和田浦海岸

家からは海は見えませんが、波が荒いときなどは、打ち寄せる波の音がきこえます。夏は潮風と蝉の声。

読書日記。

2008-08-25 | Weblog
注文してあった森銑三著「読書日記」が届いたので、パラパラとめくっておりました。日付がある日記なので、それならばと、はじめから丁寧に読む気がない私は、8月の日付の箇所を拾って読んでみました。

 市のなかの竝木のもとの朝顔のちひさき花に秋風ぞふく (都秋風。中西文子氏)

これは昭和13年8月24日の読書日記にあります。
「遠藤二郎氏より石榴会選歌集来る。和装本にて本文194頁あり。用紙にも特に意を用ひて簡素ながらもいと美し。」とあり、9首が引用され、そのはじめに引用してあった歌です。

もう一か所引用。

昭和9年8月30日。
「・・・漱石の『坊つちやん』を読んだ。
この小説はあまりに面白過ぎ、感じが明る過ぎ、狸や、赤シャツや、野だや、中學生などがあまりに滑稽的に扱はれ過ぎてゐて、作者の正義観の迫真を弱めてゐるのが惜しい。山嵐と坊つちやんとが赤シャツと野だとに加へた制裁が是認せられるなら、五・一五事件や血盟團事件の人々の行動も、一概に否定すべからざることになりはせぬであろうか、といふやうなことが考へられた。『坊つちやん』では、やはり清やが類型的でも一番自然に描かれてゐる。清やのところは、けふもまたほろりとさせられた。それにつけても漱石は立派な作家であつたと思ふ。」


いくらなんでも、事件と「坊っちゃん」とを結びつけるのはどうも
いただけないなあ、と思ったのですが
年譜としてみれば、血盟團事件と五・一五事件とは、
ともに昭和7(1932)年の2~3月と5月とにあったのでした。
その記憶が生々しく残っていれば、その結ぶつきは、
不自然じゃないところの連想なのかもしれませんね。
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大学院生物語。

2008-08-25 | Weblog
雑誌「WiLL」10月号がポストに届いておりました。
堤堯氏の連載「ある編集者のオデッセイ 文芸春秋とともに」は、
今回も池島信平氏について書いていたので、まずはそれを読みました。
池島氏からこう語られたそうです。
「いいか、堤。重いことを重く書くのは誰でも出来る。
 それを軽く書くのが大事なんだ。
 文章は軽ければ軽いほどいいんだよ。 」

もちろん。軽い内容を軽く書けとは言ってないわけです。


bk1のブックレビューで、初書評の「ぜのばす」さんの文に惹かれて、
伊良林正哉著「大学院生物語」(文芸社)を読んでみました。
書きたいことがあり、書いたのだという意味合いの本。
タイムリーな手ごたえの本が出たのだという読後感がありました。
この頃めずらしく、薦めたくなる人の顔が浮かんできたりしました。
軽く書いて小説仕立てなのですが、大学院生の生態を
軽々と眼前に浮かび上がらせてくれるエッセイとして読みました。
コメント (7)
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