VIVIEN住生活総研

住生活ジャーナリストVivienこと藤井繁子が、公私を交えて住まいや暮らしの情報をお届けします!

安藤忠雄の講演会

2007年05月29日 | 住宅業界
住友林業の部材・システム供給による住宅建築会社の集まりイノスグループ。
その年次総会がお台場のホテルで開催され、
全国から関係者が集まる今日の目玉は安藤忠雄氏の講演(スゴイ!)。
  

「街 夢を作る」という演題でオリンピック誘致の話から始まった。
  (石原知事は何の相談も無しにプロデューサーに指名したらしいが)
そのオリンピックが東京に決まる可能性と同じ位の‘微かな可能性’しか無かった若かりし日の安藤氏が
建築家という夢を目指した、と言いたかった為の前振りだった。
繰り返し強調されたが、社会的な後ろ盾や頼れる学友も無かった自分に出来る事は「挑戦する事」だったと。

「夢は自分の心にある」好奇心こそがその源であり、日本人ほど好奇心に満ちた国民は居ないとも。
ただ、40歳から男性と女性の文化レベルに格差が生じてドンドン乖離し、遂には“文化的熟年離婚”へ。
とユーモアたっぷりの実話で、会場のオジサン達に発破をかけた。

他、語録と要点を並べると

●意地でも大阪に事務所を置いている。「皆、気楽に東京へ出過ぎ」 
   (実は東大教授職を受ける際に、佐治敬三氏と約束したのも理由)
  
     かつて知人宅として建てた(写真上)ものを増築しながら事務所として使っている。
     安藤氏はその入口付近に席を設けている。
     8年ほど前、事務所へ迷い犬が。
     「名前をケンゾー・タンゲにしたかったがご存命で皆に反対され、コルビジェにした」
     安藤氏が大切だという“ユーモア”センスの一端。  
     (ウチはクレオパトラとエリザベス、イイトコ行ってる?)

●東大生とは判断力の無い人、決まったことしかしない。
     「そんな操縦士(官僚)の飛行機に日本人は乗っているんですよ」
    (自分で自分の将来を考えないとダメ)
●1969年、大阪駅前ビルプロジェクトに提案したスケッチ画を紹介。屋上庭園や美術館を最上階に提案。
    (先見性。これが採用されていたら、大阪の文化に花が咲いていたかも?)
●「最後は人物だ」・・・佐治氏が付き合って十年後に「お前は建築家なのか」と聞かれた
   (職業や地位でなく人を見てお付き合いされる偉人達の逸話なども紹介)
●「分相応に。分不相応な人や会社が多い」
    (自分の核が無くなっている証拠)
●‘美しい国’は、‘美しい自然’からなるもの。「建築の前に森を作る。」
    (瀬戸内オリーブ基金など植樹などに御尽力)

今回は住友林業関係者が対象という事もあって、
木造や森・環境のお話が盛り込まれていて“打ちっぱなし”だけでない氏の懐の深さも見せた。
 
「小中学校は全部木造で作ってます。」 
心のある、感性の豊かな子供を育てなければならないと
最後のスライドには“集まる”という言葉と共に、世界の子供達の笑顔で閉めた。

講演後は基金になる書籍販売&サイン会。私も‘Fujii Shigeko’と書いてもらってニッコリ     
   
テレビで見る安藤忠雄と、講演会場の壇上で見る安藤先生と、そして50cmの距離で対面した‘生(ナマ)’安藤が
あまりに同じであることに感動した。
有名人を生で見ると「テレビよりオーラを感じる」とか「思ったより気さく」とか何らかの意外性で楽しみなのだが、
安藤氏の場合誤差無しで思ったとおりの印象だった。

どんなメディアを通じてもストレートに伝わる信念、言葉、表現力がそうさせるのであろう。

私は安藤氏の住宅は好きで無いが、人間として大変に魅力を感じる。
その建築作品と社会に対する意志や伝えたい思いに共感し影響も受ける。

私も40代、安藤氏が言う分岐点。感性で楽しむ時間をもっと増やしてオヤジ化を防ぐぞ!!


コメントを投稿