ここの所 何件か連続で家具修理の依頼を受けました。
1~2日で終わる修理が多いのですが、今回はだいぶ日数が掛かりました。
依頼は茶箪笥の修理・修復で、「新築中の新居で使えるように直して欲しい」というもの。
一見したところ、虫食いやワレが激しいが本体はしっかりしている感じ。
分解修理が望ましいが予算の関係で難しそう。。。
どうしようか暫く考えましたが、バキバキに割れた天板をとりあえず剥がしてみようと解体開始。
剥がしてみれば、厚み7mmの薄板を使っているし、割れが酷く再利用は不可能。内部の板も墨やインクをこぼしていて研磨しても綺麗になりそうもない。削って再利用も難しい感じ。
そんなこんなしてるうちに全部バラしてました(笑)
フレームと鏡板はバラバラにして研磨、虫食いや大きな欠け、釘穴はパテを盛って修復後にステイン着色。
各段の底板は廃棄し新しい檜の板に交換。見える部分は着色。
長い使用で1mm以上すり減った引き戸の溝2か所 堅木を埋め込みました。
その後、組み立ててから全体をウレタン塗装。
拭き漆風にしたかったので仕上げにも茶色く色を乗せ、3部艶を吹き付け。
本体の後は扉や引き出し。
扉の大きな破損部分は埋め木、引き手は黒檀のモノと交換。ガラスも割れていたので交換。組子は研磨して再利用。
引き出しは全体を研磨。インクが付いて汚い底板、交換できないので上に3㎜MDF板を敷きました。
そして新しい金具を取り付け完成。
引き出しや扉も本体と同時にウレタン塗装をしています。
修理に際して、昔のモノなので全て釘打ちで作られていますが釘だと再修理が難しいので細い仕上げビスを私は使いました。
これなら数十年後に再修理も出来るでしょう。
この茶箪笥の製作年代ですが、今では当たり前の手押し鉋盤や自動鉋盤と言う木工機械を使わず、手鉋だけで部材を作り、手鋸で刻み、穴も鑿で掘ってあります。
おそらくは昭和の初め頃のモノなのでは?
全て手作業で材料も貴重な時代。 それなりの時間(手間)が掛かっているのでしょう。
合理的な構造で、見えない部分は手を抜いたり、難ありの材を使っていたりしますが、機能的には大きな損傷や不具合なく何十年も使えた訳で、設計の確かさは感じられました。作った職人さんの腕も悪くなかったみたいです。
分解して修理してみると様々な工夫が感じられ、いろいろと勉強になり、良い経験になったと思っています。
作業の最中、時代を超え この箪笥を作った職人と対話をしているような感覚になり面白いものでした。
残念なのが、修理前の写真を撮っていなかったこと。 なかなか疲れた茶箪笥でしたよ(笑)
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます