
1話目のあの展開は無理があるよなあ。まあ詳しくはいうまい。
いうとほんとに読むとこなくなる。
2話目と3話目は伏線。2話目は浅いとは思うけどLGBTQの話、これはまあいい。
面白くはないけど、一応短編。
3話目は独立した短編としては読めない話で、何を思ったか松本智津夫まで
引っ張り出して来る。
そこまでが本作の前半部。
後半部は、2話に出て来たルポライターが突き止めた
民宿雪国の主人・丹生雄武郎の真実の姿、という体裁になっている。
丹生雄武郎は覆面画家として何百億円という価格の絵を描きつつ、
そのことを誰にも知らせずにぼろぼろの古びた民宿、雪国の主人として
世を過ごして来たんだって。しかしさらに実は真実の姿は……
まあ真実の姿については前半部に書いてあるわけですが。
だから後半部は読者がみんな知っていることを、改めて解説していく形。
後半部で驚かすならいいけど、驚きは前半部で全部終わってるんだよなあ。
――この後半のノンフィクション体裁の部分が読んでいて苦労した。
あまりにも陳腐すぎて。
ノンフィクションの中で丹生雄武郎の絵の凄さを書こうとしているんだけど、
薄っぺらくて全然納得出来ない。
識者に愛好され、老若男女に熱狂され、価格は何百億円もして。国民的画家。
それほど天井知らずに賛美するのなら、そのはるか手前に雄武郎の人格が
なければならないのだけど、そこまで雄武郎が深く描かれてるとは思えない。
まさかこれはノンフィクションの戯画化か?とまで思ったけど、
このノンフィクションを描いたライターが2話目の視点人物なんだよね。
そこから考えると、戯画化するとは考えにくい。
つまりこのノンフィクション部分は大真面目なんだろう。疑問すぎる。
またこの他に、実在の人物の存在を多用するのが大変不快だった。
全体の10分の1くらいが実在の有名人の叙述(本筋には関係ない)に
占められているのではないかと思った。ちょっと大げさだが。
田中角栄の名前を出したり、新潟3区から出馬した作家N(推定・野坂昭如)を
喋らせたり、ユーミンの名前をちらっと出したり、
当時日本でノーベル賞にいちばん近い作家と言われたK・A(誰?)と
日本人音楽家のR・S(推定・坂本龍一)とで
丹生雄武郎の絵の素晴らしさについての架空の対談を書いたり。
いや、反応しているわたし自身が作者に一番踊らされている気はするが、
わたし、こういうのヤなんだよねえ。有名人のことをちらっと書いて、
お手軽にアクセントをつけようというのは。
時代物にちょっとだけ登場する歴史的人物にしても、
こういう小説で意味なく出される有名人にしても、
単にアクセサリー的に使っているだけで、とても浅薄だと感じる。
ノンフィクションの陳腐さと有名人を多用する浅薄さで、
最終的には全く感銘を受けずに読み終わった。
この作品はこの作者の中では穏やかな方で、真髄はバイオレンスにあるようだが、
わたしはそっちの方向には全く興味がないし、2冊目は不要である。
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