子供はかまってくれない

子供はかまってくれないし,わかってくれないので,映画と音楽と本とサッカーに慰めを。

映画「キングダム」:ハリウッドという一言で括れない懐の深さ

2007年11月21日 22時54分22秒 | 映画(新作レヴュー)
アメリカの正義が,野蛮な国の野蛮と思っていた相方と心を通わせ,共通の敵を倒そうと奔走する。リドリー・スコットの「ブラック・レイン」に代表される,文明国アメリカの異文化体験アクションの焼き直しに見える本作は,ラストで思わぬ深みを湛える。いきなり視点が拡がって,少女の瞳に宿る復讐の光を捉えたショットは衝撃的だ。

クライマックスの,正に片時も力を抜けない銃撃戦は,制作に廻ったマイケル・マンの「ヒート」にあったヒリヒリするような緊張感に満ちた撃ち合いではない。車も壁も柱も貫く迫撃砲の威力は,徹底的に相手を殲滅する,という互いの意思の表れであり,観客を圧倒する迫力はあるが,人間同士が互いを「人」と認めて対峙する,というニュアンスは決定的に抜け落ちている。

にも関わらず,映画が観客をラストまで引っ張っていく力を持ち得たのは,武器を持って闘うもの同士が大義と復讐の前に盲目となる以前に,愛する家族を持つ血の通った人間であるという姿を写した一連のカットバックが,絶妙に効いているからに他ならない。

ジェイミー・フォックスにジェニファー・ガーナー,更にクリス・クーパーという豪華なキャスティングが目眩ましになってしまったようだが,血湧き肉躍るはずのアクションシーンのベクトルが,一瞬にして終わりのない暴力の連鎖へと転換する作劇の見事さは,もっと取り上げられて良いはず。ピーター・バーグというフィルム・メイカーは,ポール・グリーングラスを目指す,べき。


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