「実効支配」が領有権問題で「先例」となるか 国際司法裁判所シンガポール帰属判決
竹島の帰属を巡っては韓国が日本の国際司法裁判所裁定要求を逃げ回ってる。
似たような話がシンガポールとマレーシア間で起きていた。
こちらはまともに国際司法裁判所の裁定を仰ぎ、実行支配していたシンガポール側が勝訴した。
シンガポールとマレーシアがその領有権を30年近く争ってきたマラッカ海峡東方「ペドラブランカ (マレーシア名バトゥプテ、中国語名白礁=バイジャオ)島に関して、オランダのハーグにある国際司法裁判所が「シンガポールに帰属する」と判決を下した。シンガポールはこれが世界中の領有権をめぐる係争の解決に向けた有効な先例になる、と胸を張ってみたようだ。
争われたのはマレー半島の南東端の約14キロ沖にある幅100メートルほどの小島。
マラッカ海峡から太平洋に向かう海上交通の要衝。ここでシンガポールが灯台を管理してきた経緯がある。
シンガポールもマレーシアも一時英国の植民地だった。もともとシンガポールが国として機能していなかったので、その段階では領有権問題はなかったと思われる。
この小島も所有者がいなかった。
100年以上前に同島を英国が灯台を建設するために領有し、1965年にマレーシアから独立したシンガポールがその権利を継承したと主張して灯台を管理するなど実効支配してきた。
だがマレーシアは、この島は当時のイスラム王国に帰属していたとして同王国から領有権を引き継いだと反論し、2003年に両国が国際司法裁に提訴した。
英国領から権利を引き継いだのはシンガポールだし、英国の保護下にはあったがイスラム王国が存在し、マレーシアは「それを継承した」と主張しているのである。
12対4で下された今回の判決では、同島周辺の岩場の1つはマレーシア帰属を認め、もう1つの岩場は領海が重なる場所にあるとした。判決理由の中で国際司法裁判所はシンガポール側がペドラブランカ島に国旗を掲げ、軍が通信設備を設けたりして「実効支配」を続けたのに対し、マレーシアはこれに対抗してこなかったと指摘した。
両国は今判決に従う義務がある。
どちらかというの旧宗主国イギリスの顔を立てたような判決である。
判決についてシンガポール外務省は「主張が認められた。第三者による紛争解決メカニズムの有用性を示し、他の2国間紛争解決のモデルとなり得る」と"勝利宣言"を発表。マレーシアのライス外相も「双方に利益がある」と一定の評価を下す形で、領海が重なる所にあるとされた岩場の帰属について、両国で合同委員会を設けて話し合う意向を示しており、穏便な幕引きをめざすことにした。
日本の竹島に比べれば利害関係がそれほどひどくはないので、こんな感じで収まった。
今回の判決はシンガポールによる「実効支配」が領有権問題で「先例」となりうることを示した、というのがシンガポール外務省と聯合早報の見方だ。だが翻って日本では、日本海で韓国に実効支配されてしまっている「竹島(韓国名・独島)」問題はやや不利な情勢だが、東シナ海「尖閣諸島(中国名・釣魚台)」では日本による実効支配の現状が有効と考えられる。
この記述に対しては、批判が多い。「『竹島が不利』とは何事だ!とか、「尖閣諸島の日本による『実行支配』とは表現を間違えているのではないか?」などというものである。
竹島の場合は経緯が全く異なるので、今回の事例はあまり参考にならない。
スプラトリー諸島はその全部または一部を中国、台湾、フィリピン、マレーシア、ベトナム、ブルネイの6カ国・地域が領有を主張しており、それぞれが実効支配する岩礁や小島が複雑に入り組んでいる。
ここにもシンガポールのいう「先例」がポンと適用されるとなると「不測の事態」も起こりかねないのだが…。
それはその通り。
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