ワニなつノート

《この社会は「入試」を利用して15歳の子に何をしているか?》(その10)


《この社会は「入試」を利用して15歳の子に何をしているか?》(その10)


【「文部省の是正指導の犠牲】



前回、広島の定員内不合格者数を並べてみました。

0、0、0、0から以後、566とか、478,385、という数字が続きます。

でも、数字には、子どもの顔が見えません。

生きている子どもが見えません。


先月、舩後靖彦議員と木村英子議員が連名で、文部科学大臣に要望書を提出してくれました。
『障害のある受験生の定員内不合格をなくし、本人が力を発揮できる合理的配慮の提供を求める要望書』。


この要望書の【補充資料】の中に、広島県で2年にわたり「定員内不合格」とされた中村天哉さんのことが記されています。

広島の7,263人のなかの、一人の言葉です。


         □


広島県の中村天哉さんは2年間「定員内不合格」とされ高校で学ぶ機会を得られず19歳で亡くなりました。彼は昨年春に次のように書いています。

 【ともに育ってきた仲間たちがそうだったように、僕も地域の高校への進学を選びました。オープンスクールに参加して、自分の居場所はここしかない!と思った高校を受験することにしたのです。…(制度上)選択問題しかできない僕にとって、広島県公立高等学校の入試問題は選択問題が少ないので、大きな痛手でした。それでもまばたき受検が認められたことや、3年間一生懸命やってきた調査書や面接もあるから大丈夫だろうと、慌ただしい状況の中でも、なんとか受検に臨むことができました。

しかし結果は…1人だけ不合格。それも定員内不合格でした。情報開示請求をしましたが、不合格になった理由は分かりませんでした。当然落ち込みましたが、意を決して次の年もチャレンジしました。結果はというと、大幅な定員割れにもかかわらず、また1人だけ不合格になったのです。

この時、県教委から最初に言われた「受検することは拒まない」という意味が初めて分かりました。ショックで倒れた僕は、病院で点滴を受けながら、「真面目にずっとやってきたのに…」と自暴自棄になりました。】 




渡邊純さんや中村天哉さんのように障害がある若者が「定員内不合格」という理由で入学を拒否されるのは、「学ぶ席」がないのではありません。「先生」が足りないのでもありません。

たとえば沖縄県では87人の「定員」が空いていながら、千葉県の定時制高校では50人余りの「定員」が空いていながらの「定員内不合格」です。

87人の空席、50人の空席、つまり教室が一つ、二つ、まるごと「空いている」のです。

それでも障害児が「定員内不合格」とされるのは、「障害を理由」とした「入学拒否」であることは明らかです。・・・。


広島の7263人のなかの、一人の言葉です。

7263という数字には、ひとりひとりの無念の思いが、込められている。

障害児が「障害」を理由に、拒否されているのは明らかですが、他にもたくさんの「何か」を理由に、拒否される子どもたちがいる。


しかも、15歳の誰ひとり、「理由」を説明された子どもはいない。

校長の、判断、ひとつで、7263人の人生が左右される制度。

これのどこが「公平・公正」なのか?

7263人の15歳の子に、「他人や社会に対する信頼みたいなものが、壊されていくような経験」をさせているだけ。

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