私の思いと技術的覚え書き

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サスペンション・ジオメトリーのこと

2008-12-10 | 車両修理関連

 サスペンションで、時々聞くジオメトリーとは、どんな意味で、その様な役割を持っているのでしょうか知ったかぶりして記してみます。

 ジオリメトリーとは幾何学的な動きの意で、クルマのサスペンションの場合であれば、各サスペンションアームの長さや、なす角度、それらの取付位置等を指します。

 この内、事故車の復元修理において、最も重要となる位置寸法とは、このサスペンションの取付位置(以下ビボット位置と記す)になります。現在のモノコックボデー車においては、サスペンションのアラメント(車輪の整列)を調整できるクルマは少数ですし、できたとしてもその調整範囲は小さいものです。ですから、このピボット位置が、正確に復元されないままのクルマは、幾らサスペンションアーム等の構成部品を新品に替えたところで、正確なアライメントがでないことになってしまうからです。これでは、クルマ本来の基本機能である、走る、曲がる、止まるの機能が、発揮されないことになってしまします。

 クルマの製造においても、これら高いピボット位置を含めたボデー寸法精度が生み出せるのも、ジグの使用がある訳です。しかし、レーシングカー等の少量生産のクルマでは、精度の高い平らな鋼板(定盤)の上で、そのフレームが組立られますが、ピボット位置の精度は、量販車程には高くない様に想像されます。その理由は、これらレーシングカーのアームの可動ジョイントには、ラバーブッシュの逃げを嫌い高い剛性を得るためにピロボール(通常のボールジョイントに相当)が多用されますが、大体がアーム長を調整するのアジャストが併用されていることで思う訳でもあります。

 最も、レーシングカーやラリーカーでは、走るコースや選択する車高によって、アライメント調整を行う必要もあります。ラリーカーの様にターマック(舗装路)とグラベル(不正地)で、大幅に車高を可変セットする必要な車両では、アームの相対角を動かすためのビボット位置が複数以上設けられているクルマを見ることもあります。

 ところで、これらビボット位置の精度ですが、アライメントへの影響度という意味で、各部位で寸法への許容度が異なることを知る必要があると思います。例えば、ストラット型式のフロントサスで、ロワアームの取付ビボット位置の小さな狂いでも、アライメントには大きな影響を与えます。一方、そこから60~70cm上部に離れたアッパーサポート(ストラットタワー部)の位置が、同じだけ動いても、アラメントへの影響度は離れている分だけ小さいことからも判るでしょう。

 このことを逆利用しているのが、最近のハイマウントタイプのウィッシュボーン(もしくはマルチリンク)サスペンションです。アッパーアームをロワアームと離すことにより、アッパー側に比較的柔らかいラバーブッシュを使用して撓ましても、アラメント変化が少なく、高いキャンバー剛性が得られることから操安性と乗り心地(含むハーシュネス)を両立出来るからです。




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