難解なテーマも笑いながら学べる解説で定評がある倉山満先生をして、書くのが「難しかった」といわしめた一冊。世界での日本の立ち位置を一気に学べる国民国家(ネーション・ステート=国民主体の国家)論だ。
ドイツの歴史を奪い取ったフランス、民族弾圧で国民国家化を目指す中国、主権国家とすらいえない韓国、多彩な言語と捏造(ねつぞう)だらけの国史のロシア、「マニフェスト・デスティニー」という名の虐殺が国体のアメリカ、ヒトラーの民族主義に破壊されたドイツ、国民国家になる前に帝国化を始めたイギリスなど、各章で各国の暗黒史を暴露する。
日本人は知らないが、自国にとって都合よく書きかえるのが世界の「歴史」の常識。しかも、日本はヨーロッパが憧れた世界で最も理想的な国民国家なのだという。
「世界の大勢が国民国家に向かうのは、ここ数百年の現象にすぎない。人類がようやく日本に追い付いてきたのだ」(あとがきから)
国民国家とは、今ある国家体制のなかでは一番恵まれた体制であり、ヨーロッパ諸国の国民が苦労して獲得した歴史がある。しかし現代はその国民国家体制が、エスノセントリズム(国家解体)とグローバリズム(超国家統合)という2つの潮流から攻撃にさらされていると分析する。
つまり、私たちが当たり前にしていた幸福を失う可能性があるのだ。いま国民国家論が求められるゆえんである。
著者渾身(こんしん)の新しい定番ができたと自負している。(ビジネス社・1400円+税)
ビジネス社編集部 佐藤春生
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