映画「ヒットマン」を映画館で観てきました。
映画「ヒットマン」は名匠リチャードリンクレイター監督の新作で、「恋するプリテンダー」「ツイスターズ」と主演作が続くグレンパウエルが「ヒットマン」を演じる。ヒットマンとは日本流では殺し屋だ。警察のおとり調査でグレンパウエルは殺し屋のふりをして殺しの依頼人を罠にはめて逮捕に導く。
自分と同世代のリチャードクリエンター監督は「スクールズオブロック」「6歳のボクが、大人になるまで。」が最も有名だが、自分のベスト100に3作もある。正直言って作品全部が好きなわけではない。イマイチで次回に期待だなと思ってしまうこともある。俳優ストも明けようやくアメリカ映画らしいラインナップが揃った中で新作を楽しみにしていた。
ニューオーリンズで2匹の猫と静かに暮らすゲイリー・ジョンソン(グレン・パウエル)は、大学で心理学と哲学を教える傍ら、地元警察に技術スタッフとして協力していた。おとり捜査の警官が職務停止となり、ゲイリーが急遽代わりを務める。依頼者と面談して、具体的な殺害依頼を口頭で受けた時、やり取りを聞いていて待機していた警察が逮捕するパターンだ。ゲイリーは相手に合わせて変装をして接触する。意外な才能を発揮し相手を信用させて次々と依頼者を逮捕へ導く。
夫殺しを依頼してきた女性・マディソン(アドリア・アルホナ)は魅力的な女性であった。殺し屋ロンに扮して彼女に接触して事情を聞くうちに、逮捕するはずの相手に対し「この金で家を出て新しい人生を手に入れろ」と見逃す。その後意気投合した2人は会うようになる。マディソンはゲイリーを殺し屋と信じて付き合うのだ。
これは抜群におもしろい!
リチャード・リンクレイター監督らしくユーモアをたっぷり混ぜながら、ビリーワイルダーの「深夜の告白」を連想する夫殺しを目論む美女を映画に放つ。フィルムノワールの要素も持たせるのもいい感じだ。セクシーな美女を登場させて往年のブライアン・デ・パルマ作品のようなエロチックサスペンスのムードも少しだす。
事前情報は少なく観た。最初は怖い男がぐだぐだ話すのを観ている時は何が何だか分からず、一体どうなるんだろうと思った。男たちの正体とストーリーの主旨がわかってからは頭にすんなり入っていける展開だ。主演作が続き絶好調のグレンパウエルがニセの殺し屋になりきって、「琴姫七変化」のようにいくつもの雰囲気を変えて登場する。Netflix「地面師たち」を観て身近に殺し屋っているんだなと感じたばかりで、世の中には裏社会でなくても殺し屋に頼む人って実際にいるんだなと感じる。
⒈巧みなストーリー展開と女への深入り
この映画ではリチャード・リンクレイターと並んでグレンパウエルも脚本にクレジットがある。映画の脚本を書くのに実際の事件報告書をじっくりと読んだらしい。わかったことも多いだろう。映画の中盤にかけていくつもの短い具体例をピックアップする。殺しの依頼主との数多くの出会いの後で美人の人妻マディソン(アドリア・アルホナ)と出会う。夫にムカついている。ゲイリーはバツイチの独身だ。いつもは情を移さないゲイリーが自分のおとり捜査に捕まったらかわいそうだと感じて、逃してしまうのだ。
ここでドラマがラブストーリーの要素も加えて一転する。殺し屋「ロン」のまま付き合ってしまうのだ。大学講師としての普段の姿は無精髭を生やして、いつものグレンパウエルのようなお調子者で軟派なムードはない。離婚しようとしているマディソンとのメイクラブから面白くなっていく。もちろん警察には付き合っているとは言っていない。マディソンにも殺し屋の立場のままだ。自宅も教えない。色んな人たちにウソをつきながら交わしていく。ウソつきなのにあまりイヤな感じがしない。
外で2人がデートしている時にマディソンの夫とバッタリ出会ったり、おもしろい遭遇をいくつか作って巧みにストーリーを組み立てる。ネタバレなので言わないが、こう展開するのかと仕上げに感心する。
⒉悪女映画
映画の歴史上色んな悪女を生んできた。夫殺しの題材ではビリーワイルダー監督の「深夜の告白」(原題 倍額保険)が保険金殺人を扱って映画界に影響を与えた。1944年のフィルムノワールの代表作だ。主演の人妻を演じるバーバラ・スタンウィックは同じ悪女でも「危険な情事」のグレンクローズや「蜘蛛女」のレナオリンとは違って正統派美女である。もちろん、「ヒットマン」はそのテイストを少しだけ入れたに過ぎないが、「夫殺し」、「保険金殺人」のキーワードでは共通する。
フィルムノワールでこういう危険な依頼をする女をファムファタールと呼ぶ。ラテンのテイストもあるアドリア・アルホナは初めて見るが、セクシーさとエロのフェロモンがムンムンするいい女で適役だ。
⒊リチャードリンクレイターとグレンパウエル
お金のかかったアメリカ映画らしい作品が増えてきたのはうれしい。でもこのリチャードリンクレイター作品はお金がかかっているというより、中ぐらいの予算で楽しい映画に作り上げるような工夫がなされている。ラブコメの要素もあり、サスペンスやフィルムノワールの要素もひっくるめた何でもありのムードがいい感じだ。終盤に向けてどう結末をもっていくのかドキドキしながら見ていた。「深夜の告白」時代ではなかった結末だろう。脚本を2人で楽しんでいる。
この2人は「エブリバディ・ウォンツ・サム」で組んでいる。80年代のミュージックで満ちあふれたこの映画が好きだ。当時は無名だったグレンパウエルも今や大スターになっている。今回はプロデューサーや脚本のクレジットにも名を連ねている。主演作が3作続いたけど今後にも期待する。
映画「ヒットマン」は名匠リチャードリンクレイター監督の新作で、「恋するプリテンダー」「ツイスターズ」と主演作が続くグレンパウエルが「ヒットマン」を演じる。ヒットマンとは日本流では殺し屋だ。警察のおとり調査でグレンパウエルは殺し屋のふりをして殺しの依頼人を罠にはめて逮捕に導く。
自分と同世代のリチャードクリエンター監督は「スクールズオブロック」「6歳のボクが、大人になるまで。」が最も有名だが、自分のベスト100に3作もある。正直言って作品全部が好きなわけではない。イマイチで次回に期待だなと思ってしまうこともある。俳優ストも明けようやくアメリカ映画らしいラインナップが揃った中で新作を楽しみにしていた。
ニューオーリンズで2匹の猫と静かに暮らすゲイリー・ジョンソン(グレン・パウエル)は、大学で心理学と哲学を教える傍ら、地元警察に技術スタッフとして協力していた。おとり捜査の警官が職務停止となり、ゲイリーが急遽代わりを務める。依頼者と面談して、具体的な殺害依頼を口頭で受けた時、やり取りを聞いていて待機していた警察が逮捕するパターンだ。ゲイリーは相手に合わせて変装をして接触する。意外な才能を発揮し相手を信用させて次々と依頼者を逮捕へ導く。
夫殺しを依頼してきた女性・マディソン(アドリア・アルホナ)は魅力的な女性であった。殺し屋ロンに扮して彼女に接触して事情を聞くうちに、逮捕するはずの相手に対し「この金で家を出て新しい人生を手に入れろ」と見逃す。その後意気投合した2人は会うようになる。マディソンはゲイリーを殺し屋と信じて付き合うのだ。
これは抜群におもしろい!
リチャード・リンクレイター監督らしくユーモアをたっぷり混ぜながら、ビリーワイルダーの「深夜の告白」を連想する夫殺しを目論む美女を映画に放つ。フィルムノワールの要素も持たせるのもいい感じだ。セクシーな美女を登場させて往年のブライアン・デ・パルマ作品のようなエロチックサスペンスのムードも少しだす。
事前情報は少なく観た。最初は怖い男がぐだぐだ話すのを観ている時は何が何だか分からず、一体どうなるんだろうと思った。男たちの正体とストーリーの主旨がわかってからは頭にすんなり入っていける展開だ。主演作が続き絶好調のグレンパウエルがニセの殺し屋になりきって、「琴姫七変化」のようにいくつもの雰囲気を変えて登場する。Netflix「地面師たち」を観て身近に殺し屋っているんだなと感じたばかりで、世の中には裏社会でなくても殺し屋に頼む人って実際にいるんだなと感じる。
⒈巧みなストーリー展開と女への深入り
この映画ではリチャード・リンクレイターと並んでグレンパウエルも脚本にクレジットがある。映画の脚本を書くのに実際の事件報告書をじっくりと読んだらしい。わかったことも多いだろう。映画の中盤にかけていくつもの短い具体例をピックアップする。殺しの依頼主との数多くの出会いの後で美人の人妻マディソン(アドリア・アルホナ)と出会う。夫にムカついている。ゲイリーはバツイチの独身だ。いつもは情を移さないゲイリーが自分のおとり捜査に捕まったらかわいそうだと感じて、逃してしまうのだ。
ここでドラマがラブストーリーの要素も加えて一転する。殺し屋「ロン」のまま付き合ってしまうのだ。大学講師としての普段の姿は無精髭を生やして、いつものグレンパウエルのようなお調子者で軟派なムードはない。離婚しようとしているマディソンとのメイクラブから面白くなっていく。もちろん警察には付き合っているとは言っていない。マディソンにも殺し屋の立場のままだ。自宅も教えない。色んな人たちにウソをつきながら交わしていく。ウソつきなのにあまりイヤな感じがしない。
外で2人がデートしている時にマディソンの夫とバッタリ出会ったり、おもしろい遭遇をいくつか作って巧みにストーリーを組み立てる。ネタバレなので言わないが、こう展開するのかと仕上げに感心する。
⒉悪女映画
映画の歴史上色んな悪女を生んできた。夫殺しの題材ではビリーワイルダー監督の「深夜の告白」(原題 倍額保険)が保険金殺人を扱って映画界に影響を与えた。1944年のフィルムノワールの代表作だ。主演の人妻を演じるバーバラ・スタンウィックは同じ悪女でも「危険な情事」のグレンクローズや「蜘蛛女」のレナオリンとは違って正統派美女である。もちろん、「ヒットマン」はそのテイストを少しだけ入れたに過ぎないが、「夫殺し」、「保険金殺人」のキーワードでは共通する。
フィルムノワールでこういう危険な依頼をする女をファムファタールと呼ぶ。ラテンのテイストもあるアドリア・アルホナは初めて見るが、セクシーさとエロのフェロモンがムンムンするいい女で適役だ。
⒊リチャードリンクレイターとグレンパウエル
お金のかかったアメリカ映画らしい作品が増えてきたのはうれしい。でもこのリチャードリンクレイター作品はお金がかかっているというより、中ぐらいの予算で楽しい映画に作り上げるような工夫がなされている。ラブコメの要素もあり、サスペンスやフィルムノワールの要素もひっくるめた何でもありのムードがいい感じだ。終盤に向けてどう結末をもっていくのかドキドキしながら見ていた。「深夜の告白」時代ではなかった結末だろう。脚本を2人で楽しんでいる。
この2人は「エブリバディ・ウォンツ・サム」で組んでいる。80年代のミュージックで満ちあふれたこの映画が好きだ。当時は無名だったグレンパウエルも今や大スターになっている。今回はプロデューサーや脚本のクレジットにも名を連ねている。主演作が3作続いたけど今後にも期待する。