八島ビジターセンター

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続 自然の力

2007年09月16日 | Weblog
明治神宮の森はほとんどが畑だった場所に植林され、約50年でほぼ自然の状態といえる立派な森林に育ったそうです。

霧ケ峰での50年。そんなことは可能でしょうか。霧ケ峰で草刈りが行われていたのは昭和30年代ころまでと言われています。草刈りをやめてから約50年たった今、霧ケ峰では森林化が問題となってきているものの、まだまだ草原景観が広がっていますよね。もちろん、霧ケ峰と東京では本来の植生も全然違いますし、植林の有無、樹種の違いもあります。しかし、自然に放置された状態でこれだけの長い間草原が維持されているというのはやはり驚きと言えるのではないでしょうか。

明治神宮の森と霧ケ峰の草原。両者の対照的な50年間の履歴は、暖温帯と亜高山帯の気候の違いを明確に示しています。そして、霧ケ峰の草原景観の持続性にとって非常に大切であり基本の一つとなっているのが、この亜高山帯の冷涼な気候なのです。

霧ケ峰の車山山頂で観測された年平均気温は2.5℃。この冷涼な気候の上、強風の影響もあって霧ケ峰では樹木の生長が遅かったり妨げられたりしています。火入れや採草といった過去の歴史だけでなく、それを持続させるだけの気候的条件も加わって現在に続く草原景観があるわけです。霧ケ峰の中でも標高が低く風衝の少ない池のくるみや沢渡などでは森林化の傾向が顕著なのも興味深いもの。もっといえば、本来の自然植生も亜高山帯の針葉樹林に覆われていただけでなく、落葉広葉樹の低木林や疎林、そして(おそらく高標高地では)風衝草地のような閑散とした景観が元々から広がっていたのかもしれません。

・・・ブログなのに話がだらだらと長くなってすみません。簡潔明瞭さが必要ですね(笑)。とにかく、私は明治神宮に行って普段見ている霧ケ峰の自然では考えられないような姿とその歴史にすっかり感心してしまったのです。環境の潜在的な力というのはその気候によって大きく違います。明治神宮の森が100年足らずであれだけ立派に育ったのは暖温帯の気候なくしては考えられません。

そして、世界には熱帯雨林からツンドラまで多種多様な自然環境が存在します。日本の多様な自然を垣間見ると、さらに未知に富む世界の自然はどんなものなのか、なんだかたくさん旅をしたくなる今日この頃です。


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