一葉一楽

寺社百景

大雄寺 ー 地方小藩の菩提寺

2017-10-11 15:09:08 | 寺院
天正四年(1576)大関高増(大田原氏)が黒羽城築城時に、その南端に大関氏の菩提寺として大雄寺を移築、その典型的な曹洞宗伽藍配置は今も変わらない。
道元は「宇治観音導利院僧堂建立勧進之疏」(「建撕記」)で「寺院の最要は仏殿・法堂・僧堂なり」という。大雄寺では仏殿に法堂の機能を持たせ本堂とする。桁行十二間、梁間八間と大型で、菩提寺の本堂としての風格をもつ。前面に板敷の大縁と廂部の土間を備えた方丈とも言ってもよい形式である。装飾は全くなく大型の茅葺の民家の風である。廻廊の外にある経蔵のみが、その向拝に彩色され、雲紋と波紋が彫られているが。曹洞禅は不浄を嫌う。総門の左側廻廊には、烏枢沙摩明王を祀る。まさに曹洞宗の格地寺院としての要件を、全堂茅葺ではあるが備えている。
本堂・禅堂は江戸中期、総門・廻廊は江戸末期、庫裏は嘉永年間(1848-55)、経蔵は享保十七年(1732)の建立である(「月刊文化財」2017年8月)。これらは移築当時の伽藍を保持するための再建であろう、且つ現在まで維持されている。曹洞宗寺院としての、菩提寺また檀那寺としての機能を維持してきたことに強い意志を感ずる。


  総門

  経堂

廻廊・禅堂

  本堂

 庫裏

(注) 2017年9月撮影
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