私の思いと技術的覚え書き

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寺子屋指南 その5 入力方向の見極め

2021-04-01 | 賠償交渉事例の記録
 本シリーズも第5回目となるが、今回は入力方向の判断というか見極めについて書き記してみたい。
 各損保の調査報告書(レポート)でも入力方向は、大事なものとして記録しているのが現状でも変わりはしないだろう。それは、一つは事故の整合性を検証するためであり、また見積を作成する前段階としての損傷診断にも関わる事項でもあるからだ。次回以降に記したいが、事故による変形損傷の中には、いわゆる慣性によるものもあるが、この慣性というのは入力方向と真逆の方向に働くという物理の大原則がある。そのことを考慮検討するためにも入力方向を正確に見極めることは極めて大事なことだと信じている。

 ところで、最近の調査担当マネージャーとか、いわゆる研修を担当する者を想像した時、一般的には並みいる調査担当者の中でも技量の優れた者が専任されるべきだと信じているが、マネージャーとしてに人員を束ねる時、いわゆる政治力とかリーダーシップという側面も欠かせいない要素としてはある。そのことを否定はしないが、まずは技術職であるからには、その技術の最上級を保持していることが前提とされることが優先順位となるべきであろうが、最近の傾向を見ると、先に記した鋼者である政治力だとかリーダーシップだけに重きが置かれ過ぎた感があるが、これを読む皆様方はどう思うだろうか。

 さて、本論だが事故にもよるが入力方向は必ずしも一つでないということをまず記しておきたい。つまり、クルマの場合基本的には二次元の動きをするが、場合によっては高低の三次元の要素が入ってくる場合もある。何れにせよ、衝突という物体間が接触していている僅かな時間ではあるが、その運動により動きが規制されたり影響を受けることで、衝突中に入力方向が変化する場合もあるということをここでは述べたい。例えば、左旋回中にフロントバンパーの右角を当てたとすれば、バンパーの右角への入力は、その衝突中に時計の針で10字くらいから1時くらいまで変化することは確かだろう。この様な場合、その損傷を大きく生じさせた代表的な入力方向を記録するに留めているのが現状だと思うが、この様に方向が変化する場合も十分あり得るということを知っておいてもらいたい。これは想像だが、先の政治力だとかリーダーシップだけを重視された皆様の上に立つ者の中には、その様な思考が欠落している者も多くいるだろうことを予見するところだ。

 それと入力方向を見極めるには、車体の外面的な変形だけを見て判断すると誤る事例があることを記してみたい。事例として、下記に写真2枚を提示するが、1枚目の写真からは、右前の潰れだし、1時~2時くらいの入力方向だと思えるだろう。しかし、2枚目の写真から、よくよく内部の骨格部位の変形具合を観察すると、フロントサイドフレーム先端のバンパーリインホースメントが装着されるフランジ部に左回転する様な捻れ変形が生じていることが理解できるだろう。

 この様な高強度部位を左回転する様な捻り変形を生じさせる入力方向とは、おそらく最低でも3時、もしかすると4、5時くらいの入力方向かもしれない。正式に該当車の事故状況を把握している訳ではないが、該当車がこの様な入力方向で衝突したとなると、前方の他物や相手車と衝突したのでないことは確かだろう。想像だが、該当車事態がステアリングを左に切りながら後退中に例えば電柱様の物体に衝突させたのではないかと拙人は考える訳だが、これを見た皆様はどう考えるだろうか。




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