試合は2対2のままPK戦にもつれ込んだ。先行の浦和のワシントンがまず決めた。一方サヘルはナフハが失敗。浦和は阿部・永井と決め、細貝も成功した。この段階で浦和の世界3位が確定した。
エトワール・サヘルが立ち上がりから試合の指導権を握った。坪井のクリアミスからボールを奪ったシェルミティがペナルティーエリアに進入した。追走した坪井がファールを犯してしまいPKにされてしまった。これをフレジが左すみに決め、サヘルが先制した。
ここでサヘルは作戦を変え、浦和にボールを持たせながら、自陣で守備網を固める持久戦法に出た。
浦和は単調な攻撃を繰り返し、攻めあぐねた。中央突破を果たせず、虚しくパスを回す展開が続いた。ワシントンへのマークは厳しく、くさびパスも徹底的に封じられ、フォーメーションを作る前にボールを奪い返される始末だった。
しかし、サヘルも持久戦法が裏目に出た。35分、左サイドの相馬がクロスをワシントンに送り、マークを振り切ったワシントンが打点の高いヘディングシュートを決めて同点に追いついた。
後半に入っても流れは前半と変わらずサヘルが押していた。浦和は相手に押されるままに最終ラインが下がり、ボールも相手に奪われたままの苦しい時間帯が続いた。
しかし25分、左サイドの深い位置で得たFKから永井がゴール前へボールを送り、巧みなポジション取りでフリーになったワシントンがヘディングで決めて逆転に成功した。
ところが、喜びもつかの間、またしても日本流の悪い癖が出た。
直後の30分、ペナルティーエリア右で突破をはかったシェルミティが浦和DF陣と交錯した。さらに、こぼれ球を拾いにいったGK都築がシェルミティとの競り合いでボールを取り損ねてしまい、シェルミティが無人のゴールへシュートを決めた。
浮かれると緊張がとぎれヘマをやらかすという何度もおなじみのパターンである。
以降も圧倒的なサヘルの圧力の前に浦和はゴール前で防戦一方の展開が続いたが、その後得点を与えることはなくPK戦に持ち込んだ。
アジア代表の浦和がアジア勢過去最高となる世界3位の座を獲得し、250万ドルの賞金も獲得した。
浦和のオジェック監督は「3位になれたことはチーム、関係者、そしてサポーターにも大きな意味がある。(ワシントンは)素晴らしいゴールを見せてくれた。次のクラブでも素晴らしいプレーをしてほしい」と語った。
一方破れたサヘルのマルシャン監督は「この大会に参加できただけでも快挙だった。(PK戦直前から途中起用した)GKジャウアシはPK戦のスペシャリストとして有名だが、浦和の選手がうまかった。」と相手のPK技術を褒め称えた。
今季限りで退団するワシントンは「ベストを尽くして3位になることができた。チームとサポーターに感謝したい。いい形で2点を取って、いい形で3位になって、(自分の浦和でのキャリアを)いい形で締めくくることができた。みなさんにお世話になり、本当に感謝している」と語り、号泣した。
3日前の13日、クラブW杯準決勝では日本代表の岡田新監督も観戦していた。「代表監督ではなく、一サッカーファンとして試合に熱中した」と話している。スタンドでは98年フランスW杯で日本代表から外した横浜FCのFW三浦と談笑するシーンも見られた。
今季最終戦を終え「あっという間に終わった感じ」と阿部は言った。
アジアチャンピオンズリーグ、Jリーグ、天皇杯など計56試合を戦い、無傷の選手は皆無のようだ。ポンテ、田中達らが離脱し、この日も選手交代なしという非常事態だった。
世界3位になったものの、喜んでばかりもいられない。主力選手の怪我やワシントンが抜けた後の補強も心配であるが、何よりも技術的な不安が残った。
ミスから同点ゴールを許す悪癖は何とかならないものか? まあ、浦和だけに限ったことではないが…。Jリーグで終盤に失速したのもひどかった。世界のレベルを肌で感じた経験を生かし選手を補強し、個々のレベルアップが計れるかが、来季への課題であろう。
(記事)
サッカー:クラブW杯 浦和、サヘル破り堂々の世界3位