ノアザミ(キク科)
5月下旬ごろから田の畔や草地河原の土手などで見られるアザミ。アザミはアザミ属の植物の総称です。
日本には100種類以上アザミがありますが、このころ一番普通に見かけるのがノアザミです。
さてアザミ、漢字で書くと、薊(あざみ)の漢字を分解すると草冠に魚と刀。
「薊」の字はトゲがあって、刀のように刺す草を表している。総苞やとげを鱗(うろこ)や剣に見立ててできた。
中学校の国語の教科書に「二つのアザミ」という教材があります。
宮沢賢治のアザミ=種山ケ原
種山ヶ原を舞台にした作品。賢治は花巻農学校の教師をしていた大正十三年の作品。このなかにアザミがでてくる。
「すてきに背高の薊」
梶井基次郎のアザミ=闇の絵巻
短編小説。夜更けの渓沿いの暗い街道を歩いていく感情と空想を絵巻物のように綴った作品。
「裸足はだしで薊(あざみ)を踏んづける! その絶望への情熱がなくてはならないのである。」
二人の小説家がかいたアザミにたいする表現を読み比べて見慣れている風景の中のアザミがより美しく感じられたと作者が感じたことを読む解く。
アザミの花を言葉だけでとらえること(国語だからしかたないか)にすこし寂しい気がしますが。
学習した生徒たちも、自然のアザミをおどろきもって観察してくれるだろうか。
歴史は古く、聖書にもアザミの話がある。
禁断の果実を食べたアダムとイブは、エデンの園を追い出される。
ふたりは、イバラやアザミの生えた中から、食べ物を見つけなくてはいけなくなった。
というふうに人類とは古い付き合いの花なのだ。
スコットランドの国花はアザミ
イギリスの正式名は、「グレートブリテンとアイルランド連合王国」。4つの国の連合国家。
イングランドはバラ(テューダーローズで自然界にあるバラを紋章にしていませんが)、ウェールズならスイセン(これにも面白い話がありスイセンのまえはネギだったとか、その後スイセン(ラッパスイセン)になったのかも諸説あるようで)、アイルランドはシャムロック(三つ葉のクローバー)、スコットランドはアザミです。
中世の時代、ノルウェー軍がスコットランドに攻め入ったとき、アザミのとげを踏んだ敵が声を出し、夜襲に気づき、撃退したことから国花になったとか(これはあくまでも伝説で、なぜアザミなのかはわかていません)
しかし、現在でも、トップクラスの組織や企業のロゴ、なんと警察官の制服にまで、アザミの紋章はスコットランド中でつかわれているとか。
さて、最後に日本
日本語の「アザミ」の名は、「あざむ」に由来します。
あざむには「興ざめする」という意味があり、美しい花だと思って触れると、トゲがありそうではなかったと「あざむかれた」という意味から「アザミ」。
ノアザミの花の観察。
初夏に見られるアザミはノアザミ
ノアザミの花はたくさんの花が集まっている。キク科の花(頭花)は小さな合弁花(小花)の集まりです。一つ一つの筒状の花から長い雄しべや雌しべがとびだしている。指で刺激すると、雄しべの先から、白い花粉がでてくる。チョウなどが蜜を吸いにやってくるとチョウの体に花粉をつけて受粉させる工夫がある。
葉に鋭いトゲがあり、うっかり触れると痛い。これがいろいろな伝説をうんだ。
総苞には粘着性があり、虫がついてしまうことも。なぜ、粘着性があるのか、受粉には関係のないアリなどがのぼって花粉泥棒に合わないための工夫ではないかという説がある。
雄性期:虫が触れると花粉が出る。
雌性期:雌ずいの柱頭が2裂して、花粉を受けやすいようになる。
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