4月27日、千葉市生涯学習センターで、
障害者差別禁止条例を考える緊急集会が行われました。
参加者は、113名。
多くは、いま学校に通っている子どもの保護者でした。
また、県議会議員4名、各地の市議会議員5名の参加もあり、
ようやくこの問題が認知されてきたように感じました。
以下に集会で分かったことを報告します。
千葉県の「差別禁止条例」は、
最初は「すべての障害児者」への差別をなくす志があって進められました。
初めに差別の事例を募集したところ、
もっとも多く寄せられたのが、普通学級にいる障害児の事例でした。
「差別をなくすための研究会」では、
事例を一つ一つ丁寧に検討し、
普通学級にいる障害児も差別されないように、
【障害を理由として、本人又はその保護者が希望しない
学校への入学を強いる事】を差別とする条文が作られました。
それは、特に目新しいことではなく、
すでに千葉県ではほぼ実現している事柄の確認にすぎないことでした。
ところが、市町村教育委員会は大反対でした。
曰く。
【条文が一人歩きし、本人や保護者の意見が尊重されすぎてしまい、
適切な就学指導が困難になる】
【普通学級への進学を求める保護者との対立が深まり、
学校現場は大混乱に陥る】
【就学指導が保護者の意見に左右される傾向が強まり、
静かな環境の下での就学指導が進められなくなる】
【条例が通ると、一部の保護者が無理難題を要求してくる可能性がある】
【障害児の普通学級への就学は、指導効果の面で疑問。
やはり教育的には、就学指導委員会の審議結果に沿った就学が最良】
【この条例は、公教育を破綻させるもの。
条文修正が受け入れられない場合は断固として反対運動を展開する】
これらを、読むだけで、
「就学指導」の実態がよく分かるし、
普通学級に入りたいと願う親子が
どれほどの壁を乗り越えなければならないかが分かります。
こうした教育委員会の認識そのものが、最大の差別です。
しかし、これらの教育委員会の主張が通り、
「教育に関する条文」は修正されました。
こうして、日本で初めての「障害者差別禁止条例」は、
「普通学級にいる障害児」への差別を切り捨てて成立したのです。
NHKの特集では、その辺の事情を、
『皆さんの理解を得るために修正も重ねた。
それをマイナスと思うのでなく、
じっくり話し合いを重ねたからこそ…』と
間抜けな説明をしていました。
こんな条例なら、あってもなくてもどうでもいいと
私は思っていました。
もともと、条例などないところで、私たちはやってきたのですから。
ところが、向こうはさらに「解釈」を利用して、
普通学級にいることを攻撃してきました。
それが、「特別支援教育を受けさせない親は、
障害をもつ子どもを差別している」という解釈です。
私たちは、去年の9月から、
解釈指針を作った障害福祉課と話し合いを重ねてきました。
初めのうち、福祉課は、私たちの主張が理解できなかったようです。
しかし、実際、
「教育における不利益取り扱い(差別)の定義」として、
「障害のある幼児児童生徒にかかわる関係者が
『特別支援教育』を受ける機会を与えないこと」と書かれているのです。
話がかみ合わない一番の理由は、
「特別支援教育」についての認識の違いでした。
福祉課は、「特別支援教育に明るい未来を見ていた」と言いました。
彼らは、「特別支援教育」が始まったことで、
私たちの望んでいる「普通学級での配慮」も
進むものと思っていたようです。
普通学級にいられて、
しかも「特別支援教育」も受けれるんだから
一石二鳥のようにとらえていたようです。
だから、私たちは、
①『今まで「特殊教育」の対象児と見られた子どもたちが、
普通学級でどういう差別を受けてきたか』
②『それが「特別支援教育」に変わっても、
差別の現実はひとつも変わっていないということ。』
③『むしろ、特別支援してあげるから、
「ここにいるより、他へ行った方がいい」
という状況は一段と強まったといえること。』等を
実例をあげながら話してきました。
半年以話し合ってきて、福祉課の人も、
『私たちが特別支援教育はいらない』こと、
『特別支援教育を子どもに受けさせる気は一つもない』
ということが、ようやく理解できてきたようです。
私たちにとって、「特別支援教育」は、
「特殊教育」と寸分違わぬものです。
今回、私たちが削除を求めているのは、
条例の「解釈指針」ですが、
そうした解釈が出てくる「条例」そのものに
重大な欠陥があるのだと私は思います。
それは、本当に苦しんでいる人を助けよう、
差別をなくそう、という志をどこかに置き忘れたからです。
「私たちの主張」が通らなかったから、
こんなふうに言うのではありません。
ある「差別」を、なくすために、
他の差別されている人を、取引の材料にしては
絶対にいけないと思うからです。
障害者差別の歴史では、
健常者に見えやすい障害、
理解されやすい障害から順に権利を認められてきました。
だからこそ、いまこの時代に、
ある特定の立場の子どもへの差別から目を逸らして、
本当に差別をなくすことなどできないと思うからです。
この日の集会の初めに、
『養護学校あかんねん』のビデオを上映しました。
いま私たちは、
「特別支援教育あかんねん」と
はっきり主張しなければいけないと思います。
私たち以外に、そう言う人はどこにもいないからです。
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