最近のブログの中で、業務知識が、要求仕様の品質に左右し、要求仕様の品質(仕様漏れや勘違いの少なさ)が、開発全体の品質に影響するということ、そして、現在は、この業務知識を重視しない(形式化されてない割には、形式化しようという研究も少ない)ため、要求仕様の品質が低く、仕様漏れや勘違いが多く、それがデスマーチを招いていると書いてきた。
で、ここで問題になるのは、「じゃあ、業務知識って?どんなのがあればいいの?」ってことになる。これを形式化して、標準的な業務知識というのを定めないと、これから開発しようとしているシステムと比較できないので、あんまり、効果的でない。
ってことで、必要な業務知識の枠組みを形式化してみよう
■まず、登場人物
はじめに抑えたいのは、その業界の業務において、どのような登場人物が現れるのかということだ。人物といっても、ヒトとは限らない。会社や組織っていうこともある。
たとえば、訪問介護業界なら、介護される人と、介護するヘルパーさん、その内容を決めるケアマネージャーは、すぐ出てくる(あとで、国保連とか、お金を払う人とかも登場する)。
■そして、そこに流れるモノ
そのつぎに、出てくるのは、人がやり取りする、モノについて。
これは、販売する商品や製品、サービス、製作する部品はもちろん、そこに行き交う書類や電子媒体も含まれる。たとえば、EDIなどでネット上に流れるデータやXMLなども含まれる。
訪問介護業界なら、ヘルパーさんが行うサービスはもちろんだが、ケアマネージャーが作成するケアプラン、国保連に送る伝送データなどもはいる。
■そして、カネ
そして、お金。これは、キャッシュ、現金の場合もあるが、最近は集金代行やクレジットカードなどもある。この集金代行やカードの知識は、どんな業界でも使えるので、基本的に覚えておくべきっていうか、エンティティとそこで行われる業務内容、また伝送データや書類(新規のときに送るもの)などは、ソフト会社で(いや、ソフト業界で。。中小企業庁あたりで??)まとめておいたほうがいい気がする。。
訪問介護の場合も、集金の問題はある。
■これらが、エンティティとなる
そして、これら、ヒト、モノ、カネはエンティティとなる。
とくに、業界標準の伝送データがある場合、こういうエンティティを必要とするという制約がでてくるので、そこは、あらかじめ抑えておく必要がある。
(伝送データを帳票分析の手法で分析すれば、エンティティは出てくる)。
■エンティティの必要な属性も抑えておく
そして、業界標準の伝送データがある場合は、エンティティに必要な属性もきまってくる(その属性がないと伝送できない)。それらは、抑えておく。
■業界に共通した手順があれば、それも抑えておく
あと、手順について、標準的なというか、不可欠な手順があればおさえておく。
訪問介護の場合、
1.ケアマネージャーがケアプランを作成する
2.ヘルパーを割り当てる
3.ヘルパーが介護する
4.介護した内容を集計して
5.国保連(公費分)とお金を払うヒト(自費分)を請求する
→お金を払うヒト=介護されるヒトではない。
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6.国保連からおかねもらう
7.自費分のお金をもらう。
という手順はかならずある。このやり方が、訪問介護の事業所によって、各種バリエーションがあったり、この間に、各社ごとに、いろんなことをしたりする。その内容をヒアリングすることになる(上記のプロセスにおいて、入出力は決まっている。それは業界知識としてあらかじめ分析しておくべき。ただし、ここでは、省略する)
なお、訪問介護は、サービスを提供するので、サービス業の側面もある。
そこで、サービス業の業務である、「クレーム処理」っていうのも、当然ある。
これはこれで、標準的手法を分析しておく必要がある。
また、訪問介護の事業所は、会社であり、ヘルパーは従業員である。
会社は平均的な会社業務である「会計処理」が存在し、従業員には「労務管理」が存在する(給与、採用などなど)。これも、標準的手法を分析しておく必要がある。
標準的手法とは、上記のヒト・モノ・カネのエンティティ分析及び標準業務、あと、後述する関連法規をさす。
■関連法規なども、抑えておく必要がある
そして、関連法規。
たとえば、介護保険は、何年ごとに大きな見直しがあり、小さい見直しは何年ごとにあるかなど、業界関連法規は抑えておく必要がある。
■こんなことで、ERと、基本的プロセス、基本用語はまとめておいたほうがいい
そーすると、エンティティとその関係(属性ふくむ)、基本プロセス(入出力も含む)と、基本用語、共通的な帳票(小売なら統一伝票)、データ(EDIデータや国保連の伝送データ)などは、まとめておいたほうがいい。
ちょっと書いたけど、こーいうの、中小企業の場合はたいへんだから、診断士の研究会あたりでまとめて、それを中小企業に対してセミナーみたいな形で公開して、そーしたら、診断士の更新研修の点数になるとかするべきだと思うんですけどお。。。
中小企業庁さまあ。。