ロビンの観劇日記

芝居やオペラの感想を書いています。シェイクスピアが何より好きです💖

「サイモン・ヘンチの予期せぬ一日」

2011-02-16 16:21:44 | 芝居
1月31日全労済ホール・スペース・ゼロで、サイモン・グレイ作「サイモン・ヘンチの予期せぬ一日」を観た(演出:水谷龍二)。
これが日本初演。

ある日のこと、ワーグナーの好きなサイモンは買ったばかりの「パルジファル」のレコードを聴こうとするが、下宿人の大学生、兄、友人などが次々と
押しかけてきて邪魔をする。
そうこうするうちに、彼の家庭そのものが崩壊しかねない事件さえ起きる。
しかし彼は決して感情的にならない。
彼は見たところ上流階級に属し、インテリで紳士だが、実際は妻がありながら女性関係にルーズで手慣れており、そのことに何のやましさも感じていない・・・。

我々は前半、妙な侵入者たちに悩まされる主人公に同情したり笑ったりするが、後半、実はこの男がとんだ曲者だと知ってすっかり引いてしまう。

真面目そうな教師である妻の口から、深刻な顔で「私が浮気をしたのは退屈だったからよ」と言われてもさっぱり分からない。たぶん彼女は夫の浮気にあてつけて、張り合うように浮気したのだろう。この言葉を言い換えれば「私を放っておかないで」ということか。ところが夫は気づいているのかいないのか、まるで無反応。それで彼女は何ヶ月もその状態(不倫)を続けているのだろう。実際のところ、夫は気づいていたのだった。それではサイモンにとって結婚とは一体何なのか。

友人ジェフの若い愛人はステレオタイプ。昔こういう奔放な若い女性がよく芝居やドラマに出てきたっけ。時代を感じさせる。

役者たちの演技に締まりがない。したがって芝居がうまく流れていかない。ただジェフ役の上杉祥三さんだけは芝居の質と言うか、格が違う。翻訳劇に慣れているというのもあるだろう。まあ筆者もこの人が出ているから観たようなものだけど。

1975年に初演されたこの芝居がこれまで日本で上演されなかったのも分かる気がする。
細かな点で、我々には肌で感じ取れないニュアンスがあるらしく(例えばケンブリッジ大学とオックスフォード大学の違いとか)、英国人ならもっとたくさん
笑ったり深く味わったりできるようなのだ。翻訳だけではその辺がなかなか難しい。

ただ、そういう異文化理解の問題と、作品自体の限界もあるが、料理の仕方(演出)にも工夫の余地があると思う。

たった36年で古いと感じさせるような芝居をやるより、400年たっても古びないものをやってほしい、というのが、筆者の変わらぬ願いであります。



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