和田浦海岸

家からは海は見えませんが、波が荒いときなどは、打ち寄せる波の音がきこえます。夏は潮風と蝉の声。

新鮮な時間を読む。

2023-12-12 | 重ね読み
吉田光邦の「茶の湯十二章」(「吉田光邦評論集Ⅱ」思文閣出版)に
お正月の茶の湯について言及されている箇所がありました(p140)。

すっかり忘れていたのですが、その関連で思い浮かんだのは
当ブログの2022年1月22日「福汲む、水汲む、宝汲む」でした。

ということで、吉田光邦の「茶の湯十二章」と
「岡野弘彦インタビュー集」(本阿弥書店・2020年)。

ここは、神主を継ぐ家に生まれた、岡野弘彦氏の語りから。

岡野】 小学校で僕はわりあい歌と縁ができるようになりましてね。
   お正月は、子どもなりにきちんと着物を着せられて、
   白木の桶に若水を汲みに行くんです。

 『 今朝汲む水は福汲む、水汲む、宝汲む。命長くの水を汲むかな 』

   と三遍唱えて、切麻(きりぬさ)と御饌米(おせんまい)を
   川の神様に撒いて、白木の新しい桶でスゥーッと
   上流に向かって水を汲むわけです。

   うちへ帰ってきて、それを母親に渡すと、
   母親はすぐに茶釜でお湯を沸かして福茶にする。

   残りは硯で、書き初めの水にしたりするわけです。
   それを五つのときからさせられました。・・・   」(p20)


はい。それでは、吉田光邦氏の「茶の湯十二章」から
正月と出てくる箇所。

「そして正月は、古代的な日本の神々がいっせいに、
 わたしどもの回りに復活する季節である。

 ちかごろ都会ではあまり見られなくなったが、
 門松、しめ縄などの飾りは、どれも農耕民族として生きてきた
 日本人のなかに、しぜんに存在することになった古代の神々の
 シンボルにほかならぬ。

 一年のはじめに神々をよびむかえ、神秘の空気をつくりだすことは、
 生活のたいせつなデザインだったのである。

 そこで礼式、生活のデザインとしての茶の湯も敏感に、そうした
 正月の神秘の空気を反映する。神々をむかえる礼式が演出される。

 若水を汲んで茶を点てることは、永遠の若さを求め、
 復活の願いをこめる礼である。・・・・・・    」(p140)

「 やがて新年の茶会、初釜の日がくる。新しい一年に
  ふみだす新鮮な時間を自分のうちに自覚せねばならぬ日だ。 」(p141)


はい。2022年には、岡野弘彦氏の語りを読めた。
2023年の暮れには、吉田光邦氏の文を読んでる。
コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする