破れかぶれでタクシーに乗ったら、
運転手さんが、缶コーヒーをくれた。
まだすこし温かかった。
ブラックが欲しかったのに、
間違ってお砂糖入りを買ってしまったっぽい。
私もブラックじゃなきゃイヤなんだけど、
その時は飲もうと思えた。
「今タイムリーにものすごくブルーで。
知らない人があったかいコーヒーくれてなんかウレシイ」
と言ったら、
運転手さんが
「フラレちゃったんですかい?」と
関西弁ではない発音で言った。
全然フラれたとかそーいうのではないんだけども。
悲しさという概念では、
失恋をも凌いでいるような。。。
いちいち説明することもないし
「失恋以上ですね」
と返事。
そしたら。
おっちゃん、無視!!
いや、全然無視オーライやねんけどさ。
振るだけ振っといて無視かぃ
とちょっとウケたけど、
そのまま何分も黙って窓の外みてボーとしてた。
自宅前に着いて降りようとしたら
運転手さんが急に前を向いたままで、
「あの、あのッ!
・・・・・。
・・・いいいいいことまたありマスから。」
と噛み噛みで言わはった。
ビックリした・・・
おっちゃん、長いことタメはったなぁ
高倉健リスペクトかとさえ思われる不器用っぷり!
結局もらったコーヒーはやっぱり私には甘すぎて
半分も飲めなかったんやけど、
ちょっとうれしかった。
男は黙って缶コーヒー!