感想:十二人の死にたい子どもたち

2016-12-30 00:10:33 | ミステリ



十二人の死にたい子どもたち 冲方丁
2016年作品


冲方丁の初長編ミステリ!!


自殺志願者を募るサイトでつながって集まることになった
容姿も性格も死にたい理由もそれぞれ異なる十二人の少年少女。
全員一致の決を採ることで安楽死を実行する。
しかし、集合場所にははじめから一人の少年の死体があり
集まった十二人は実行を後回しにして少年についての議論を開始する。



タイトルでピンときた人もいるだろうけれど
内容はひたすら討論するだけの密室劇。

十二人のそれぞれが個性的で
最初に容姿で大きく印象づけるのがいかにも脚本家的。

頭ではわかっていても感情を抑制できない者や
若いのに妙に達観している者。
果ては何をしにきたのかわからないようなギャルまで
思考能力・発言の影響力・協調性、等々
それぞれの人物をゲームのようにパラメータ化して、
それに基づいて議論が進んでいるかのような印象を受ける。

全員の性格が理解できた中盤以降、
「このキャラにはこう動いて欲しい」という読者の期待を
汲み取っていくような展開が面白い。


無機的な廃病院が舞台なので叙情性は介在しないし
「十三人目」にまつわるトリックの説明が冗長だし
巻頭にある院内マップと見比べながら読み進めるのもしんどい。
無理やり「ミステリ」として読もうとすると
内容的に理解しづらく、粗も多い。

あくまで若者たちのディベートが作品のメインであり
その中での伏線や謎解きの起承転結がミステリ小説に準じている。
そのためか、推理に必要となる情報が
若干後出しになってしまっているのが惜しい点。


途中で少しドキッとするサスペンスはあるものの
最後までソリッドな廃病院の内部で物語が閉じ
余韻の静謐さが清々しい。

さすがベテラン作家、といえるだけの
発想と文章力と人物描写の読み応え。
作者本人としてはこの作品はさまざまなジャンルに挑戦する
一環としての位置づけかもしれないけれど、
ミステリ作家としての次の作品にも是非とも期待したい。


文章   ★★★☆
プロット ★★★☆
トリック ★★☆
(★5個で満点)

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