
昨日『8月のクリスマス』ロケ地巡りをした後、ファボーレ東宝で『蝉しぐれ』を観ました。
本当は『8月のクリスマス』をもう一度観ようかな、と考えていたのですが、ついた時にはすでに始まっていた為、タイミングの合った『蝉しぐれ』を観ることにしました。ちなみに以前『宇宙戦争』を見たときに行われていたチケットラリーキャンペーンで無料鑑賞券が当たっていたのでそれを使用、応募したことすら忘れておりました。
東北の小藩 海坂藩。下級武士『牧助左衛門(緒方拳)』の養子『文四郎(石田卓也)』は朝目覚めた後、近くの川で顔を洗うのが日課だった。そしてそこにはいつも隣に住む『ふく(佐津川愛美)』が洗濯をしているのだった。いつもと同じ朝、しかしその日は違った。蛇が『ふく』の指を噛んだのだ。『ふく』の悲鳴に近寄る『文四郎』は蛇の毒を抜くべく口を傷口に寄せた。
ある日『助左衛門』は突然収監される。世継ぎをめぐる陰謀に巻き込まれ、彼は切腹を命ぜられる。
母と二人、貧乏長屋に居を移す『文四郎』。彼の留守に『ふく』が駆け込んできた。『ふく』の奥へのお召しがあり江戸に行くことが決まったのだ。二人の初恋はこうして幕を閉じた。
前髪を落とし、立派な剣士となった『文四郎(市川染五郎)』は『犬飼兵馬(緒方幹太)』との試合に挑むが、玄妙な剣の前に破れてしまう・・・
リアリティとエンターティーメントのバランスの取れた作品でした。
藤沢作品『たそがれ清兵衛』や『隠し剣 鬼の爪』ではリアリティ感を出す為、ある程度方言を使っていました。方言を使うとリアリティが増す分、その地方以外の人は言葉の意味を掴む、という作業が加わる為、作品への理解度が浅くなってしまう、という懸念があります。本作では言葉が作品の重要なファクターになっている為、あえて方言を避けたと思われます。
脚本も十分練り上げられていると感じました。2時間11分という上映時間は冗長さを生み出す恐れが高いのですが、底辺に流れる静かな緊張感が時間を忘れさせることに成功していたと思います。二人の年少時代を時間をかけて描いたことが後半の感動につながっていきます。そして後半に入ってからのスピーディな展開、「市川染五郎」による見事な殺陣がエンターティーメント性を高めています。
台詞も必要最低限に抑えられています。「・・・」という言外に秘められた思いを各俳優陣たちが見事な演技で観客に伝えていたと思います。
ラスト『文四郎』がかけた「ふく。」という呼びかけにこの物語の全てが込められており、その瞬間えも知れぬ感動を覚えました。
俳優陣の中で眼をひいたのは、幼い『ふく』を演じた「佐津川愛美」の健気な演技でした。『文四郎』に対する淡い恋心を少ない台詞の中で見る側に伝えていたと思います。坂道での大八車のシーンはジーンときました。
御大「緒方拳」は家老といった偉ぶる役よりも清貧に生きる役どころのほうがやはり似合っていると思います。『文四郎』との別れのシーン、伝えきれない想いを行動で伝えてきます。
「木村佳乃」は損な役どころだったかもしれません。美しさだけが目立ち、見所はラスト『文四郎』とのやり取りだけでした。(ある意味美味しいのか?)
「ふかわりょう」「今田耕司」が出演していることは知りませんでした。物語の緊張感の緩衝材としての配役と思われます。特に「ふかわりょう」はよくやったほうではないでしょうか。
『文四郎』を演じたのは「市川染五郎」。彼の男の色気は今更語る必要は無いでしょう。歌舞伎を基にした腰の据わった殺陣、主席家老との対決シーンでの気迫は見事です。
日本の美しい風景がフィルムの中に収められた本作は時代劇の傑作のひとつになるかもしれません。
評価 星 よんてん ご
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本当は『8月のクリスマス』をもう一度観ようかな、と考えていたのですが、ついた時にはすでに始まっていた為、タイミングの合った『蝉しぐれ』を観ることにしました。ちなみに以前『宇宙戦争』を見たときに行われていたチケットラリーキャンペーンで無料鑑賞券が当たっていたのでそれを使用、応募したことすら忘れておりました。
東北の小藩 海坂藩。下級武士『牧助左衛門(緒方拳)』の養子『文四郎(石田卓也)』は朝目覚めた後、近くの川で顔を洗うのが日課だった。そしてそこにはいつも隣に住む『ふく(佐津川愛美)』が洗濯をしているのだった。いつもと同じ朝、しかしその日は違った。蛇が『ふく』の指を噛んだのだ。『ふく』の悲鳴に近寄る『文四郎』は蛇の毒を抜くべく口を傷口に寄せた。
ある日『助左衛門』は突然収監される。世継ぎをめぐる陰謀に巻き込まれ、彼は切腹を命ぜられる。
母と二人、貧乏長屋に居を移す『文四郎』。彼の留守に『ふく』が駆け込んできた。『ふく』の奥へのお召しがあり江戸に行くことが決まったのだ。二人の初恋はこうして幕を閉じた。
前髪を落とし、立派な剣士となった『文四郎(市川染五郎)』は『犬飼兵馬(緒方幹太)』との試合に挑むが、玄妙な剣の前に破れてしまう・・・
リアリティとエンターティーメントのバランスの取れた作品でした。
藤沢作品『たそがれ清兵衛』や『隠し剣 鬼の爪』ではリアリティ感を出す為、ある程度方言を使っていました。方言を使うとリアリティが増す分、その地方以外の人は言葉の意味を掴む、という作業が加わる為、作品への理解度が浅くなってしまう、という懸念があります。本作では言葉が作品の重要なファクターになっている為、あえて方言を避けたと思われます。
脚本も十分練り上げられていると感じました。2時間11分という上映時間は冗長さを生み出す恐れが高いのですが、底辺に流れる静かな緊張感が時間を忘れさせることに成功していたと思います。二人の年少時代を時間をかけて描いたことが後半の感動につながっていきます。そして後半に入ってからのスピーディな展開、「市川染五郎」による見事な殺陣がエンターティーメント性を高めています。
台詞も必要最低限に抑えられています。「・・・」という言外に秘められた思いを各俳優陣たちが見事な演技で観客に伝えていたと思います。
ラスト『文四郎』がかけた「ふく。」という呼びかけにこの物語の全てが込められており、その瞬間えも知れぬ感動を覚えました。
俳優陣の中で眼をひいたのは、幼い『ふく』を演じた「佐津川愛美」の健気な演技でした。『文四郎』に対する淡い恋心を少ない台詞の中で見る側に伝えていたと思います。坂道での大八車のシーンはジーンときました。
御大「緒方拳」は家老といった偉ぶる役よりも清貧に生きる役どころのほうがやはり似合っていると思います。『文四郎』との別れのシーン、伝えきれない想いを行動で伝えてきます。
「木村佳乃」は損な役どころだったかもしれません。美しさだけが目立ち、見所はラスト『文四郎』とのやり取りだけでした。(ある意味美味しいのか?)
「ふかわりょう」「今田耕司」が出演していることは知りませんでした。物語の緊張感の緩衝材としての配役と思われます。特に「ふかわりょう」はよくやったほうではないでしょうか。
『文四郎』を演じたのは「市川染五郎」。彼の男の色気は今更語る必要は無いでしょう。歌舞伎を基にした腰の据わった殺陣、主席家老との対決シーンでの気迫は見事です。
日本の美しい風景がフィルムの中に収められた本作は時代劇の傑作のひとつになるかもしれません。
評価 星 よんてん ご
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こういう世界を持っているというのは、日本が世界に誇れるものではないでしょうか?(ちょっと、大袈裟かな*)
この時代特に東北には連綿と今にも受け継がれて
いるのでしょうか?
過酷な風土の中で養われたこの地方の人々心根を
現代の人々ももう一度考え直して欲しいものです。
「蝉しぐれ」はとくに感動してしまいました。
「8月のクリスマス」という作品もロケ地探訪
されるほどの作品という事で見てみたいですね。
こちらのブログ情報を楽しみにさせていただき
たいと思います。
市川染五郎はあまり好きではないんですが
やはり演技には光るものがありました。
私は綺麗な映像と台詞とのバランスがよかったと思います。
私自身に文才が無い為、このように映画についてかけることが羨ましいです。。。
父親譲りの“実直”こそ文四郎の特徴であるならば、“色気”はあまり要らないのではなかったかと。
最近邦画は頑張ってますね。その中ではかなり地味な作品だと思いますが、素晴らしい作品でしたね。
佐津川愛美ちゃんが、おしんに見えたのは自分だけでしょうか(^_^;)
蝉しぐれは小説はもとい、映画共に素晴らしい名作になったと思っています。キャスティングも素晴らしいと思いましたし。
TBありがとうございました。
>私も佐津川愛美ちゃんがおしんに見えました…。でもこれまた素晴らしいキャスティングだなぁと。
久々に美しい映像とお話で感動しました。
映画版の文四郎役の配役は染五郎で良かったですよ。
キャストはテレビの方がよかったかも。。。
特に青年時代の文四郎。
たくさん映画を見ていらっしゃるのですね。
羨ましいです