吉田光邦の「茶の湯十二章」(「吉田光邦評論集Ⅱ」思文閣出版)に
お正月の茶の湯について言及されている箇所がありました(p140)。
すっかり忘れていたのですが、その関連で思い浮かんだのは
当ブログの2022年1月22日「福汲む、水汲む、宝汲む」でした。
ということで、吉田光邦の「茶の湯十二章」と
「岡野弘彦インタビュー集」(本阿弥書店・2020年)。
ここは、神主を継ぐ家に生まれた、岡野弘彦氏の語りから。
岡野】 小学校で僕はわりあい歌と縁ができるようになりましてね。
お正月は、子どもなりにきちんと着物を着せられて、
白木の桶に若水を汲みに行くんです。
『 今朝汲む水は福汲む、水汲む、宝汲む。命長くの水を汲むかな 』
と三遍唱えて、切麻(きりぬさ)と御饌米(おせんまい)を
川の神様に撒いて、白木の新しい桶でスゥーッと
上流に向かって水を汲むわけです。
うちへ帰ってきて、それを母親に渡すと、
母親はすぐに茶釜でお湯を沸かして福茶にする。
残りは硯で、書き初めの水にしたりするわけです。
それを五つのときからさせられました。・・・ 」(p20)
はい。それでは、吉田光邦氏の「茶の湯十二章」から
正月と出てくる箇所。
「そして正月は、古代的な日本の神々がいっせいに、
わたしどもの回りに復活する季節である。
ちかごろ都会ではあまり見られなくなったが、
門松、しめ縄などの飾りは、どれも農耕民族として生きてきた
日本人のなかに、しぜんに存在することになった古代の神々の
シンボルにほかならぬ。
一年のはじめに神々をよびむかえ、神秘の空気をつくりだすことは、
生活のたいせつなデザインだったのである。
そこで礼式、生活のデザインとしての茶の湯も敏感に、そうした
正月の神秘の空気を反映する。神々をむかえる礼式が演出される。
若水を汲んで茶を点てることは、永遠の若さを求め、
復活の願いをこめる礼である。・・・・・・ 」(p140)
「 やがて新年の茶会、初釜の日がくる。新しい一年に
ふみだす新鮮な時間を自分のうちに自覚せねばならぬ日だ。 」(p141)
はい。2022年には、岡野弘彦氏の語りを読めた。
2023年の暮れには、吉田光邦氏の文を読んでる。