2006.1.06付けNIKKEINETによると若者の乱用が懸 念されている脱法ドラッグの「RUSH」を米国から大量に輸入したとして、厚生労働省は11日までに、東京都新宿区内の輸入業者を薬事法違反(医薬品の無 許可販売など)の疑いで捜査当局に告発する方針を固めた。
販売業者への立ち入り検査などを通じて輸入元が判明した。同省が脱法ドラッグの輸入業者を刑事告発するのは初めて。
RUSHは無許可医薬品の亜硝酸エステル類を含有する揮発性の液体。アダルトショップやインターネットで「芳香剤」「ビデオヘッドクリーナー」などの名目で販売され、性的快感を高める目的で若者の間で乱用されているという。
厚労省の調べによると、輸入業者は米インディアナ州の製造元から横浜港経由でRUSHを1万本単位で輸入し、販売業者に販売した疑いが持たれている。輸入 業者は1本あたり約200円で仕入れたRUSHを約500円で卸し、店頭やネットでは1本あたり約3000円で売られたという。
合法ドラッグ、脱法ドラッグとは
「合法ドラッグ」は、単なる「合法の医薬品」を意味するのではありません。乱用薬物を意味する日本語の「ドラッグ」に、業者とマニアが宣伝と自己弁護のために「合法」という形容詞をつけたものですから、その出生から怪しげな薬物です。
「合法ドラッグ」の明確な定義というものはありませんが、多幸感、(性的)快感などを高めると称して、雑誌の通信販売、アダルトグッズショップ、ビデオショップ、ドラッグ専門店などで販売されている製品に対してこの用語が使われています。
「合法ドラッグ」とはいうものの、危険な医薬品や非合法の薬物が含まれていることも多いのです。「合法ドラッグ」の製造流通過程には違法行為を含み、使用実態は乱用であることも少なくありません。
「合 法ドラッグ」という呼称は、一般市民や使用者に対し、これらの薬物が法に合致し、安全性が保証されているという印象を与え、薬物乱用へと誘導してしまいか ねない不適切な表現であるとして、行政機関では、「合法ドラッグ」という用語に代えて、「脱法ドラッグ」と呼んでいます。マスメディアも2003年頃から 「合法ドラッグ」でなく「脱法ドラッグ」を使うようになってきました。
医療機関で見かけることが多い乱用対象薬のうち、リタリン(メチル フェニデート)は、実は、「麻薬及び向精神薬取締法」で販売や譲渡が規制されている向精神薬です。しかし、麻薬や覚せい剤のように、所持や使用を禁止され ている訳ではないので、しばしば「精神科でもらえる合法ドラッグ」などと呼ばれています。合法ドラッグという用語を広義に使う場合には、リタリンを含める ことがあります。
なお、英語でlegal drug abuseという場合には、リタリンやプロザック(抗うつ薬)、鎮痛剤など処方薬乱用を意味していることが多く、時には広く、飲酒と喫煙までも含むことがあります。
[デザイナードラッグとは]
規制薬物は化学構造式で定義されているために、合法ドラッグの中には、規制薬物(違法薬物)の分子構造の一部を組み替えただけの類似薬物(analog drugs)もありました。
これらの類似薬物は、「実験室で作られた薬」という意味で、「デザイナードラッグ」(designer drugs)と呼ばれました。
このようにして作られた薬物の中には、元の規制薬物の数百倍の効力や副作用を持つものもありました。エフェドリンから化学的に合成される覚せい剤、メタン フェタミン(methanphetamine)とその類似物質、エクスタシー(MDMA)も、コカインやヘロインなど自然界から得られる従来の薬物から区 別して、デザイナードラッグと呼ばれることがあります。
[スマートドラッグとは]
スマートドラッグ(smart drugs) というのは、精神機能を改善するとされている薬物のことです。
認 知増強薬(cognitive enhancers)とかヌートロピック(nootropics)とも呼ばれます。nootropicというのは、mindを意味する noosとchanged, toward, turnを意味するtropos というギリシャ語を組み合わせた造語です。
スマートド ラッグの多くは、実際には、これまでパーキンソン病、アルツハイマー病、脳血管障害、感情病などの精神神経疾患に使われてきた薬物を健康な人に使用して、 記憶や学習、注意力、集中力、問題解決力、社会機能を改善しようというものです。この中には、脳代謝改善薬、脳血流増強薬、抗うつ薬などから、エフェドラ などのハーブ剤、神経伝達物質に影響する薬剤、栄養剤など多種の薬物が含まれています。業者らはこれらを組み合わせることによって、精神機能を改善するこ とができると主張していますが、これらの薬物の健康者に対する能力改善効果は医学的には証明されていません。
[合法ドラッグからスマートドラッグへ]
大 雑把に言うと、合法ドラッグは気持ちよくする薬、スマートドラッグは賢くする薬、ということになりますが、重なる部分も多いので、怪しげな響きのある「合 法ドラッグ」に代えて、近年マスメディアで「スマートドラッグ」という用語が使われることが多くなってきました。日本のインターネット社会では、「スマド ラ」という略語もよく使われます。
[生活改善薬とは]
生活改善薬は、英語のlifestyle drugs に相当する用語です。生命に直接関係する病気の治療用ではないが、人によっては気になる体の症状や生活習慣を改善することによって生活の質を向上し、それ に悩んでいる人の幸福感を高める薬、と解釈されていますが、明確な定義はありません。
医師の処方が必要な医療用医薬品としては経口避妊薬 の低用量ピルや、勃起(ぼっき)不全治療薬「バイアグラ」、薬局、薬店で購入できる一般用医薬品としては発毛剤「リアップ」などが代表的な製品とされてい ます。このほか、禁煙補助ガム、禁煙補助貼付剤、ダイエット薬、尿失禁治療薬、皮膚の老化防止薬などもこれに含まれます。医師が臨床的判断で処方する医薬 品と違って、生活改善薬を使用するかしないかは、その人のライフスタイルや価値観によって決まります。
生活改善薬の乱用が問題になるケー スとしては、性感を高める薬、ダイエット薬、抗うつ薬(気分を良くする薬)などの安易な使用が考えられます。1998年から翌年にかけて日本で起こったバ イアグラ騒動は記憶に新しいことでしょう。日本で未承認のバイアグラをインターネットなどで販売する業者が現れ、使用者に死者が出たという事件です。
[健康食品、サプリメントとは]
健 康食品とは、普通の食品よりも「健康に良い」と称して販売されている食品です。これに対し、サプリメント(supplements)は、元来は「補給」を 意味する英語ですが、最近日本では、dietary supplements あるいは、nutritional supplements、つまり栄養補助食品の意味で使われるようになってきました。食事によって十分に摂りきれない栄養素を補うための補助食品の総称で あり、実際には日本で「健康食品」と位置づけされているものとほぼ同じ製品群をさします。インターネット上では、「サプリ」という略称が使われることが多 いようです。
これに類した用語として、機能性食品、マルチビタミン、特定保健用食品、栄養強化食品などがありますが、いずれも法令上明確な定義はなく、これらの用語の区別も明らかではありません。
健康食品は、大きく食料品店で販売されるものと健康食品売場や薬局などで販売されるものに分けられます。前者には、一般自然食品、加工食品、健康成分を添加した加工食品があり、後者には、抽出濃縮食品、美容食品、ダイエット食品、健康茶、ダイエット茶などがあります。
2002年の夏、日本で中国製ダイエット食品による健康被害が明らかになり、健康食品の安全性が社会問題になりました。
[脱法ドラッグに含まれる医薬品]
いろいろな商品名で販売されている合法ドラッグの中には、危険な医薬品が含有されていることが少なくありません。東京都は、買い取り調査に基づいて、マオ ウ、エフェドラ(塩酸エフェドリン含有)、塩酸エフェドリン、塩酸フェニルプロパノールアミン、ヨヒンベ、塩酸ヨヒンビン、塩酸ピロカルピンなど、19種 類の薬物を合法(脱法)ドラッグから検出された医薬品の例として挙げ、その有害作用を解説しています。
東京都健康局食品医薬品安全部薬事監視課:あぶないドラッグ~脱法ドラッグ対策~
ま た、これまで「合法ドラッグ」として販売されていたものが、法律改正によって違法薬物になることもあります。たとえば、ガンマヒドロキシ酪酸(GHB) は、2001年11月から、サイロシビン、サイロシンを含有するきのこ類(通称、マジックマッシュルーム)は、2002年6月から、麻薬および麻薬原料植 物に指定され規制されることになりました。
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namanaka
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