ワニなつノート

親の当事者研究(その9)



「親の当事者研究」とか、
「なぜ、ふつう学級を当たり前と思う人と、そうでない人がいるのか」、
そしてアリスミラーのニーチェの研究を読みながら、
どうも私は、難しく考えてきました。

ところが、さっき、読んだ本に一つの答を見つけました。



【赤ちゃんのしつけ】

くじら組(年長組)のさりなちゃんと愛ちゃんが、
乳児室にやってきて、0歳の蓮くんと遊んでいました。
さりなちゃんが蓮君を抱っこしながら、
手に木製の玩具を持たせてやりました。

すると、蓮君は、「キャッキャッ」と声を立てながら、
さりなちゃんのほっぺを玩具で叩き始めたのです。
さりなちゃんは、「かわいい、かわいい」とニコニコ笑いながら、
叩かれるままにしていました。

その様子を見た愛ちゃんは、さりなちゃんをたしなめました。
「あかんよ、玩具なんかで顔を叩かしたりしたら。
くせになって、大きくなったら、暴力を振るう子どもになるんよ。
ママがいうてたよ」

「違うよ。赤ちゃんいうのは、何でもさせてあげるんがええねんで。
甘やかしてかわいいと育てるんがええねんで。お母さんがいったよ」
さりなちゃんは負けずに言い返しました。

今度は、愛ちゃんが蓮君を抱きました。
すると蓮君は、愛ちゃんの顔も玩具で叩き始めたのです。

「だめ! 叩いたらあかんの」
愛ちゃんは、まるでお母さんのように怒った顔で叱りつけたのです。

とたんに蓮君は、「わっ」と、火のついたように泣き始めたのです。

「ほら、泣かしたらあかんやんか。私が抱っこしてあげる」
といって、さりなちゃんは蓮君を受け取りあやし始めました。

それでも蓮君は、まだ泣きやみませんでした。
しかたなく、さりなちゃんは、ポケットからクッキーを取りだして、
手に持たせたのです。
とたんに、蓮君は泣きやんで、
「キャッキャッ」と声を立てながら食べ始めたのでした。
さりなちゃんは、「かわいい、かわいい」といいながら見守っていました。

その様子を見た愛ちゃんは、また、さりなちゃんをたしなめたのです。

「あかんやんか、おやつの時間とちゃうのに、クッキーなんか食べさせたら。
赤ちゃんは食べるのんは、時間が決まってるんやで。
ご機嫌を取るのに、クッキーなんか食べさせよったら、
くせになって、だんだんと肥満児になってしまうんよ。
ママがいうてたよ」

「違うよーだ。赤ちゃんは、いつでも、
何でも食べさせてあげるのがええねんで。
食べたいときに食べさせて育てんのが体にええねんで。
お母さんがいうたよ」

と、さりなちゃんがいっているのに、
愛ちゃんは、蓮君からクッキーを取り上げてしまったのです。
とたんに、また、蓮君は「わっ」と、火のついたように泣き始めたのです。

「あかん。取ったら、あかんやんか」といって、
さりなちゃんは、愛ちゃんからクッキーを取り返そうとしたのです。

「いや」といって、愛ちゃんは、
クッキーを後ろに回して返さない素振りを見せました。

するとさりなちゃんは、泣いている蓮君を床の上におくや、
愛ちゃんの頭を一発、ピシッと叩いたのです。

とたんに、愛ちゃんが泣きだしたのです。

「わあーん。赤ちゃんは厳しくせなあかんのに。ママがいうとったのにー」
と泣きながら、
今度はさりなちゃんの頭を一発、叩き返したのです。

とたんにさりなちゃんも泣き出したのでした。

「わあーん。赤ちゃんは、優しくしてやらんとあかんのにー。
お母さんがいうとったのにー」

とうとう二人とも泣いてしまいました。
蓮君は、泣きやんでしまい、きょとんとした顔で二人を見つめていました。

(『ダックス先生の保育園物語』 鹿島和男 ミネルヴァ書房)


「来週の日曜日に相談にくるお母さんやお父さんの答えは、
その人の5歳のころに、もうすでに決まっているのかもしれない…」
そんなことを思います。


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