ウィーンに来た大きな目的は、取引先である「クラダ社」訪問であった。クラダ社は、ウィーン郊外のメードリンクの山の中にあって、予想していたより小さな(失礼!)工房でちょっと驚いたのだが、家族で、歓待してもらった。
「ウィーン工房」の流れをひくハゲナウワー社で修行したお父さんが、鋳物職人として1960年に独立して以来の創業なのだが、2人の息子が継いでいる。
オーストリアで、錫製品というのは、教会で使われる燭台や、聖水を入れる花瓶など教会グッズとして発展してきたのだが、「クラダ社」では、現代生活にマッチするステーショナリーや、フォトフレームなど制作している。作っている現場を見せてもらった。
錫は、融点が低く溶かしやすいのだが、鋳型に流して、プレスして、熱いうちに切削する。丸みを出したり、模様を入れえたり、磨いたりするのは、手仕事になる。職人さんの現場だ。
デザインから、制作、販売網の開拓まで、家族でやってしまえるところに強みがある。2人の息子の長男は、神学と中国学、次男は、教会音楽を学んだというインテリなのだが、親の仕事を継いでくれて、お父さんは、頼もしいことだろう。
会計を担当しているお母さんが、可愛らしい方なのだが、長男のロベルトが、お母さんに、コートを着せてあげたり、ケーキに付いているさくらんぼをあげたり優しく接するのには、ちょっとびっくりする。(2人の息子は、独身のようです。)
日本に長らく取引があり、2000年のミレニアムには、香港のクリスマスイベントに参加したというし、海外取引に熱心だ。海外見本市に出店というのは、出費もかさむのに、続けてきたというのは、チャレンジャーだってことですよね。
先見の明があるというか、やはりオープン・マインドということなのだろう。自分たちの商品に自信を持っているから、どこへでも出かけていく。
高台のレストランで、ランチをご馳走になって、おしゃべりしているうちに家族の中で、携帯を持っているのは、次男のローマンだけというのが判明した。長男のロベルトなんて、本当に牧師さんのように物腰が柔らかく穏やかなのだが、パソコンを使うのは、仕事の場だけで十分という。
堅実で、律儀で、誠実。彼らの生活信条が、仕事場を訪れてよく伝わってきた。そこには、仕事道具のヤスリがかけてあったが、十字架もあった。ここらあたりに、秘密があるのかもしれない。
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