この映画・本、よかったす-旅行記も!

最近上映されて良かった映画、以前見て心に残った映画、感銘をうけた本の自分流感想を。たまには旅行・山行記や愚痴も。

『ロープ/戦場の生命線』-《水の確保》のため紛争地で働く国際援助隊のジレンマを描く

2018-07-03 14:55:29 | 最近見た映画

    【 2018年6月30日 】   京都シネマ

 水道の蛇口をひねれば飲める水が簡単に得られる日本にいたら、なぜそんなに水の事で苦労するのかと思う。しかし、砂漠地帯に暮らす住民にとっては大問題であるし、ましてやそれが紛争地帯であれば日常の死活問題となる。

 この映画は、とある紛争地帯(一応、バルカン半島の1地帯となっているが)で『水の確保と衛生管理』を目的とする架空の国際援助組織が、様々な《妨害》にあいながら活動する様子を皮肉たっぷりに描いている。

        

 【水】を巡っては、いま世界でメジャー企業による利権争いが熾烈だ。《たかが水》と思うかもしれないが、水がなければ生活どころか生命活動もままならない。
 この映画の中では、水ビジネスを扱う大企業の話は出てこない。代わりに、怪しげな《水の密売をする犯罪組織》がひと儲けしようと、地元住民の生活の水の唯一の補給元の井戸に《死体を投げ込み》、汚染して使用不能にする。

                

                    

 そこに登場するのが国際援助活動家“国境なき水と衛生管理団”のメンバーである。死体を回収するのに《ロープ》が必要である。いろいろな妨害や目を覆いたくなるような出来事の末、ようやくもう一歩で回収という所で、邪魔が入る。【UN】-国連平和維持軍である。各国間のしがらみが複雑に絡み合う国際関係の中で、現場の状況に機敏に対応できない【UN】のジレンマも映し出される。

            
 

 原作の小説が、「国境なき医師団」に所属する医師パウラ・ファリスということで、他のシーンでも-「地雷原を行く放牧民の姿」や「武装勢力に破壊された村」など、緊迫感があり、フィクションでありながらリアルな臨場感もある。
 国境なき水と衛生管理団”のロゴマークが《陰と陽の手の形を組み合わせたものだったが、どこか「国境なき医師団」のそれを連想させる、よくできたものだった!

       ○           ○           ○

 地球は『水の惑星』といわれているが、水資源として利用できる淡水は以下のグラフのように、わずか2.5%強しかない。その中でも日本が日常的に利用している《河川や湖沼》はわずか0.01%だ。いかに日本が水に恵まれた環境にあるかがわかる。

          

 世界のメジャーが《水ビジネス》に参入し、国家がらみでその利権を得ようとうごめいているようである。出遅れた日本も、経済産業省の肝いりで、その一端に食い込もうと狙っている。
 しかし、【水】は生命活動と地球環境にかかわる基本的なものだ。それを私企業の利益の対象として策謀を巡らすという事に違和感を感じる。、『医薬品も食料も企業の儲けの対象になっているではないか』と、言ってしまえば、元も子もないが、この間「キューバの医療事情と国のあり方」を知った時、思った。決して豊かでないこの小さな国が、世界の災害被災地や被抑圧国に医師を何千人も派遣していたり、国家予算で海外から膨大な数の医学留学生を、学費はもとより渡航費・滞在費を含めすべて無償で受け入れているのはどういうことなのかと。
 
              

 日本は、水の確保と衛生管理に関して世界1の技術を持っているという。企業や東京都まで《儲かる》この世界市場に乗り込みを図る一方、地方自治体で《民間に水道事業を委託する動き》があることは、無関係ではないだろう。
 国際貢献で日本ができることは何なのか-自衛隊を海外に派遣することではなく、この高い技術力こそ、そこに生かされるべきだ強く思う-キューバで出来ることがどうして日本で出来ないのかと。

 国内では、今でこそ安心して安全な水を得られる日本だが、水道事業が企業の利益の対象にされたら、どんな不利益を住民がこうむるかも、真剣に考えないといけない。






   いのちを子供の未来をつなぐ水を求めて-『ユニセフホームページ』
     

   『国境なき医師団』-水と衛生管理専門家を募集するサイト
   『国境なき医師団日本』-ホームページ
     


   『ロープ/戦場の生命線』-公式サイト





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