まだ終わらないで、文化祭 藤 つかさ 2023年作品
~あらすじ~
文化祭当日、昇降口の掲示板に貼られたポスター。
それは事故が起こった2年前の文化祭で使われたものだった。
誰が、一体、何のために。
何か厄介なことが起こるのを事前に防ぐため
生徒会長の市ヶ谷のぞみは見回りと聞き込みを開始する。
文化祭で毎年生徒がサプライズを起こすのが伝統の学校。
しかしニュース沙汰にもなった2年前の事故で教師からの締め付けも強化され
前年はゲリラライブが未遂に終わっている。
容姿端麗かつ成績優秀で、周囲からも人望を集める市ヶ谷のぞみ。
教師からの指示で文化祭の見回りを引き受けたものの、
実際はのぞみ本人も気持ちは生徒側に寄り添っていて
文化祭で何か大きな出来事が起きることを願っている。
このへんが学校モノの定番である堅苦しい生徒会長のイメージとは異なり
生徒からの人望を集めるという説得力を強めているのが面白い。
のぞみが探偵役ではあるものの、
作品は群像劇でパラグラフごとに別人物の視点となる。
キラキラしたのぞみの視界ばかりではなく、
鬱屈した生徒もいれば自己表現の苦手な生徒もいて、
当然ながら全員が自分に可能な限りの青春を謳歌している。
それぞれの生徒のパートでメインのポスター事件とは別の推理が見れるのが
推理小説としてなかなかに熱い。
彼らすべての意識が自己主張の場である文化祭へと集約されていき
高まった感情がどのような弾け方をするのか期待してしまう。
そして埋め込まれていた伏線の回収が進むほどにこの文化祭の行く末を見届けたくなる。
甘酸っぱさもほろ苦さも織り込んだ、まさにタイトルどおりの痛快な青春小説。
全力で楽しんだ学生時代を思わず振り返ってしまうトリップ感が最高。
歳を取ると気持ちだけ若くても体力がついていかない!!
満足度(星5個で満点)
文章 ★★★★
プロット ★★★★☆
トリック ★★★☆