4月3日パルコ劇場で、蓬莱竜太作「正しい教室」をみた(演出:蓬莱竜太)。
母校の小学校の教師となった菊地(井上芳雄)は子供を亡くした同級生小西(鈴木砂羽)を励まそうと同窓会を開く。そこに、呼ばれていない
はずの元担任寺井(近藤正臣)が現れて…。
これまで蓬莱の作品は4つ見てきた(「まほろば」・「楽園」・「木の上の軍隊」・「漂泊」)。中でも最初に見た「まほろば」が衝撃的と
言えるほど面白かったが、この作品はあれに勝るとも劣らない。
よくできた芝居はいずれも何らかの謎解きを含む。登場人物たちの会話から、互いの関係、これまでのいきさつが少しずつ分かってくると同時に、
そこに何かしらひっかかるところが現れ、そのわけを知りたいという欲求が観客をぐいぐいと芝居の中に引きずり込んでゆく。
そして、ついに霧が晴れるように真相が明らかとなった時、得られる快感は大きい。
この芝居も幸いなことにこういう喜びを与えてくれる類のものだ。
かつての同級生が三々五々集まって来る。それぞれが現在の生活に大小の悩みを抱えているが、久し振りに会い、懐かしい思い出を語り合い、
楽しい会になりそうだった。そこに幼い息子を亡くした小西が、或る思惑を胸に入って来る。なぜか妹に付き添われている。そして昔みんなに
嫌われていた担任の寺井先生が突如登場(乱入?)。皆は驚き、帰ってもらおうとするが、彼はポストに招待状が入っていたから来たと言う…。
小西の息子の死の謎、寺井の足の怪我の由来、菊地の過去、恋愛騒動…。
タイトルもいい。やはり言葉のセンスが感じられる。何しろこの「正しい」という語ほどやっかいな言葉はないし、この形容詞の後に来る名詞が
「教室」だなんて、これは才能と言うしかない。
寺井先生役の近藤正臣はナマでは初めて見たが、さすがにうまい。この教師も、実はただの悪い奴ではなく多面的な側面があることを、説得力ある
演技で表現。コメディセンスも十分。
菊地役の井上芳雄はミュージカル畑の人らしいが、最近はストレートプレイでも大活躍。そもそも彼が蓬莱に執筆を依頼して出来た作品だという
だけあって、出色の出来。
小西役の鈴木砂羽はテレビドラマで何度も見たことがあり評者が好きな役者だが、ここではこれまでのイメージと違ってとことん暗い。そのため
(後方の席だったこともあって)始めはこの人だと気づかなかった。いつも彼女が演じるのは姐御肌で明るくてテキパキと頼もしい女性だった。
自分ではこういう役を演じるのはどんな感じなのだろうか。
とは言え、今回も彼女の演技は的確。かたくなな思い込み、理不尽な要求、そしてその根拠が崩された時、人間の普遍的な弱さが痛みと共に現れる。
いつも思わされることだが、この作者の人間を見る目は温かい。
母校の小学校の教師となった菊地(井上芳雄)は子供を亡くした同級生小西(鈴木砂羽)を励まそうと同窓会を開く。そこに、呼ばれていない
はずの元担任寺井(近藤正臣)が現れて…。
これまで蓬莱の作品は4つ見てきた(「まほろば」・「楽園」・「木の上の軍隊」・「漂泊」)。中でも最初に見た「まほろば」が衝撃的と
言えるほど面白かったが、この作品はあれに勝るとも劣らない。
よくできた芝居はいずれも何らかの謎解きを含む。登場人物たちの会話から、互いの関係、これまでのいきさつが少しずつ分かってくると同時に、
そこに何かしらひっかかるところが現れ、そのわけを知りたいという欲求が観客をぐいぐいと芝居の中に引きずり込んでゆく。
そして、ついに霧が晴れるように真相が明らかとなった時、得られる快感は大きい。
この芝居も幸いなことにこういう喜びを与えてくれる類のものだ。
かつての同級生が三々五々集まって来る。それぞれが現在の生活に大小の悩みを抱えているが、久し振りに会い、懐かしい思い出を語り合い、
楽しい会になりそうだった。そこに幼い息子を亡くした小西が、或る思惑を胸に入って来る。なぜか妹に付き添われている。そして昔みんなに
嫌われていた担任の寺井先生が突如登場(乱入?)。皆は驚き、帰ってもらおうとするが、彼はポストに招待状が入っていたから来たと言う…。
小西の息子の死の謎、寺井の足の怪我の由来、菊地の過去、恋愛騒動…。
タイトルもいい。やはり言葉のセンスが感じられる。何しろこの「正しい」という語ほどやっかいな言葉はないし、この形容詞の後に来る名詞が
「教室」だなんて、これは才能と言うしかない。
寺井先生役の近藤正臣はナマでは初めて見たが、さすがにうまい。この教師も、実はただの悪い奴ではなく多面的な側面があることを、説得力ある
演技で表現。コメディセンスも十分。
菊地役の井上芳雄はミュージカル畑の人らしいが、最近はストレートプレイでも大活躍。そもそも彼が蓬莱に執筆を依頼して出来た作品だという
だけあって、出色の出来。
小西役の鈴木砂羽はテレビドラマで何度も見たことがあり評者が好きな役者だが、ここではこれまでのイメージと違ってとことん暗い。そのため
(後方の席だったこともあって)始めはこの人だと気づかなかった。いつも彼女が演じるのは姐御肌で明るくてテキパキと頼もしい女性だった。
自分ではこういう役を演じるのはどんな感じなのだろうか。
とは言え、今回も彼女の演技は的確。かたくなな思い込み、理不尽な要求、そしてその根拠が崩された時、人間の普遍的な弱さが痛みと共に現れる。
いつも思わされることだが、この作者の人間を見る目は温かい。
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